正期産のすごし方~安心してお産をむかえるためにできること~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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正期産のすごし方~安心してお産をむかえるためにできること~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

正期産のすごし方~安心してお産をむかえるためにできること~【医師監修】

 

正期産とは、いつお産になっても大丈夫な時期ですが、妊娠による体への負担がピークとなり妊娠高血圧症などの合併症が起こりやすく、前向きな気持ちと不安で心が不安定になりやすい時期でもあります。

この記事では安心してお産をむかえるための正期産の過ごし方について解説していきます。
正期産に生活の中に取り入れてもらいたいことや、出産前に起こったら注意してほしい症状なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

 

 

1.正期産とは

 

1) 正期産はいつからいつまで

正期産は妊娠37週(妊娠10カ月)~41週6日までの期間です1)
正期産に似た言葉に「臨月」がありますが、臨月は妊娠36週~出産までの期間のことです。

正期産よりも早い妊娠22週~35週6日までの出産を「早産」、妊娠42週以降の出産を「過期産」とよびます。
赤ちゃんの成長やリスクを考えると正期産の期間に出産することが望ましいため、早産や過期産の可能性がある場合はなにかしらの治療が行われることもあります。

 

2) 正期産の特徴

正期産になると、お腹の張りや下腹部痛などの「前駆陣痛」を感じやすくなります。出産に向けて子宮の壁が少しずつ剥がれることで「おしるし」が出ることもあります。

前駆陣痛やおしるしは、ママの体の出産の準備が整ってきているサインです。

赤ちゃんも出産に向けて準備を進めています。少しずつ下の方に移動するので、お腹のふくらみが下がったように感じる人もいるでしょう。

これらの症状と健診で伝えられる情報から出産時期が近いことを感じたママは、いよいよ始まる出産に不安になる人もいると思います。妊娠期間はホルモンの影響で気持ちが不安定になりやすいですが、特に正期産の頃には感情のコントロールが難しいことがあります。家族や医療スタッフに気持ちを共有して、必要なサポートを受けましょう。

 

 

2.出産が近いときに起こる症状

 

1) 前駆陣痛

前駆陣痛は不規則なお腹の張りと下腹部痛が起こる、出産が近くなっているサインです。出産時にはお腹の張りと痛みが規則的に起こる「本陣痛」があります。

前駆陣痛は本陣痛とは違い痛みが弱く、お腹の張りも不規則で続かないのが特徴です。
また個人差もありお腹の張りや軽い下腹部痛を感じる人もいれば、腰痛や下痢が出るような痛みと表現する人もいます。

 

前駆陣痛があったからといって、すぐに出産になるわけではありません。体が出産に向けて準備を始めているのを感じ、出産に向けて心と体の準備を進めていきましょう。

 

 

 

2) おしるし・産徴

おしるしは出産の少し前にみられる血液が混じったおりもので、別名「産徴(さんちょう)」とよばれています。

茶色や薄いピンク色のおりものが出るとビックリするかもしれませんが、子宮と赤ちゃんを包む膜が少しずつ剥がれて起こる出血なので心配しなくて大丈夫です。個人差はありますが、おしるしが見られてから3日以内に出産になる人が多いといわれています。

 

 

 

3) 恥骨痛

女性ホルモンの「リラキシン」は、骨盤と周囲の靭帯を緩めることで赤ちゃんが産道を通りやすいよう調整しています。しかし大きくなったお腹が負担となり、正期産より前から恥骨に痛みを感じていた人もいるでしょう。

正期産になるとさらに赤ちゃんが下に下りてくるので、恥骨が圧迫されて痛みが強くなる人もいます。そして出産が近づくと骨盤を開くためにに左右に引っ張られて、痛みを感じることもあります。

恥骨の痛みが辛いときは骨盤ベルトをつけたり、寝た状態で過ごしたりしてみましょう。恥骨への負担が少なくなり痛みの軽減が期待でいます。

 

4) お腹が下がる

正期産に入ると出産に向けて、赤ちゃんは徐々にお腹の下の方に移動します。そのためお腹のふくらみが下がったように感じるママもいるでしょう。

子宮が下がって胃の圧迫がなくなると、吐き気や気持ち悪い感じがなくなる人もいます。その一方で膀胱や腸への圧迫が強くなり、正期産の時期に頻尿・便秘症状が強くなる人が多いでしょう。なかには腸が圧迫されると腸の中でガスが発生されやすいため、おならが頻繁に出る人もいます。

