授乳期のママに必要な栄養とは?母乳育児中の食事と栄養補給のポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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授乳期のママに必要な栄養とは?母乳育児中の食事と栄養補給のポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

授乳期のママに必要な栄養とは?母乳育児中の食事と栄養補給のポイント【医師監修】

 

母乳で育てられる赤ちゃんは、ママが食べ物から取り入れた栄養によって成長していきます。そのため、授乳期は1日に必要なママの栄養量がとても多くなるのです。

この記事では授乳期のママに必要な栄養はどのようなものか紹介しています。母乳育児中の食事と栄養補給のポイントについても解説しているので、授乳期のママはぜひ参考にしてください。

 

 

1. 授乳期(母乳育児)に必要な栄養素とは?

 

赤ちゃんの成長に必要な栄養がたっぷりの母乳は、ママの血液から作られています。そのため母乳育児中のママは授乳期に必要な栄養をしっかり摂ることで、質のよい母乳作りにつなげることが大切です。

ここでは授乳期に必要な栄養素について紹介していきます。

 

1)カルシウム

カルシウムは母乳を作り出すために重要な栄養素です。そして赤ちゃんの骨や歯の成長のために大切な栄養素でもあります。

授乳中のママの体内カルシウムは、優先的に母乳へと移行します。その結果、ママはカルシウム不足になりがちです。体内のカルシウムが少なくなると、骨や歯を溶かしてカルシウムを補おうとします。このことによって産後は骨粗しょう症のリスクが高くなるといわれています。

カルシウムの推奨摂取量は、授乳の有無に関係なく1日650㎎です。カルシウムが多い食品には、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品、小魚、大豆製品があります。1日のカルシウムの摂取目安は、牛乳3杯です。ほかにも豆腐2丁、またはチーズ4個などでも代用できます1)

 

2)鉄分

ママは出産時の出血で、多くの鉄分を失ってしまいます。それに加えて赤ちゃんの成長に重要である鉄分は、優先して母乳へ運ばれるので産後のママは鉄分が不足しがちです。

鉄分不足による貧血で体力の維持がむずかしいと、産後にはじまる育児に全力をそそぐことがむずかしいでしょう。また、母乳の質や量を低下させることにもなりかねません。

授乳中の鉄分の推奨摂取量は、1日9㎎です2)。鉄分が多く含まれるレバーであれば、だいたい100gで1日量を摂取できます。

鉄分の多い食品というと、レバーやほうれん草などを思い浮かべる人が多いでしょう。実は鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、体への吸収率が高いのはヘム鉄です。ヘム鉄にはレバーや赤身肉、非ヘム鉄にはほうれん草やひじきなどがあります。吸収率が高いからといってヘム鉄だけを摂るのではなく、2つの鉄分をバランスよく摂取することが大切です。非ヘム鉄をビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に食べることで吸収率がUPします。

 

3)ビタミン類

ビタミンにはさまざまな種類があります。以下にそれぞれのビタミンが授乳期にどのような役割があるかを記載します。

 

ビタミンの種類

授乳中の役割

食材例

ビタミンB
(B1B2B6、葉酸など)

・ 母乳の生成

母体の体力の回復

・子宮の回復

ホルモンバランスを整える

 豚肉

レバー

乳製品

ナッツ類

ビタミンC

母体の体力の回復

免疫の維持

非ヘム鉄の吸収を助ける

パプリカ

ブロッコリー

キウイ・オレンジなどの果物

ビタミンD

カルシウムの吸収を助ける

赤ちゃんの骨の成長

キノコ類

 

ビタミン類はさまざまな食材に含まれています。産後はバランスよく、色々な食材を使った食事を心がけるとよいでしょう。

 

 

2. 授乳期の栄養不足・栄養失調に注意!そのサインと対策

 

授乳期は、ママが摂取した栄養が優先的に母乳へと運ばれます。そのため、しっかり食べていても栄養不足・栄養失調になることがあるのです。

これから紹介する栄養不足のサインは出ていませんか?もし当てはまる症状があるという人は、この後に紹介する栄養不足への対策を参考にして食生活を改善していきましょう。

 

1) 栄養不足のサイン

授乳期の栄養不足のサインはこちら。

・すぐに疲れてしまう
・めまいがする
・肌荒れ
・便秘
・爪がもろくなる
・抜け毛
・母乳量が少なくなる

 

