早産児とは?定義から成長の特徴まで、パパ・ママが知っておきたい基礎知識【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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早産児とは?定義から成長の特徴まで、パパ・ママが知っておきたい基礎知識【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

早産児とは?定義から成長の特徴まで、パパ・ママが知っておきたい基礎知識【医師監修】

 

早産児とは、正期産である妊娠37週よりも前に産まれる赤ちゃんのことです。体重が小さいことは想像できる人が多いと思いますが、体重以外に早産児にはどのような特徴があるのでしょうか?

この記事では早産児の定義から成長の特徴まで、パパとママが知っておきたい早産児のことを解説しています。

 

 

1. 早産児の定義と分類

 

早産児とは、妊娠22週~36週6日までに産まれた赤ちゃんのことです。赤ちゃんはお産が始まるまでずっと成長を続けています。しかし正期産よりも前にお産になると、おなかの外の世界で生きるための準備が間に合わないことがあり、医療の力を借りることもあるのです。

早産児は出産週数で分類され、さらに生まれたときの体重である出生体重によっても分類されます。

 

【出産週数での分類】

在胎週数 34 週~ 37 週未満で出生

後期早産児

在胎週数 37 週未満で出生

早産児

在胎週数 37 週から 42 週未満で出生

正期産児

 

 

【出生体重での分類】

2500g 以上 4000g未満

正出生体重児

2500g 未満

低出生体重児

1500g 未満

極低出生体重児

1000g 未満

超低出生体重児

 

早産児は出生体重が少ないことが多いですが、必ずしも低出生体重児であるとは限りません。しかし早産で低出生体重児の場合は体温調節や呼吸などが安定せず、からだの機能が未熟で感染リスクも高いといった、産後のケアに注意が必要となることが多いのです1)

 

 

 

2. 早産児の体の特徴

 

早産児は妊娠週数や出生体重によって、体や発達にどのような影響があるかは異なります。そのためこれから紹介する早産児の体の特徴がすべて当てはまるわけではありません。一般的に早産児に出ることが多い体の特徴について紹介していきます。

 

1) 未熟な臓器

赤ちゃんの臓器の成長は、出産予定日である妊娠40週まで続きます。そのため、正期産よりも早い時期に産まれると、臓器が未熟な状態なのです。なんらかの医療ケアが必要である場合があり、出生後に病気が発症することや感染症が起こることもあります。

 

呼吸中枢が未熟なため、呼吸にムラができたり「未熟児無呼吸発作」を起こしたりすることがあります。脳出血を起こすリスクもあるため、注意が必要です。

 

消化器官

母乳やミルクの消化がうまくできず、哺乳が進まない、排便のコントロールがうまくつかないといったことがあります。腸の感染症である「壊死性腸炎」や、黄疸が悪化する「高ビリルビン血症」を発症することもあるため注意が必要です。

 

肺をしっかりと膨らませることがむずかしく「呼吸窮迫症候群(こきゅうきゅうはくしょうこうぐん)」になることがあります。ときには人工呼吸器での管理が必要な場合があるでしょう。また、呼吸器感染症の発症リスクが高く、重症化しやすいため注意が必要です。

 

早産だと、近視や斜視などの眼の問題が起こるリスクが高いといわれています。ほかにも失明の危険のある「未熟児網膜症」を発症することがあります。

 

心臓

出生後に閉じるはずの心臓の血管が閉鎖されずに「動脈管開存症」になることがあります。血管が開いたままだと循環不全により心臓へ負担がかかってしまうため、薬剤や手術での治療が必要となります。2)

ほかにも出生時期が早いことで母体から十分な鉄分を受け取れず、赤血球を作る機能も未熟であるため、貧血を発症しやすいともいわれています。

 

2) 体重増加の遅れ

早産児は出生時の体重が小さく、体重の増加もゆっくりとしたペースになることが多いでしょう。しかし6~9歳ころまでに正期産児の成長に追いつくことが多いため、焦らずに成長を見守ることが大切です。