 

 

3.安産のために意識したいこと

 

1)運動する

出産には体力が必要です。体調がよいときには、体を動かして体力を維持しましょう。また、運動で陣痛を促すことも期待できます。

正期産はウォーキングをかねて散歩をすると、血液が循環して赤ちゃんに酸素がたっぷり届くためおすすめです。外の景色を眺めながら歩くと、ストレス発散と気分転換にもなるでしょう。

妊婦体操や安産体操、スクワットなども陣痛を促すのに効果的ですが、実は家事も十分な運動になります。おすすめはトイレ掃除と床の拭き掃除、かがんでの作業は陣痛が誘発されやすくなります。階段昇降も陣痛を促すため、マンションに住んでいる人はエレベーターではなく階段を使うとよいですよ。

正期産の運動で注意したいのは帝王切開予定の人です。運動によって陣痛が促されることがあるため医師に運動をしてもよいか確認し、体に負担がかからないように注意しましょう。

 

 

 

 

2)乳頭マッサージや乳頭の保湿をする

乳頭マッサージの目的は乳頭をしっかりと突出させ、やわらかくすることで赤ちゃんが吸いやすい状態にすることです。また、乳頭を刺激すると子宮を収縮する「オキシトシン」というホルモンが分泌して陣痛を促してくれます。

乳頭はマッサージや産後の授乳によって乾燥しやすいため、産前から保湿もしっかりしてあげましょう。乳頭保護クリームは赤ちゃんの口にいれても安全なもの多いのおすすめです。

乳頭マッサージは妊娠37週になったらおこないます。乳頭が傷つかないようにしましょう。

しかし、帝王切開の予定がある妊婦さんはマッサージをすることで子宮が収縮してしまう可能性があるため、乳頭の保湿だけにしましょう。

 

3)体重管理は出産まで

正期産になると体を動かすのが大変になり、運動量が低下しがちです。また子宮が下がって胃の圧迫感がなくなることで食事量が増えやすく、産休前まで仕事をしていた人は運動量が少なくなるなどで体重増加がしやすい時期です。

急激な体重の増加は、妊娠高血圧症などのリスクを上げてしまいます。正期産になっても体重管理を意識していきましょう。

 

 

 

 

4)体を冷やさない

「妊娠中は体を冷やさないように」と声を掛けられたことがある人もいるでしょう。妊婦さんの体が冷えると「分娩時間が長くなる」「産後の回復に時間がかかる」「母乳が十分に分泌しない」などの影響がでてしまいます。

正期産に体を冷やさない対策としておすすめなのが「入浴」です。シャワーで済ませている人は、ぜひお湯に浸かりましょう。38度前後のぬるめのお湯に浸かると、体がぽかぽかと温まりますよ。妊娠中は血液量が増えていてのぼせやすいため、入浴時間は10分程度にしましょう。

運動も、体を温める方法の一つ。体を動かして血液が循環することで体がぽかぽか温まります。
運動は体力維持と体重管理だけでなく、体を温めて出産・産後のママの体を守るためにも無理のない範囲で続けていきましょう。

 

5)適度な休息をとる

正期産は夜の眠りが浅くなり、日中に眠いと感じることが多くなるでしょう。ぐっすりと眠れないことで、体の疲れがとれないという人もいると思います。ホルモンや体型などの理由から長時間寝るのがむずかしいため、日中疲れたなと思ったら横になって体を休めていきましょう。

出産には体力が大切です。疲労が蓄積しないように、日中の過ごし方を工夫しましょう。

正期産より前はお腹の張りを感じたら安静にしていましたが、正期産では前駆陣痛を感じても安静にする必要はありません。「出産が近づいているな」と思い、無理のない範囲で活動しましょう。

 

6)出産準備を終える

正期産はいつ出産になってもよい時期です。そのため出産準備はしっかりと整えて、いつ出産になっても大丈夫なようにしておきましょう。

入院の準備、退院後に赤ちゃんを受け入れる環境作り、育児グッズは揃っていますか?陣痛が来たときの家族への連絡、病院への交通手段、急な破水が起こった時どうするかも考えておきましょう。これらの情報をママだけが分かっているのではなく、それらを家族と共有しておくことが大切です。

