妊娠中の出血、その原因と対処法を時期別に解説【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠中の出血、その原因と対処法を時期別に解説【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠中の出血、その原因と対処法を時期別に解説【医師監修】

 

妊娠中に出血が起きると「赤ちゃんは大丈夫?」「流産したんじゃないか?」など、色々な不安が出てくるでしょう。実は妊娠中の出血にはすぐに治療が必要なものだけでなく、妊娠の経過の一つとして出血することもあります。

この記事では妊娠中に気を付けてもらいたい出血と妊娠の時期別に起こりやすい出血について解説します。

 

 

1. 妊娠中の出血について

 

1)妊娠中の出血

妊娠中は妊娠前とは違うホルモンバランスになり、その影響で子宮や膣の粘膜は出血しやすい状態になります。ほかにも妊娠の経過の一つとして出血することもあり、妊娠中の出血は珍しいことではありません。

しかし、命の危険がある見逃してはいけない出血があるのも事実です。もし妊娠中に出血がみられたら、あわてずに血液の性状と色、量を観察しましょう。

 

2)妊娠中の出血にみられる性状や色の違い

性状

出血の性状にはドロッとしたものから、さらさらの水のような性状のものまであります。妊娠中の出血で特に注意したいのが、さらさらとした性状の出血です。さらさらの血液は、これから出血量が増える可能性があるため早めに医師に相談しましょう。

 

血液の色の違いによって、今起きている出血なのか、古い出血なのかを判断することができます。

血液が鮮やかな赤い色の場合は、今まさに出血が起きている状態です。茶色や濃い赤色の血液は、出血が起こってから時間が経過していることを示しています。妊娠中に注意したい血液の色は「鮮血」とよばれる真っ赤な色の出血です。

 

出血量は、原因によって多かったり少なかったりさまざまです。出血量が少量であっても、その後に出血量が増えることや命の危険がある出血につながるケースもあります。量だけでなく、色や性状などにも注意して不安なときは病院に相談しましょう。

 

 

2. 妊娠初期(妊娠15週まで)の出血

 

妊娠初期によくある出血はこちら。

● 着床出血
● 切迫流産
● 絨毛膜下血種
● 子宮頸がん検診後の出血

それぞれの特徴について解説していきます。

 

1) 着床出血

着床出血は受精卵が子宮内膜に着床するときに起こる出血のことです。受精卵が子宮内膜に入り込もうとしたときに血管を傷つけてしまうことが原因で起こります。

着床出血の色はピンク、赤、茶色などさまざまですが、生理のように大量に出血することはなくおりものに混じる程度の少量の出血です。出血する期間も、1日でおさまることがほとんどです。
出血だけでなく、お腹にチクチクした痛みを感じたり、下腹部に違和感があったりする人もいます。

着床出血が起こるタイミングは妊娠3~4週目で次の生理予定日にも近いため、着床出血だと思っていても実は生理だったということもあります。出血が続く期間、出血量などで判断していきましょう。

 

2) 切迫流産

切迫流産とは、妊娠22週未満で流産が進みそうな状態のことです1)。赤ちゃんを包む絨毛や胎盤の一部がはがれることが原因で出血します。

赤色や茶褐色の血液が少量出血するとともに、お腹や腰に軽い痛みを感じる人もいます。出血を繰り返すときは切迫流産が進行している可能性があるため、注意しましょう。

 

 

 

3) 絨毛膜下血種

絨毛膜下血種とは赤ちゃんを包んでいる袋の周りに血液が溜まった状態のことです2)
出血は赤ちゃんを包む袋の外側にある「絨毛」の一部がはがれたことが原因で起こり、溜まった血液の一部が体の外に出てくるがあります。血液の色や量には個人差があり「真っ赤な血が少し出た」「茶色っぽい血液が出た」などさまざま。

妊娠初期に絨毛膜下血種になる人は多く、ほとんどの人が自然によくなるといわれています。しかし、中には流産や早産につながるケースもあるため、絨毛膜下血種の診断を受けたら医師の指示に従いましょう。

