流産について知っておきたい大切なこと ~早期発見と適切な対応のために~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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流産について知っておきたい大切なこと ~早期発見と適切な対応のために~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

流産について知っておきたい大切なこと ~早期発見と適切な対応のために~【医師監修】

 

妊娠が分かるとうれしい気持ちとともに、きちんと赤ちゃんが育ってくれるかと出産まで心配がつきないでしょう。多くの人が思い浮かべる妊娠中の気がかりなこと「流産」。この記事では流産について知っておきたい情報をまとめています。

おなかの中は実際に見ることはできないため、ちょっとしたサインを見逃さないことが流産の早期発見につながります。適切な対応をとるためにも、妊娠中は自分の体の変化に注意をむけましょう。

 

 

1. 流産とは

 

1) 流産の定義

流産とは、妊娠22週未満で妊娠の継続がむずかしくなることです。おなかのなかで赤ちゃんが亡くなってしまうこともあれば、突然出血して子宮の内容物が母体の外に出てしまうこともあります。妊娠22週未満の赤ちゃんはまだ未熟なため、母体の外に赤ちゃんが出てしまうと生き続けることがむずかしいのです。

流産のほかにも妊娠中に注意したいものには、流産の兆候がみられる「切迫流産」や妊娠22週以降で正期産より前の時期に出産の兆候がみられる「切迫早産」があります。くわしくはこちらの記事を参考にしてください。

 

 

 

 

2) 流産が起こる確率とは

医療機関で確認されている流産の確率は15%前後です。しかし妊娠検査薬などで妊娠が分かる前に実は流産をしていたというケースがあり、実際の流産率は妊娠を経験した約40%だといわれています。

流産が起こる時期で多いのが妊娠12週未満です。流産の80%以上がこの時期起こるとされています。

 

 

 

3) 流産の種類

流産は時期や原因、所見などによって分類されます1)。ここでは主な流産の種類について解説していきます。

 

時期による分類
早期流産:妊娠12週未満に起こる流産
後期流産:妊娠12〜22週の間に起こる流産

 

原因による分類
自然流産:自然に起こる流産
人工流産:人工的に流産をする「人工妊娠中絶」
化学流産:超音波検査で妊娠を確認する前に起こる流産

 

所見による分類
稽留流産:母体に症状はないが、子宮のなかで赤ちゃんが亡くなっている状態
進行流産:出血などの症状があり、流産が進み始めている状態

 

 

2. 流産の原因とは

 

流産の診断を受けると「なにが悪かったのか?」と悩み、「あの時こうしていれば…」と自分を責めてしまう人もいるかもしれません。流産のほとんどが原因不明ですが、妊娠12週未満の妊娠初期に起こる流産は赤ちゃんの染色体異常が原因のことが多いといわれています。染色体異常は受精の際に偶然起こるものです。決してママの食事や運動、仕事が原因ではないので、自分を責めないようにしましょう。

しかし妊婦さんの喫煙が流産の原因になることがあります。こちらの記事では妊婦さんのたばこについてくわしく解説しています。

 

 

 

3. 流産のサインとは?気になる兆候と症状

 

流産の主な症状は出血と腹痛です。しかしこれらの症状があったからといって、必ずしも流産しているとは限りません。しかしおなかの中でどのようなことが起こっているかは病院で検査してみないと分からないため、これらの症状が見られたら、かかりつけの医療機関に相談しましょう。

 

1) 出血

流産をした人の多くが出血を経験しています。しかし出血の色や量には個人差があり、鮮やかな赤い色から黒っぽい色、下着に付着する程度の少量のこともあれば大量とさまざま。

そして妊娠中の出血には流産以外にも子宮外妊娠などの重大な病気のサインであることもあります。少量の出血であっても自己判断はせずに、医療機関に相談しましょう。

 

2) 腹痛

妊娠すると子宮の成長や靭帯の伸び、ホルモンバランスの変化、便秘といったさまざまな理由で、お腹に痛みを感じることがあります。チクチクとした軽い痛みが短時間でおさまるようであればこのような妊娠特有の原因が考えられますが、下腹部に生理痛のような強い痛みや間隔をあけて痛みが繰り返すときは流産の兆候かもしれません。痛みが強いだけでなく出血を伴うときは、早めに医療機関に相談しましょう。

 

3) 症状がない

おなかの中で赤ちゃんの成長が止まってしまっても、出血なし、痛みなしといった母体に症状が出ないことがあります。つらかったつわりが急になくなり、つわりが落ち着いたのかと思ったら実は流産していたという方もいます。症状のない流産では妊婦さんが自分で気付くことはむずかしでしょう。そのため超音波検査で赤ちゃんを確認して流産と診断されます。

 

 

4. 流産の予防法

 

流産の原因のほとんどは赤ちゃん側にあるため、「これをすれば流産を予防できる」という方法はありません。しかし妊娠が分かったら食事に気を付ける、ストレスをためない、重い荷物や負担の大きい運動を避けるといった日常生活に気を付けることで、赤ちゃんの健やかな成長につながります。

そして決められた妊婦健診を必ず受け、気になることがあるときは医療機関に相談するようにしましょう。

 

 

5.流産と診断された後の経過

 

流産と診断されたら、その後の対応には2つあります。

①自然排出を待つ方法(待機的療法)
②手術

 

①待機的療法

赤ちゃんと子宮のなかみが、自然に母体の外に排出するのを待つ方法が待機的療法です。身体への負担が少ない方法ですが、いつ自然排出されるか分からないため突然大量に出血したり激しい痛みが起こったりする可能性があります。医師と相談のうえで決めていきます。

 

②手術

流産の手術は「子宮内容除去術」とよばれ、人工的に子宮の内容物を取り除く方法です。仕事をしている人や家庭を持つ人にとっては、計画的に手術日を決めることで予定が調整しやすいというメリットがあります。手術時間は短時間で基本的には入院の必要はありませんが、まれに合併症が起こるリスクがあります。

 

どちらの方法をとるのかは医師と相談して、心と身体に負担が少ない方法を選択していきましょう。

もし流産したのが妊娠12週以降だと、市町村への死産届の提出と火葬が必要になります。心身ともにつらい時期ですが、死産届の提出には期限が決まっています。体調を考慮してご家族などの手を借りて手続きをおこないましょう2)

 

 

まとめ:気になる症状があれば早めの診察を

何か気になる症状があるときは、必ず医療機関に相談しましょう。定期的な妊婦健診も異常の早期発見をするためとても大切です。妊娠初期の流産は、原因が赤ちゃん側にあることがほとんど。たとえ流産と診断されたとしても、ママの心と体の回復を第一に考えることが大切です。

 

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参考文献・参考サイト
1)日本産科婦人科学会 流産・切迫流産
2)厚生労働省 ○昭和二十一年厚生省令第四十二号(死産の届出に関する規程)

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。