妊娠期のたばこのリスクとは?知っておきたいママと赤ちゃんへの影響【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠期のたばこのリスクとは?知っておきたいママと赤ちゃんへの影響【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠期のたばこのリスクとは?知っておきたいママと赤ちゃんへの影響【医師監修】

 

妊娠中は「たばこを吸ってはいけない」「たばこの煙は赤ちゃんに悪影響」など、たばこのことに関していろいろと見聞きすることもあるでしょう。しかし、実際妊娠中でもたばこを止められない、家族がたばこに配慮をしてくれないという方もいます。

 

今回は、妊娠中のたばこが及ぼすママや赤ちゃんへの影響について詳しく説明します。

健やかな妊娠生活・出産・産後を迎えるためにも、妊娠中の「たばこ」の害やリスクをしっかりと理解しましょう。

 

 

1.たばこに含まれている有害物質とは

 

たばこの煙には約5,300種類の化学物質が含まれており、そのうち200種類以上が有害物質、さらに50種類が発がん性物質です1)。そのなかでも、妊娠に悪影響を及ぼすのがニコチン、タール、一酸化炭素、酸化物質(活性酸素など)です2)

その他にもアセトン(ペンキ除去剤に使用)、ヒ素(殺虫剤に使用)、カドミウム(車のバッテリーに使用)など、身体に非常に有害な物質を含んでいます。

 

ニコチン

ニコチンには血管を収縮させてしまう作用があり、血流の減少を起こします。お腹の赤ちゃんには、胎盤・へその緒を経由し血液を介して酸素や栄養を届けています。たばこは、赤ちゃんに必要な酸素や栄養の供給を阻害し、成長や発達などに影響を与えてしまうのです。

 

タール

タールは発がん性物質のひとつで、実際たばこを吸う人のがん発症率は、吸わない人と比べて男性は1.6倍、女性で1.5倍も高いことがわかっています。お腹に赤ちゃんがいる人や、赤ちゃんがいる空間でたばこを吸うことは、赤ちゃんにも同じリスクを与えることになってしまうのです。

 

一酸化炭素

一酸化炭素は、酸素よりもヘモグロビン(血液中の酸素を運ぶ物質)と結びつきやすいため、酸素の運搬を阻害し、お腹のなかの赤ちゃんに届く酸素の量も減らしてしまします。また、血管の内側の壁(血管内皮)を傷つけてしまうため、動脈硬化や高血圧などさまざまな疾患のリスクを高めてしいます。

 

活性酸素誘導物質

活性酸素とは、酸素の一部が通常よりも活性化された状態になることをいい、過剰になると細胞傷害をもたらします3)。例えば、タールなどの発がん性物質と結びついて細胞の癌化を促したり、炎症による組織障害や脂質過酸化を引き起こしたり、血栓形成などのリスクも高めます。たばこには、この活性酸素を産生する物質が多く含まれており、吸わない人でもたばこの煙によって、活性酸素が体内で多量にできてしまうのです。

 

 

2.受動喫煙(まわりのたばこの煙)の影響

 

受動喫煙とは、本人が喫煙者でなくても、まわりの人の喫煙によってたばこの煙にさらされてしまう(煙を吸ってしまう)ことをいいます。

たばこから出る煙の副流煙は主流煙(たばこを吸っている人が吸い込む煙)よりも有害物質が多く含まれているため、喫煙しない人にも大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

そのため、妊娠中のママが直接たばこを吸っていかなったとしても、「受動喫煙」についても、胎児の発育などに悪影響が生じることがあります。

令和元年に発表された厚労省の報告によると、家庭で受動喫煙の機会が「ほぼ毎日」あった人は、男性7.4%、女性11.6%と女性に多く4)、受動喫煙による妊娠出産への悪影響の回避が課題となっています。

 

 

3.妊娠中の喫煙によるママへの影響

 

妊娠中の喫煙は、妊娠中・分娩時の合併症を引き起こす可能性があります。

 

流産

流産とは、何らかの原因で妊娠22週未満に胎児が亡くなることをいいます。

妊娠12週未満で起こる早期の流産の原因で最も多いのが、赤ちゃん自体の染色体等の異常です。その染色体異常の原因の一つとして喫煙があげられています。
また、妊娠12週〜22週で流産になった場合は、胎児の問題だけではなく、母体の出血や感染症、子宮の収縮などが原因で起こるとされています。また、喫煙、飲酒、薬などの原因としてあげられます。

 

 

 

死産

死産とは、妊娠12週以降に死亡したお腹の中の赤ちゃんを出産することと定義されています。死産の原因にはさまざまなありますが、喫煙も原因としてあげられています。

 

早産

早産とは、正期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産)以前の出産のこといい、日本では妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことです。

