高齢出産のリスクとは、気を付けたい妊娠生活のポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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高齢出産のリスクとは、気を付けたい妊娠生活のポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

高齢出産のリスクとは、気を付けたい妊娠生活のポイント【医師監修】

 

高齢出産の方が増えてきている現在、それに伴うリスクへの理解も多くの人が認識すべきことになっています。

今回は、高齢出産のリスクを知り、妊娠中に気を付けたいポイントについて詳しくお伝えします。

 

1.高齢出産とは?何歳から?何歳まで産める?

日本では、35歳以上の初産婦を高年初産婦と定義し、経産婦については特に定義されていません。

一方で、世界産科婦人科連合(FIGO)では、初産婦が35歳以上、経産婦が40歳以上の場合を高齢妊娠と定義しています。

 

近年、日本における初産の母親の平均年齢は着実に上昇しています。1980年(昭和55年)の26.4歳から、2011年(平成23年)には30.1歳にまで増加しました。さらに、年齢層別の第1子出生数を見ると、20代の出生数が減少している一方で、30代前半の出生数は穏やかな増加傾向です。

医学的には30代後半から出産に伴うリスクが高まるとされていますが、35歳から39歳の間における出生数も増加しており、その割合は1980年の1.9%から2012年(平成24年)には15.9%まで上昇しています1)

 

何歳まで出産できるのかは個人差があります。

女性の卵子の数は、思春期から生殖適齢期には30-50万個、37歳くらいまでに2万個に、閉経時期の51歳までには1000個程度にまで減少します。また、女性の妊娠しやすさは、おおよそ32歳位までは緩徐に下降し、卵子数の減少と同じくして37歳を過ぎると急激に下降していくという報告があります2)

 

2.高齢出産・高齢妊婦のリスクとは

 

高齢での妊娠は、「加齢そのものが妊娠に与える影響」と「加齢に伴い増加する疾患が妊娠に合併する」という2つの問題があります。

 

前者の例としては、染色体異常や流産といった問題がその代表です。これらは年齢が原因で、胚の発育や妊娠の維持に悪影響を与えることがあります。残念ながら、現在の医学ではこれらの問題を完全に解決することは難しいです。

 

後者の例としては具体的に、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、妊娠高血圧症候群や子宮筋腫といった合併症です。高齢での妊娠は、これらのリスクが高まるため、これまで以上に十分な妊娠管理と出産の準備が必要になるのです3)

 

1)高齢妊娠による妊娠中の母体のリスク

 流産・死産

母体の年齢が35歳を超えると、流産のリスクは増加します。

流産率は、22歳前後で最も低く、8.7%ですが、48歳以上では84.1%と、ほぼ10倍です。これは、母体の年齢が上がるほど、染色体異常である常染色体トリソミーの頻度が高くなることや、年齢による子宮機能の低下が影響していると考えられます。また、異所性妊娠や胞状奇胎も母体の年齢とともに発生頻度が増加します。

 

早産

 

早産が増加する原因はいくつかあります。まず、偶発的な合併症妊娠(例:慢性高血圧、糖尿病、子宮筋腫など)が増えることで、母体の適応により早産となるケースが多いです。

また、生殖補助医療により多胎の頻度が上がることも早産の増加につながります。多胎妊娠では、通常よりも早い時期に子宮内のスペースが限られ、子宮収縮が早まる傾向があり、これが早産のリスクを高める要因となります。

 

 妊娠高血圧症候群

高齢での妊娠では、慢性高血圧を伴う妊娠の頻度が増加します。また、妊娠高血圧症候群の発症頻度も高くなっているのが現状です。これには母体の肥満も関与している可能性が指摘されています。

 

 

 

多胎妊娠

 

生殖補助医療の進歩により、高齢女性でも妊娠が可能です。しかし、高齢女性では妊娠率が低いため、多くの場合、複数個の胚を移植することが行われてきました。その結果、高齢妊娠では多胎が増加する傾向がありました。しかし、現在では日本の産科婦人科学会の指針により、原則として移植胚数を1個に制限することが推奨されています。これにより、多胎妊娠の割合は減少しています。

 

その他

高齢での妊娠では、胎位異常(骨盤位など)、妊娠糖尿病、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などが有意に増加することが報告されています。

 

2)高齢妊娠による児へのリスク

 

