前置胎盤とは?原因・症状について知っておきたいこと【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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前置胎盤とは?原因・症状について知っておきたいこと【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

前置胎盤とは?原因・症状について知っておきたいこと【医師監修】

 

妊娠・出産には注意したい合併症がいくつかあります。前置胎盤もそのうちの一つです。前置胎盤は大量出血によりママと赤ちゃんが危険な状態になる可能性がある怖い合併症ですが、一方で医師の指示に従って妊娠期間を過ごすことで、無事に出産を迎えることも多いです。

この記事では前置胎盤の原因と症状について解説していきます。前置胎盤になるとどのような危険があるのか、注意することはなにかぜひ参考にしてください。

 

 

1. 前置胎盤とは何?

 

1)前置胎盤の概要と確率

前置胎盤とは、胎盤が子宮の入り口を覆ってしまう状態のことです。子宮の入口全体を覆うこともあれば、一部分のみのこともあり、その程度は人それぞれです。前置胎盤になると出血のリスクが高くなり、ママと赤ちゃんの命が危険になることもあるといわれています。

日本産科婦人科学会によると、前置胎盤になる確率は全分娩の0.3~0.6%といわれており、頻繁に起こるものではありません。また、早期発見と妊娠期間の管理により、近年前置胎盤での死亡率はとても低くなっています。

 

2)前置胎盤の種類

前置胎盤は、胎盤の位置によって4つに分類されます。

 

完全前置胎盤

胎盤が子宮口を完全に塞いでいる状態

部分前置胎盤

胎盤が子宮口の一部分を覆っている状態

辺縁前置胎盤

胎盤の端が子宮口の端に接している状態

低置胎盤

胎盤の端が子宮の入り口近くにあるが、覆ってはいない状態

 

重症度は子宮口を完全に塞いでいる「完全前置胎盤」が最も高く、「低置胎盤」が最も低いとされています1)

 

 

 

2. 前置胎盤はいつわかる?診断のタイミングとは

 

前置胎盤には自覚症状がありません。ほとんどが妊娠中期以降の超音波検査(エコー)で発見されます。

妊娠初期に子宮の入口近くに胎盤があるといわれたりしても、妊娠週数が進むと胎盤の位置が移動することがあります。確定診断は一般的に妊娠32週までに行うのが目安です。それ以降は胎盤が移動することはほとんどないといわれています。

 

 

3. 前置胎盤の原因とリスク要因

 

前置胎盤が起こるのは受精卵が子宮の入り口近くに着床することが原因です。しかしどうしてこのような現象が起こるかは、はっきりと分かっていません。原因は明確になっていませんが、前置胎盤になりやすい人には以下のような方とされています。

● 帝王切開などの子宮手術の既往
● 多産(複数回の出産経験)
● 高齢出産(35歳以上)
● 多胎妊娠(双子など)
● 喫煙
● 子宮内膜の異常

 

これらの方が必ずしも前置胎盤になるというわけではありません。しかし前置胎盤になる可能性があることを踏まえて、定期的な妊婦健診で早期発見を心がけましょう。

 

 

 

 

 

4.こんな症状が出たら要注意!「警告出血」について

 

1)警告出血とは

警告出血とは、前置胎盤の妊婦さんに起こる出血のことです。前置胎盤の妊婦さんの約半数は警告出血があるといわれています。妊娠28週以降に起こりやすく、原因は胎盤と子宮の壁がはがれてしまうことです。

出血は少量で済むこともあれば、ママと赤ちゃんの命が危険になるほど大量に出血することもあります。痛みなどの前触れがなく突然出血するためビックリしてしまうと思いますが、出血したらすぐに医療機関に連絡をしましょう。

 

2)その他の気を付けるべき症状

前置胎盤の出血を誘発するのが「お腹の張り」です。前置胎盤と診断されたら運動や性交渉など負担がかかる行動は避け、それでもお腹が張ってしまったら安静にして張りがおさまるのを待ちましょう。安静にしていても張りがおさまらず、さらに出血するようであればすぐに病院に連絡しましょう。

 

 

5. 前置胎盤は治るの?