 

4) 子宮頸がん検診後の出血

妊娠初期の妊婦健診で、子宮頸がん検診をおこないます。子宮頸がん検診は子宮の入り口の細胞をブラシなどで採取するのですが、その刺激で出血することがあります。
出血量は少なく、2~3日で治まることがほとんどです。もし出血量が多かったりお腹に痛みがあったりするときには、病院に受診しましょう。

 

 

3. 妊娠初期の出血で気をつけること

妊娠初期は、妊娠の経過の一つである「着床出血」や自然に治まることの多い「絨毛膜下血種」など、妊娠に大きな影響を与えない出血が多い時期です。

しかし、切迫流産のように、治療を受けないと赤ちゃんの命を守れない種類の出血もあります。
そのため出血があったら自己判断せずに、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。出血があったときに血液の色や量、性状、出血があった期間などを覚えておくと、診察がスムーズにすすみますよ。

 

 

 

4.妊娠中期(妊娠16週~27週)の出血

 

妊娠中期によくある出血はこちら。

● 子宮頸管ポリープ
● 切迫流産・切迫早産
● 前置胎盤

それぞれ解説していきます。

 

1)子宮頸管ポリープ

子宮頸管ポリープとは、子宮の入り口である「頸管」に腫瘍ができる症状のことです。
子宮頸管ポリープが擦れることで出血しやすく「便をしたら出血した」「性行為後に出血しているのに気が付いた」ということがあります。出血のほかにおりものが粘り気のある性状に変化したり、腹部に違和感や軽い痛みが出ることがあります。

妊娠中の子宮頸管ポリープは、流産や破水の危険があるため積極的な治療を行わないケースがほとんどです。しかしポリープが大きくなり、妊娠の経過や出産に支障をきたす場合は治療の対象となります。

また子宮頸管ポリープに似ているのが「子宮膣部びらん」です。ポリープのようなできものはありませんが、子宮の入り口付近が赤くただれてしまい摩擦によって出血することがあります。

子宮膣部ポリープも子宮膣部びらんも、妊娠中に変化する女性ホルモンが関係しているといわれています。

 

2)切迫流産・切迫早産

妊娠22週未満で流産しそうな状態を切迫流産、妊娠22週以降37週未満で早産になりそうな状態を切迫早産といいます3)
切迫流産・切迫早産では出血のほかに、お腹の張りやお腹・腰あたりに軽い痛みが出ることがあります。出血を繰り返すときは切迫流産・切迫早産が進行している可能性があるため、注意しましょう。

 

 

 

3)前置胎盤

前置胎盤とは、通常子宮の上の方にある胎盤が、子宮の出口を塞ぐように付着してしまう状態です。

前置胎盤で注意したいのが、出産の時期ではないのに胎盤がはがれてしまうこと。胎盤がはがれるとさらさらの真っ赤な血液が大量に出血して、ママの命が危険になってしまいます。さらに酸素や栄養を運ぶ役目をしている胎盤が機能しなくなることで、赤ちゃんの命も危険な状態になります。前置胎盤の診断を受けていて少量でも出血が見られるときは、大量に出血する危険があるためはやめに病院に連絡しましょう4)

 

 

5.妊娠中期の出血で気を付けること

妊娠中期に出血があった場合、注意してほしいポイントは出血以外の症状があるかどうかです。
出血だけでなくお腹の張りや痛みがある場合は、切迫流産・切迫早産の可能性があります。そのほかにも普段と異なるおりものが出たり、性交渉後に出血したり、おかしいなと思ったら病院に相談しましょう。

 

 

 

6.妊娠後期(妊娠28週以降)の出血

 

妊娠後期によくある出血はこちら。

● おしるし(産徴)
● 前期破水
● 常位胎盤早期剥離

それぞれ詳しく解説していきます。

 