 

 

 

4.注意すべき症状

 

1)破水

破水は赤ちゃんを包む「卵膜」が破れて、羊水が体の外に流れ出てきている状態のことです。破水すると赤ちゃんのいる場所が体の外につながる道ができてしまい、菌が侵入してしまう危険があるためすぐに入院が必要です。

卵膜が破れる場所によっては、ドバーっと羊水が流れ出てくることもあれば、尿漏れかな?と思う程度の少量の破水もあります。「破水かな?」と迷ったら、自分で判断することは難しいためすぐに病院に連絡しましょう。

 

 

2)サラサラした出血・出血が多い

おしるしのようなおりものに少量の血液が混じっているのではなく、さらさらの血液が大量に出血した場合はママの体に異常が起きているかもしれません。

大量に出血した場合に考えられることが2つあります。

1つめは「破水」です。破水して流れ出た羊水におしるしの血液が混じって、大量に出血したように見える場合があります。

2つめに「常位胎盤早期剥離」です。まだ体が出産の準備をしていないのに胎盤がはがれ落ちてしまう状態で、大量の出血とともに赤ちゃんに酸素と栄養が届かなくなり、母子ともに危険な状態になります。

どちらも赤ちゃんとママが危険な状態になることがあるため、おしるしではないサラサラした出血があったらすぐに病院に連絡しましょう。

 

 

 

 

3) 休みのないお腹の張りや痛み

陣痛は必ずお休みがあります。休みなくお腹の張りや下腹部に痛みが出ていたら、異常なお腹の張りの場合があります。常位胎盤早期剥離の際などにみられる症状です。異常なお腹の痛みや張りが続く場合はすぐに病院に連絡しましょう。

 

4)胎動が少ないとき

赤ちゃんが成長するとだんだんとお腹の中で動けるスペースが少なくなり、さらに正期産には赤ちゃんが下に移動することで頭が骨盤に固定されます。そのため、胎動が少なくなったと感じるママもいるでしょう。

しかし「胎動を全く感じない」「急に胎動が少なくなった」と感じたら、もしかしたら赤ちゃんに異常が起こっているかもしれません。

胎動を感じやすいのはママがリラックスしている状態のときです。「胎動がないかも」と感じたら、まずは楽な体勢になりリラックスしてみましょう。赤ちゃんは20~40分のサイクルで寝たり起きたりを繰り返しているため、1時間以上安静にして、それでも赤ちゃんが動がない場合は病院に速やかに連絡しましょう2)

 

 

5.妊婦健診は必ず受けよう

 

正期産になると妊婦健診は1週間に1回の頻度になります。

今までの検査に追加してノンストレステスト(NST)とよばれる検査で、赤ちゃんが元気かどうか、お腹の張りがあるかを確認します。NSTは30~40分ほど時間がかかるため、健診の日は余裕をもってスケジュールを組みましょう。

内診では子宮の出口がどれくらい開いているか、柔らかく赤ちゃんが通りやすい状態になっているか、赤ちゃんがどれくらいまで下りてきているかを確認します。これらのことからだいたいの出産時期を予測し、健診の結果によっては運動や日常生活の仕方などの指導がされることがあるでしょう。

臨月になってもママと赤ちゃんにトラブルが起こることはあります。安全なお産のために、決められた妊婦健診を必ず受けましょう。

 

 

まとめ:出産が近いサインを見逃さないようにしよう

妊娠37週を過ぎると、いつ出産になってもおかしくありません。そのため、出産・産後の準備はしっかりとしておきましょう。

臨月には出産のタイミングが近いことをママに知らせるために、体はいくつかのサインを送ってくれます。おしるしや前駆陣痛などは出産が近いことを知らせる代表的なものです。これらのサインがでたら、慌てずに出産に向けて心の準備をしていきましょう。そして、お腹の中の赤ちゃんと一緒に過ごす残り少ないマタニティライフを楽しむことも忘れずに、出産までの日々を過ごしてくださいね。

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)MSDマニュアル家庭版 妊娠の段階
2)公益社団法人日本産婦人科医会 胎動が多いか少ないかわからないです

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。