常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは?原因や症状、起きる確率について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは?原因や症状、起きる確率について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)とは?原因や症状、起きる確率について【医師監修】

 

妊娠中の合併症にはさまざまありますが、なかでも母子ともに重大なリスクを伴うのが常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)です。

早剝(そうはく)ともいわれますが、この合併症が起こると出産後のママや赤ちゃんの健康に大きな影響を与える可能性があります。そのため、早期発見と適切な対応が極めて重要です。

 

何か異変があったときすぐ対処できるためにも、常位胎盤早期剥離について知りましょう。

 

1.常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)とは

常位胎盤早期剥離は、正常な位置にある胎盤が何らかの原因ではがれる状態1)を指します。通常の出産では、胎児が子宮の中から出てきた後に、胎盤がはがれますが、胎児が子宮から出てくる前に、胎盤が先にはがれてしまうのです。

 

胎盤は、へその緒を介して、お母さんの体(子宮)と赤ちゃんを繋いでおり、栄養分や酸素をやりとりする大切な役目を持っています。常位胎盤早期剝離になると、胎盤から赤ちゃんに栄養や酸素が供給されなくなるため、赤ちゃんの命に危険が及びます。また、胎盤がはがれる際には大量の出血が起こることもあるため、母子ともに生命の危険が非常に大きい状況となるのです。

 

2.常位胎盤早期剝離が起きる確率は?いつ起こるの?

 

常位胎盤早期剥離は、100~200分娩に1例程度という頻度で起こり、死産となるような重症例は500~750分娩に1例程度といわれています。

常位胎盤早期剝離になった場合、25~30%は赤ちゃんが死亡し、全周産期死亡(死産と早期新生児死亡)からみても、20%がこの病気が原因とされています2)。また、母体死亡率1~2%といわれています1)

常位胎盤早期剝離は、妊娠32週以降に起こることが多いとされていますが、妊娠後期、臨月近くだけではなく、いつでもだれでも起こりうる可能性がある病気なのです。

 

3.常位胎盤早期剝離の症状や前兆とは?

 

常位胎盤早期剝離の主な症状としては、出血、下腹部の疼痛、腹部の膨満感や硬さ、そして子宮が収縮して硬くなる腹筋の緊張(板状硬)などがあげられます。

特に妊娠中に出血があった場合は、わずかな出血でも常位胎盤早期剥離の可能性を否定するための検査が必要になります。

なかには、軽度で判断がつかない、症状が出ない場合があり出産時に初めて常位胎盤早期剥離を起こしていたことが発覚することもあります。

 

区別がつきにくい症状としておしるしと切迫早産があります。

 

おしるし(産徴)は、少量の出血であることがほとんどで、おりもの(帯下)に混じるピンク色~茶色の出血です。

正常なお産前の症状のため様子をみても大丈夫ですが、もし量が多い場合などは異常出血と区別がつかないため自己判断などはせず、早めに病院に連絡をしましょう。

 

切迫早産とは、切迫早産とは早産となる危険性が高いと考えられる状態、つまり早産の一歩手前の状態のことをいいます。子宮収縮(お腹のはりや痛み)が規則的かつ頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態のこと3)です。

常位胎盤早期剝離は切迫早産の症状とは異なり、お腹の張りや痛みが休みなく長く続くことが多いです。時折急激な痛みで現れる場合もありますが、漠然とした不快感が持続することもあります。

 

4. 常位胎盤早期剝離の原因・注意が必要な人

常位胎盤早期剝離のはっきりとした原因はわかっていません。そのため、効果的な予防方法も確立されていない状態です。しかし、これまでの報告から、発症のリスク因子やなりやすい人の特徴もわかってくるようになりました。

 

常位胎盤早期剝離のリスクが高い人4)5)

常位胎盤早期剥離の既往がある、高齢出産、経産回数の上昇、妊娠高血圧症候群(もともと高血圧の場合も含む)、体外受精・胚移植での妊娠、腹部外傷(交通事故や転倒による打撲など)、喫煙、早産、切迫早産、子宮筋腫、絨毛膜羊膜炎(子宮内感染)など

 

 

5.常位胎盤早期剝離の治療法とは

 

一度胎盤が剥がれてしまったら、もとに戻すことはできません。常位胎盤早期剝離と判断されたら、早急に赤ちゃんを娩出させ妊娠を終わらせることが重要です。そのため、分娩進行に時間がかかる場合は緊急帝王切開を行います。また、短時間で出産が終わる場合は、経腟分娩で経過を見守る場合もあります2)

母体において子宮内に大量出血が起こると、DIC(播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群)や、ショック症状を起こす場合があります。その際は、輸血をしながら帝王切開などの処置を行うことになるためリスクが高くなります。

 

6.常位胎盤早期剝離を予防する・リスクをさげるためにできること

 

常位胎盤早期剝離など、妊娠中の異常の早期発見のためには、定期的な妊婦健診が欠かせません。必ず、決められたタイミング、また医師の指示通りに健診を受けるように心がけましょう。

 

妊婦健診以外でも、胎動が少ないなどがあればすぐに連絡をすることが大切です。

 

また、喫煙は自らがコントロールできるリスクの一つです。喫煙中のかたは、たばこを避けるのはもちろん、また身近な人が喫煙をしている場合は協力を得るようにしましょう。

 

くわえて、常位胎盤早期剥離の発生率の約30%~50%は、妊娠高血圧症候群と併発しているという研究報告もあります。高血圧の妊婦は、特にそのリスクが高いことを認識する必要があります。また、今は大丈夫でも妊娠生活のなかで妊娠高血圧を発症しないように日頃の生活に気を付けていきましょう。

 

まとめ:普段と何か違うと思ったら連絡を

常位胎盤早期剝離は、いつだれでも起こりうる病態です。しっかりとした原因はわかっていませんが、日頃の妊娠生活で注意できることも多くあります。また、普段生活していていつもとは違うと感じたら早めにかかりつけの医師に相談することも大切です。出血や、普段と違うお腹の張り、赤ちゃんの動きが少ないなど、「普段と何か違う」というのは大切な訴えの一つです。我慢はせず心配や不安なことがあったらすぐ連絡してくださいね。

 

 

当院では
安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。

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出典
1)日母小冊子「常位胎盤早期剝離」
2)国立研究開発法人国立成育医療研究センター 「常位胎盤早期剝離について」
3)公益社団法人日本産婦人科医会「早産・切迫早産」
4)公益社団法人日本産婦人科医会「(6)常位胎盤早期剝離」
5)日本医療機能評価機構 産科医療補償制度「常位胎盤早期剥離ってなに?」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。