 

前置胎盤になると「治し方を知りたい」と思うでしょう。実は前置胎盤を治す薬や処置はありません。そのため「治る」ということはありませんが、子宮が大きく成長することで胎盤の位置が変わって前置胎盤が「解消する」可能性があります。

 

しかし妊娠32週を過ぎても子宮の入り口を胎盤が塞いだままの状態だと、それ以降に前置胎盤が解消されることはむずかしいといわれています。前置胎盤が解消されない場合、ママと赤ちゃんの命を守るために出血しないような管理が必要です。

 

● 子宮収縮による出血を避けるため安静にすること
● 定期的にエコーで経過を観察すること
● 子宮収縮抑制剤など必要に応じた投薬がされること

これらは前置胎盤の程度やママと赤ちゃんの状態に合わせて、自宅でおこなうこともあれば入院管理が必要な場合もあります。

 

 

6. 安全な出産のために:原則「帝王切開」を選択する理由

 

前置胎盤で経腟分娩がむずかしい一番の理由は「出血」です。陣痛によって子宮が収縮すると、胎盤の一部がはがれて大量に出血してしまう可能性があります。さらに出血量が増える理由として、前置胎盤になると胎盤が子宮の壁に深く入り込んでしまうことがあげられます。この状態から胎盤がはがれると、大量に出血するリスクがあるのです。

分娩時に大量に出血してしまうと、ママと赤ちゃんの命が危険になります。分娩の途中で胎盤が子宮の壁からはがれてしまうことで、赤ちゃんに酸素や栄養が届かない可能性もあります。これらの危険を回避するため、前置胎盤では基本的に帝王切開での出産が選択されるのです。

前置胎盤で帝王切開をおこなう場合、出産時期の目安は妊娠37~38週頃です。前置胎盤の程度や出血があるかどうかなど、妊婦さんの体の状況に合わせて早めに帝王切開がおこなわれることもあります2)3)

 

 

7. 前置胎盤と診断されたときの生活上の注意点

 

1)日常生活の注意点

前置胎盤で一番怖いのが出血です。そのため出血の主な原因である「お腹の張り」を起こさないような生活を送ることが大切です。

お腹が張らないためには、できるだけ安静に過ごすのがポイント。運動や性交渉は避け、妊娠期間の仕事についても医師と相談しましょう。

 

2)出血時の対応

前置胎盤の警告出血は突然起こります。出血があっても慌てずに、すぐに病院に連絡しましょう。もし余裕があれば出血の量や色、性状をメモしておくとよいですよ。

出血の量が少量だと「これくらいで病院に連絡していいのかな?」と迷ってしまうかもしれませんが、量が少なくてもこの後に大量に出血する可能性があります。量の程度に関わらず出血したらすぐに病院に連絡しましょう。大量に出血してしまった、出血とともにお腹の張りが止まらないといった状態は、早急に処置を受ける必要があります。ためらわずに救急車を呼びましょう。

 

 

 

まとめ:前置胎盤は定期的な妊婦健診で早期発見を

ママと赤ちゃんの命の危険がある前置胎盤。前置胎盤はママが自分で気付くことができないため、定期的な妊婦健診をしっかりと受ける必要があります。また、前置胎盤の診断を受けても、危険性を妊婦さん自身がしっかりと把握しておくことでママと赤ちゃんの命を守ることができます。

まずはしっかりと妊婦健診を受けて、妊婦さんが自分の状況を知っておくことが大切です。安全なマタニティライフを送るために、医師の指示に従い出産に備えましょう。

 

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)日本産婦人科学会 前置胎盤
2)日本産婦人科医会 前置胎盤
3)日本産婦人科医会 (2)前置胎盤・癒着胎盤

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。