おしるし(産徴)とは?その特徴と分娩開始のタイミングについて【医師監修】
- 2024年12月21日
- 更新日: 2024年12月10日
- 医療コラム
妊娠後期に入ると、「もうすぐ赤ちゃんに会える!」と期待とともに、出産に対する緊張感も高まりますよね。 そんな中、「おしるし」と呼ばれるお産の兆候が現れることがあります。おしるしは、赤ちゃんがもうすぐ産まれてくるサインの一つですが、必ずしもすぐに陣痛がくるわけではありません。
今回は、おしるしの特徴や分娩開始のタイミング、注意点などについて詳しく解説していきます。おしるしについて正しく理解し、出産に向けてこころと体の準備をしていきましょう。
1.おしるし(産徴)とは?
「おしるし」とは、出産前の準備段階で起こる出血1)のことで、医学的には「産徴」と呼び、出産が近づいてきたサインの一つです。
一般的には、粘り気のあるおりもののような状態のものが多いですが、個人差があり、出血量や色、性状はさまざまです。おしるしはすべての妊婦さんに現れるわけではなく、気づかない場合もあります。そのため、おしるしが「ない」場合も多くみられます。
1) なぜ起きるのか、メカニズムについて
赤ちゃんが産道を通る準備が始まると、子宮口が柔らかくなり始め、子宮頸管という部分がわずかに開いてきます。胎児とその周りの羊水を含む卵膜は子宮壁に密着しており、子宮頸管が開くことで卵膜が子宮壁から離れ、出血することがあります。
この出血がおりものと混ざって体外へ排出され、「おしるし」とよばれるのです。
2) いつ頃みられる?
おしるしは、正期産の期間(妊娠37週0日から41週6日までの出産)に入ってから現れるのが一般的です。一般的に分娩開始の数日~1週間前ほどに現れることが多く、出産準備が始まっている重要なサインとなります。おしるしが確認できた際は焦らず、出産や入院に向けての準備を行ないましょう。
2.おしるしの特徴とは
おしるしは具体的にどのようなものなのでしょうか。具体的な特徴について解説します。
1) 色
ピンク色、茶褐色、鮮やかな赤色などさまざまです。おりものに少量の血液が混ざったような薄いピンク色や茶褐色が多いですが、鮮やかな赤色の場合もあります。
2) 性状
おりものに血が混ざったような、粘り気のあるドロッとした状態が多いです。水っぽい場合や、ゼリー状の場合もあります。トイレットペーパーでふき取った際に、糸を引くような粘り気がある出血としてみられることも多いです。
3) 量
おしるしの量は少量で、下着に少しつく程度から生理時のような量まであります。一度にまとまって出ることもあれば、少しずつ断続的に出ることもあります。
4) 症状
おしるし自体に痛みを伴うことはありませんが、生理痛のような軽い下腹部痛や腰痛を伴う場合があります。
3.おしるし後の分娩のタイミングは?
おしるしは産徴といわれるように、お産が近くなったサインではありますが、おしるしからお産が始まるまでには個人差があります。
一般的には、数時間~数日で陣痛が始まり、出産に至るケースが多いです2)。 しかし、個人によっては、おしるしから1週間以上経ってから出産となる場合や、おしるしを感じずに陣痛が始まる場合もあります。
また、初産婦さんの場合は、おしるしが見られてから分娩までやや時間がかかる傾向があり、経産婦さんの場合は、比較的早く分娩が始まることが多いです。しかし、これも個人差が大きいため一概には言えません。
おしるしが出たからといって慌てて病院に向かう必要はないため、焦らずすごすことが大切です。
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4.「おしるし?」観察するときの注意すべきポイント
おしるしは基本的に心配ないものですが、おしるしと似ているようで、おしるしじゃない、異常なケースもあります。本当に正常なおしるしなのかを判断するために、以下のことを注意しながらみていきましょう。
1)鮮血や大量の出血がある
鮮やかな赤い出血が続く場合や出血量が多いは、早急に医療機関に連絡が必要です。またサラサラした出血も注意が必要です。常位胎盤早期剥離や前置胎盤などの異常妊娠の可能性もあります。
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2)腹痛や腰痛がひどい
陣痛が始まっている、もしくは切迫早産などの可能性があります。通常の陣痛は必ず休みがありますが、休みのないお腹の張りは常位胎盤早期剥離などの異常の可能性があるため医師に相談してください。
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3) 胎動がいつもと違う、少ない
胎動は赤ちゃんの元気のバロメーター。お産近くになると、動きが鈍くなることはありますが、少なくなることはありません。赤ちゃんの胎動がいつもと違う、少ないと感じた場合は赤ちゃんの状態が悪くなっている可能性もあります。速やかに病院を受診しましょう。
4) 発熱を伴う
出血ともに発熱を伴う場合は、何らかの感染が起こり異常が起こっている可能性があります。早めに医師に相談しましょう。
5) おしるしと破水の区別を
おしるしでも、水っぽいおしるしの場合は、破水との区別が重要です。
一般的に破水の場合は無色透明な水様の液体が持続的に流れ出ます。とはいえ、出産間近はおりもの自体が増えるため、少量だと判断がつきにくい状態です。水っぽいおしるしが何度もみられる場合は早めに医師へ相談しましょう。
破水との区別がつかない場合は、感染予防のため、シャワーやウォシュレットは避け清潔なナプキンをあてて済みやかに受診してください。
5.「おしるし」がきたときの対処法とすごし方
おしるしが来てもすぐに陣痛や破水に進むわけではなく、出産までの時間はあるため、慌てずに準備を進めることが大切です。以下のことを心がけましょう。
・感染予防のため、清潔なナプキンを使用し、こまめな取り替えを心がける
・おしるしの特徴(色、量、性状など)をメモしておく
※医療機関での説明時に役立ちます
・激しい運動や無理な活動は控え、普段通りの生活を心がける
・出血量が多い場合や痛みを伴う場合など判断に迷うときは、病院に連絡して指示をうける
6.病院にいくタイミングとは
通常のおしるしのみの場合は、次回の定期健診時に報告する程度で構いません。ただし、予定日前や妊娠37週未満でおしるしが見られた場合は、早めに医療機関に相談してください。
以下の場合は、ためらわずに病院へ連絡し、指示を仰ぎましょう。
・規則的な陣痛が始まった場合(初産婦:10分間隔、経産婦:15分間隔)
・破水した
・出血量が多い:生理2日目以上の出血がある場合
・鮮やかな赤い出血が続く
・腹痛や腰痛がひどい
・胎動の減少を感じる場合
・発熱や悪寒がある場合
・おしるしがあった後、不安を感じることや気になることがある
まとめ:お産が近づいているサインとして、心も準備をしていこう
おしるしは出産が近づいている自然なサインであり、多くの場合は心配する必要はありません。ただし、その特徴や正常・異常の区別を理解し、必要に応じて適切なタイミングで医療機関を受診することが重要です。陣痛や破水との違いを把握し、異常が疑われる症状がある場合は躊躇せず医療機関に相談しましょう。
出産に向けて心と体の準備を整えながら、落ち着いて過ごすことができたらいいですね。
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出典
1)国立研究開発法人 国立成育医療研究センター:おしるし、破水、陣痛について
2) MSD マニュアル プロフェッショナル版:正常な陣痛の管理
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。