染色体異常・先天奇形

母体年齢の上昇に伴い、染色体異常、特に常染色体トリソミーの発生率が増加します。

35歳では約1/19240歳では約1/6645歳では約1/21の割合で全染色体異常をもつ子が生まれるとされています。一方で、染色体異常を伴わない先天奇形については、母体年齢との関連性はほとんど見られません。父親の年齢が上がると遺伝疾患や先天奇形のリスクがわずかに高まるという報告もありますが、その頻度は母親の場合よりも低いとされています。そのほか、発達障害のリスクも高まるとされています。

 

新生児合併症・周産期死亡

高齢での妊娠では、妊娠高血圧症候群や子宮筋腫などの合併症が増加し、これによって子宮内胎児発育不全や早産のリスクが高まります。

その結果、染色体異常の発生率が増加し、低出生体重児の頻度も高いです。

また、糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病の頻度が上昇することから、巨大児も増加する傾向があります。これによって、児の未熟性に伴う低酸素脳症や脳出血がやや増加する可能性がありますが、有意な差は認められていません。ただし、周産期死亡の発生率は高齢妊娠で増加すると考えられています。

 

3)高齢妊娠による分娩時の母体リスク

 

難産

母体の年齢が上昇すると、分娩誘発の頻度や遷延分娩、分娩停止のリスクが増加すると言われています。

高齢妊娠における遷延分娩の主な原因は、加齢に伴う子宮頸部の熟化不全や子宮筋収縮力の低下による微弱な陣痛などが考えられます。

また、肥満や子宮筋腫・腺筋症などの合併症も要因として挙げられるでしょう。くわえて、糖尿病合併妊娠や妊娠糖尿病の増加により、巨大児分娩が起こる可能性も高まります。これらの要因が組み合わさり、高齢妊娠では遷延分娩の例が増え、帝王切開の必要性も高まるとされているのです。

 

 

 

帝王切開率の上昇

高齢での妊娠では帝王切開の割合が高くなり、初産婦における帝王切開率は、母体年齢30〜40歳で28%ですが、40〜44歳では43%、45歳以上では54%に上昇します。

この原因のひとつは、妊娠合併症が増加することです。高齢妊娠では、早産や多胎、胎位異常、前置胎盤、常位胎盤早期剥離などの合併症が多く、また、高血圧や糖尿病、子宮筋腫などの妊娠偶発合併症も頻度が高くなります。2人目以降の経産婦においては、過去に帝王切開を受けた経験がある場合、経腟分娩トライを行わず、選択的帝王切開を選ぶケースが増えています。

妊娠合併症のない選択的帝王切開も多く見られその理由の多くは、妊婦の不安感や産科医の観点から、帝王切開を選択する傾向があります。最近では、生殖補助医療による高齢妊娠も増え、貴重な妊娠であるために経腟分娩を避け、帝王切開を選択するケースも増えているようです。

 

妊産婦死亡

高齢妊娠では、妊産婦死亡率が高くなるとされています。

要因としては、偶発的な合併症の増加や前置胎盤、常位胎盤早期剥離、帝王切開に伴う肺塞栓症の増加などです。特に42歳以上の妊娠では、出産10万対の妊産婦死亡率が20件を超えています。

 

 

3.高齢妊婦の妊娠生活で気を付けるべきポイント

 

高齢妊婦でも、普段の生活を気をつけて過ごすことができればリスクをグッと減らすことはできます。

健康的な妊娠生活をおくるためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休息を心がけることが大切です。また、定期的な妊婦健診を受けることも重要です。体重コントロールも併せて気を付けていきましょう。

 

さらに、ストレス管理も重要です。高齢での妊娠は、心理的なプレッシャーや不安を引き起こすことがあります。また、疲れやすい状態でもあります。リラックスした状態を保つことが赤ちゃんの健康にも良い影響を与えます。ストレスを軽減するためにも、周りの人の協力も必要です。

安心して妊娠生活を送ることができるためにも、頼れるものを頼り、心穏やかな生活を送れるように心がけましょう。

 

 

 

 

 

まとめ:高齢出産でも普段の生活でリスクを抑えることはできる

高齢出産は確かにリスクが伴います。しかし、適切なケアや生活習慣の改善によって、そのリスクを軽減することができます。周りの協力を得ながら、健康的な生活環境を整えていきましょう。また、何か心配なこと、不安なことがあればかかりつけの医師や助産師に相談をしましょう。少しでもストレスなく、楽しく妊娠生活をおくることができるよう心から願っております。

 


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出典
1)秋田県産婦人科医会「高齢妊娠・出産とは」
2)日本産婦人科医会「妊娠適齢年令」
3)厚生労働省:妊娠合併症解析「年齢と妊娠・出産に伴う合併症のリスク評価について」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。