早産で産まれた赤ちゃんは哺乳がうまくできないことが多く、チューブを使って胃に直接ミルクを注入したり、点滴で栄養補給をすることもあります。さらにミルクの種類も栄養価の高い特別なものを使うこともあります。

 

3) 皮膚の特徴

早産児の皮膚は薄く、血管が透けて見えることもあるでしょう。産毛が目立ち、クリーム状の胎脂が多く付着している場合もあります。

角質層が薄いためバリア機能が弱く、ちょっとした摩擦やオムツのズレでも皮膚に負担がかかってしまいます。ほかにも乾燥や感染、保温に気をつけなければいけません。

 

4) 爪の発達

早産児の爪は薄くて柔らかいのが特徴です。スプーンネイルとよばれる反り返った爪になることもあります。成長とともに自然に改善しますが、爪がひっかからないようにこまめな爪切りと保湿ケアをしていきましょう。

 

5) 哺乳の困難

哺乳反射は脳でコントロールされます。しかし早産児は脳が未熟なため、母乳やミルクをうまく吸えないことがあるのです。チューブを使って胃に直接ミルクを注入したり、点滴から栄養を補給することがあります。

 

 

3. 早産児の成長と発達の見方

 

1) 修正月齢とは?計算方法と重要性

修正月齢とは、出産予定日から数えた月齢のことです。早産児は出生日から数える暦月齢ではなく、修正月齢によって成長や発達を評価します。体が未熟な早産児は暦月齢による発達評価では正しく評価することがむずかしく、修正月齢を用いることでより正確に判断することができるのです。

【修正月齢の計算方法】
※例として、予定日より2カ月早く生まれた場合です

暦月齢

修正月齢

生後1カ月

修正月齢マイナス1カ月

生後2カ月

修正月齢0カ月

生後6カ月

修正月齢4カ月

3)

 

2) 成長曲線の見方と評価のポイント

成長曲線とは、こどもの身長や体重などの成長を見るための指標です。早産児の成長は標準的な赤ちゃんの成長曲線とは異なります。そのため修正月齢を用いて、経過を観察していきましょう。また成長曲線だけでなく、体重や発達の状況を定期的に医師に確認してもらうことも重要です。

 

3) 発達の遅れと見守りの重要性

早産児の発達の遅れは出産した週数が早いこと、出生時の体重が小さいことが大きく関係しています。成長に伴って発達が追いつくことが多いですが、3歳頃までは修正月齢で発達の評価をしていきましょう。

発達で気になることがあるときは医師や専門家と連携し、早めに適切な支援、治療、リハビリテーションなどをおこなうことが大切です。必要なサポートを受けつつ、お子さんの成長をゆっくりと見守っていきましょう。

 

 

4.予防接種のスケジュールと注意点

 

早産児の予防接種は出生した日から数えた暦月齢に基づいて、決められたスケジュール通りにおこなっていきます。発達評価で用いる修正月齢とは異なるので、間違えないように注意しましょう。赤ちゃんの状態によってはワクチンのスケジュールが変更になることがあります。医師から指示があるときは、それに従って接種していきましょう。

また早産児は「シナジス」というワクチンを接種することがあります。これは呼吸器感染症として一般的なRSウイルスによる重症化を防ぐためのワクチンです。未熟児はRSウイルス感染により重症化しやすいため、医師の判断によって接種することがあるのです4)

 

 

まとめ:早産児の成長は焦らずに見守ろう

早産児の成長・発達はゆっくりであることが多いですが、多くの場合6歳までに追いつくといわれています。また発達の遅れや問題があると分かると、お母さんは自分を責めてしまうことがあるでしょう。しかし医師による定期的な健診や必要なサポートを受けて、焦らずに成長を見守ることが大切です。

また発達とともに注意したいのが「感染」です。早産児はちょっとしたウイルスや菌による感染でも、重症化してしまうことがあります。日々成長する赤ちゃんのサポートと感染対策に気を付けていきましょう。

 

 

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参考文献・参考サイト
1)低出生体重児 保険指導マニュアル
2)MSDマニュアル 早産児
3)こども家庭庁 小さく生まれた赤ちゃんの成長・発達
4)厚生労働省 RSウイルス感染症

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。