産後は赤ちゃんのお世話が優先で、ママの体調がおろそかになりがちです。これらの症状があらわれても「睡眠不足だから」とか「ちょっと疲れてるだけ」と放置していませんか?その症状はもしかしたら栄養不足からくるものかもしれません。

ママの栄養が不足した状態が続くと、赤ちゃんの成長にも影響を与えてしまいます。次に紹介する栄養不足への対策を参考にして、栄養バランスを見直してみましょう。

 

2) 栄養不足への対策

栄養不足のサインを受け取ったら、まずは食生活を見直すことが大切。ついついママの生活が後回しになりがちな産後は、食事を手軽に菓子パンやインスタント食品で済ませてしまっているという人も少なくないでしょう。「授乳期(母乳育児)に必要な栄養素とは?」の項目で紹介した栄養をしっかりと取り入れて、バランスのよい食事に変えてみましょう。

食生活の見直し以外にも補食やおやつに栄養価の高いものを選んだり、サプリメントや授乳期でも飲める栄養ドリンクを取り入れるのもおすすめです。ただしサプリメントに頼り切りで、食事がおろそかになることはNG。サプリメントはあくまで補助と思って、食事からの栄養をしっかりと摂るようにしましょう。

 

 

3. 授乳期におすすめの食事と食べ物

 

ここからは授乳期におすすめの食事と、積極的に摂りたい食べ物、避けたほうがよい食べ物について紹介していきます。

 

1) バランスのよい食事の基本とは?

バランスのよい食事とは、主食・主菜・副菜が揃った食事のことです。メニューを考えると、洋食よりも和食の方がバランスのよい食事になりやすいでしょう。さらに牛乳・乳製品・果物を組み合わせると、必要な栄養がカバーできます。

授乳期間は、栄養だけでなく1日に必要なエネルギー量も増える時期です。ごはんやパン、麺類などの主食で、炭水化物からしっかりとエネルギーを摂りましょう。間食をおにぎりにするのもおすすめです3)

 

2) 積極的に摂りたい食べ物

これまでに紹介したカルシウムや鉄分、ビタミンなどの食品以外にも、母乳育児中に積極的に摂ってほしい食べ物を紹介します。食材をバランスよく使って、栄養の偏りがない食事を産後は心がけましょう。

 

根菜類

体を温めてくれる食材。血行がよくなることで、母乳の出がよくなることが期待できます。
食材例:ごぼう、大根、にんじん、れんこん

 

海藻類

鉄分・カルシウムが豊富なため、赤ちゃんの成長をサポートし、産後の体の回復も助けてくれます。

 

3) 避けた方が良い食べ物

授乳期間に避けたほうがよいものはこちら。

・体を冷やすもの
・油や砂糖を多く使われた物

 

母乳は血液から作られています。そのため体が冷えると血液の流れが悪くなり、母乳の出が悪くなる可能性があります。冷たい飲み物やアイスだけでなく、きゅうりやトマトといった夏野菜の摂りすぎにも注意しましょう。

そして産後についつい手が伸びがちなファーストフードやインスタント食品に多く含まれる油や砂糖は、母乳の質を低下させてしまうことがあります。自分へのご褒美として時々食べる程度にとどめて、普段の食事は栄養バランスのよいものにしていきましょう。

ほかにもコーヒーや紅茶に含まれるタンニンは鉄分の吸収を妨げて、貧血を悪化させることがあるため飲みすぎには注意しましょう。

 

 

まとめ:赤ちゃんの成長のために、ママはしっかりと栄養を摂ろう!

妊娠中、そして産後のママの体は、赤ちゃんの成長をサポートするために母乳へと優先的に栄養を送ります。そのため、時には骨や歯を切り崩して不足した栄養を補うこともあるほど。しかしそれではママの健康が心配です。授乳期に必要な量が増える栄養をしっかりと摂ることで、自身の健康も守っていきましょう。

忙しい産後の生活で、毎食しっかりと栄養を考えることはむずかしいという人もいるでしょう。そんなときはサプリや栄養ドリンクを取り入れるなどの工夫をするのもおすすめです。赤ちゃんのことを考えるがあまり「栄養バランスのとれた食事を摂る」ということがストレスにならないようにもしていきたいですね。

 

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)厚生労働省 《参考資料 1》対象特性 1妊婦・授乳婦
2)厚生労働省 鉄の食事摂取基準(mg/日)
3)国立健康・栄養研究所 食生活の10のポイント

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。