1)おしるし(産徴)

おしるし(産徴)は、出産が始まる前に赤ちゃんを包んでいる卵膜が子宮から少しずつ剥がれることで起こる出血のことです。
出血の色はピンク色や茶褐色などさまざまですが、量はおりものに混じる程度の少量であるのが特徴です。

「出産が近づいているサイン」といわれるおしるしですが、おしるしがあったからといってすぐに出産になるわけではありません。おりものに少量の血液が混じっているのを見つけたら「もうすぐ出産になるな」と心の準備を整えましょう。

 

 

 

2)前期破水

破水とは、赤ちゃんを包む卵膜が破れて羊水が流れ出てくることです。陣痛がくるまえに破水をするのを「前期破水」といいます。

前期破水では基本的に羊水が流れ出ますが、卵膜が破れるときに毛細血管が傷ついたことで血液が混じった羊水が流れ出てくることがあります。出血量はそんなに多くはなくても、羊水に混じって血液が薄まることで大量に出血したように見えることがあります。

血液が混じった羊水が急に流れ出てくるとママはビックリしてしまうと思いますが、羊水をしっかりと観察していきましょう。もし、羊水で血液が薄まっているのであれば、薄い赤色もしくはピンク色をしています。真っ赤な血液が大量に流れ出てきている時は、破水以外の原因で大量に出血している可能性があります。

大量出血している場合は赤ちゃんとママの命が危険な状態なためすぐに病院に連絡をしましょう。前期破水だったとしても赤ちゃんが菌に感染してしまうリスクが高いため、すぐに病院に連絡してその後の対応を確認します。

 

 

 

3)常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは、出産ではないタイミングで胎盤が子宮からはがれてしまうことです。
常位胎盤早期剥離を起こしてしまうと、強い腹痛とともにさらさらの血液が大量に出血します。
大量出血に加え赤ちゃんに酸素や栄養を届けている胎盤がはがれてしまうことで、赤ちゃんとママの両方の命が危険な状態なってしまいます。

常位胎盤早期剥離の原因ははっきりと分かっていません。定期的な健診でも、事前に予測することがむずかしいといわれています。そのため、妊娠後期に大量の鮮血とともに急激な腹痛を感じたら、常位胎盤早期剥離の可能性を考えてすぐに病院に連絡しましょう。

 

 

 

 

7.妊娠後期の出血で気を付けること

出産が近くナイーブになりがちな妊娠後期に出血があると、ママはとても不安になると思います。もし妊娠後期に出血したら、確認したいポイントは血液の「色」と「量」です。

真っ赤なさらさらの血液がが大量に流れ出てくるときは注意が必要です。反対に羊水やおりものにピンク色や茶褐色の血液が少量混じっているときは、おしるしなどの妊娠の経過の一部と考えてよいでしょう。

出血の色や量だけでなく、強いお腹の張りや腹痛があった場合は、速やかに病院に連絡しましょう。医療スタッフへ出血や症状を伝えることで、その後にとるべき行動を迅速に指示してもらえますよ。

 

 

 

まとめ:出血がみられたら自己判断せず病院に相談を

妊娠中の出血のなかには、様子をみても大丈夫な種類の出血もあります。
しかし病院ですぐに処置をしないと、赤ちゃんとママの命が危険になる出血もあるのも事実です。お腹の中で起こる出血は目に見えないため、問題のない出血なのか、すぐに処置が必要な出血なのかをママが自分で判断するのはむずかしいでしょう。

「こんな少しの出血で病院に行ってもいいのかな」と迷ってしまうママもいるかもしれませんが、赤ちゃんとママの命を守るため妊娠中に出血したら病院に相談しましょう。

 

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参考文献・参考サイト
1)日本産婦人科学会 流産・切迫流産
2)日本産婦人科医会 絨毛膜下血種/感染性流産における流産
3)日本産婦人科学会 早産・切迫早産
4)日本産科婦人科学会 前置胎盤

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。