たばこを吸っている妊婦さんが早産を起こす確率は、タバコを吸わない妊婦さんと比べて1.4〜1.5倍も高いことがわかっています。

早産で生まれた赤ちゃんは、身体の機能が外の環境に適応する前の状態で胎内から出てしまうため、正期産で生まれた赤ちゃんと比べ、身体が小さく機能が未熟です。妊娠週数によってはNICU(新生児集中治療室)による長期間の入院や後遺症が残る可能性があります。

 

 

 

常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、正常な位置にある胎盤が出産を終える前に何らかの原因ではがれる状態をいいます。たばこは、この常位胎盤早期剥離を起こすリスクを高めてしまいます。

常位胎盤早期剝離になると、胎盤から赤ちゃんに栄養や酸素が供給されなくなるため、赤ちゃんの命に危険が及びます。また、胎盤がはがれる際には大量の出血が起こることもあるため、母子ともに生命の危険が非常に大きい状況となるのです。

 

 

 

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは妊娠時に高血圧を発症した場合を指します。妊娠高血圧症候群は妊娠合併症の中でもよくみられる病気のひとつですが、重篤になってしまうと母子ともに命の危険が及ぶ病気です。妊娠高血圧症候群を発症する要因として、喫煙があげられます。

 

 

 

 

 

4.妊娠中の喫煙によるお腹の赤ちゃん(胎児)への影響

 

たばこの害は、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんへも影響しさまざまな問題を起こすことが指摘されています。

 

低出生体重児

出生体重が2,500g未満で出生した児のことをいいます。低出生体重児は、出生後にも医療的ケアが必要となる場合も多く、また発育・発達の遅延や障害、成人後も含めた健康に係るリスクが大きいことが指摘されています5)

 

胎児発育不全

胎児発育不全とは、平均と⽐べて成⻑が遅くなっていることをいい、体が小さいだけでなく、さまざまな臓器の機能が未熟なことも多いです。 最悪の場合、妊娠中に赤ちゃんの状態が悪化し、子宮内で亡くなってしまうこともあります。

 

先天性異常・胎児奇形

妊娠中の喫煙と先天性異常・胎児奇形との関連性について多くの報告があります。特に、口唇裂や口蓋裂、先天性心疾患といった特定の胎児奇形への影響は大きいとされています。また、たばこの成分が遺伝子を傷つけることが分かっており、ダウン症などの遺伝子疾患の発生に関係しているといわれています。

 

 

5.妊娠中の喫煙による生まれた赤ちゃんへの影響

 

妊娠中の喫煙は、赤ちゃんが生まれてからも影響を及ぼすことがあります。

 

乳幼児突然死症候群(SIDS)

乳幼児突然死症候群とは、それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆や病歴のないまま、眠っている間に突然死亡してしまうことをいいます。たばこは乳幼児突然死症候群発症の大きな危険因子6)とされており、妊娠中の受動喫煙も、SIDSの要因であることが確実視されています2)

 

 

 

長期的な影響

妊娠中の喫煙は、こどもの喘息などの呼吸器疾患の発生を高めるとされています。その他、2型糖尿病、注意欠陥多動性障害(ADHD)なども妊娠中の喫煙の影響が示唆されています。

 

 

6.いつまでにたばこをやめるべき?禁煙いつまで

 

妊娠がわかれば、たばこは「すぐやめましょう」。

「やめられない」のではなく、やめないといけないのです!

 

妊娠中いつまで吸えばよいというのではなく、吸えば吸うほどママだけではなく赤ちゃんへの影響が強くなり命の危険も高くなります。また、自分が吸っていなくても周りの人が吸っている場合は、煙を避けることはもちろん、親しい人にはしっかりたばこの影響を理解してもらい、禁煙に努めてもらう必要があります。

さらに、出産後の赤ちゃんやこどもの前で喫煙することも大変危険です。今後の生活のためにも、妊娠が分かったら、また妊娠を考えている、妊娠の可能性が否定できない場合は、早めに禁煙し、周りのたばこの煙も避けていきましょう。

 

 

まとめ:百害あって一利なし!大切な赤ちゃんのためにも禁煙を!

たばこは、体に大きな影響を及ぼしています。特に機能が未熟な赤ちゃんはその影響が大きく、死産・死亡につながる可能性があり大変危険です。日本産婦人科学会だけではなく、世界中の医療機関で、妊娠中の禁煙を強くすすめるよう声をあげています。妊娠中のたばこの理解を深め、たばこの影響を最小限にするよう努めていきましょう。

 

 

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出典
1)Rodgman, A. et al:. The Chemical Components of Tobacco and Tobacco Smoke Second Edition. Rodgman, A. Perfetti, T. A. editors. Boca Raton, FL: CRC Press, 2013;xxix‒xcii
2)厚生労働省 :生活習慣病予防のための健康情報サイト「女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」
3)厚生労働省:生活習慣病予防のための健康情報サイト「活性酸素と酸化ストレス」
4)厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査報告
5)厚生労働省:低出生体重児保健指導マニュアル
6)こども家庭庁:「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。