陣痛とはどんな痛み?陣痛の間隔・お産までの流れ【医師監修】
- 2025年2月8日
- 更新日: 2025年2月8日
- 医療コラム
妊娠後期になると、多くの妊婦さんが気になる陣痛。いつ始まるのか、どんな痛みなのか、不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
今回は、陣痛について、その種類や痛み方、お産までの流れ、そして陣痛時の対処法まで詳しく解説していきます。安心して出産を迎えるためにも、お産前に陣痛についてしっかり知り、心と体の準備につなげていきましょう。
1.陣痛とは?前駆陣痛と本陣痛の違い
陣痛とは、赤ちゃんを出産するために必要な子宮の収縮のこと。
出産前の陣痛には、本格的なお産が始まる前にみられる「前駆陣痛」と、本格的なお産がはじまったときにみられる「本陣痛」の2種類があります。また、出産後は「後陣痛」とよばれる子宮収縮があります。
お産への心構えのためにも、前駆陣痛と本陣痛の特徴と見分け方を知っておきましょう。
1) 陣痛の種類
前駆陣痛
前駆陣痛は、本陣痛が始まる前の段階で感じる不規則な痛みです。
通常、分娩の数日から1週間前頃にみられますが、本陣痛と異なり痛みの強さや陣痛の間隔が一定していません。体の準備段階であるため、実際の出産が始まるわけではありませんが、体が出産に向けて準備を進めているサインとなります。
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本陣痛
いよいよ出産が近づくと、規則的な強い子宮収縮をみとめるようになります。これが本陣痛です。基本は、10分以内で規則的に痛みが繰り返されると本陣痛と判断されます。
本陣痛は、前駆陣痛よりも痛みが強く、間隔も規則的になるのが特徴です。
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2)陣痛の見分け方
前駆陣痛と本陣痛の主な違いは、「規則性」「痛みの強さ」「持続時間」です。
前駆陣痛は不規則で痛みも弱く、動くと和らぎますが、本陣痛は10分程度の規則的な間隔で来て、次第に間隔が短くなり、痛みも強くなっていきます。また、本陣痛は休息してもその後の痛みは変わらず、だんだんと強くなっていくのが特徴です。
これ以外にも、破水や出血が見られる場合、本陣痛の可能性が高いです。少しでも不安を感じたら、ためらわずに医療機関に連絡しましょう。
2.陣痛のはじまり
本陣痛が始まる前に、お産の兆しとして産徴(おしるし)や前駆陣痛がみられることがあります。また、破水からお産が始まる方もいます。また、陣痛は一般的に妊娠37週以降に始まりますが、個人差もあり、37週より前に始まることもあれば、41週を超えても始まらないこともあります。
陣痛の間隔が、10分間隔で規則的に痛みが繰り返されるようになれば、陣痛開始1)と判断され、分娩記録に必要な分娩開始時間をとっていきます。最初は我慢できる痛みであることも多いです。
陣痛の記録をつけるために「陣痛アプリ」を活用していきましょう。記録に残すことで、10分以内になってきたことが一目でわかるようになっているためとても便利です。
そして陣痛が始まったと判断したら、医療機関に連絡して指示を仰ぎましょう。初産婦は10分間隔になったら、経産婦は余裕をもってまずは15分間隔になったら連絡をしてください。
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3.陣痛の痛みってどんな痛み?
陣痛の痛みは、「鼻からスイカ」や「腰が砕けるよう」と表現されることも。 もちろん、感じ方には個人差がありますが、ここでは一般的な痛みの強さや例え、部位について解説します。
1) 痛みの強さ
陣痛の痛みは、生理痛のような鈍痛から、腰が砕けるような激しい痛みまで、人によってさまざまです。一般的には、子宮口が開くにつれて徐々に強くなり、子宮口が全開近くなるとピークに達すると言われています。
2)痛みの部位
陣痛の痛みは、下腹部を中心に、腰や背中、太ももなどにも広がることがあります。
下腹部
子宮が収縮することで、生理痛に似た痛みが生じることが多いです。
腰
腰にズーンと響くような重みや痛みを感じます。痛みの位置は下がっていくことが多いです。
背中
背中全体が張ったり、痛んだりすることがあります。
太もも
太ももの内側が痛むことがあります。
おしり
お尻の奥がズーンと痛むことがあります。また陣痛が進むと痛みが強くなる部位です。
4.陣痛がはじまってからお産の流れ
陣痛が始まると、子宮口が開き、赤ちゃんが産道を通って外の世界へ出てきます。医療スタッフ管理のもとのお産になりますが、わからないことなどは随時質問し、不安が少ない状態ですごすことをこころがけましょう。
陣痛開始~子宮口3cm
陣痛の間隔が10分おきくらいになったら、病院へ連絡します。
子宮口3cm~7cm:
陣痛の間隔が短くなり、痛みも強くなります。呼吸法などで痛みを和らげましょう。
子宮口7cm~全開大(10cm)
陣痛のピークです。いきみたくなる衝動に駆られますが、医師・助産師の指示に従って下さい。
いきみ~出産
いきんで赤ちゃんを産道に押し出します。
後産
胎盤などが子宮から排出されます。
5.陣痛時の対処法・緩和法
陣痛をただ耐えるのではなく、少しでも楽になるために、痛みを和らげる方法を知っておくことが大切です。自分に合った方法を取り入れ、お産を乗り越えていきましょう。また、助産師や周りの家族のサポートも積極的に受けましょう。
1) リラックスする
陣痛中はリラックスすることが重要。特に陣痛と陣痛の間の間欠期には無駄な力を抜きしっかり休んでいきましょう。
逆に、陣痛と陣痛の間の間欠時(休息の時間)も、緊張で力が入っている状態だと、痛みの感じ方が増大し、お産も長引くとされています。
2) 呼吸法
呼吸法を使って痛みを和らげることができます。また、陣痛中にゆっくり呼吸することで、無駄な力が抜け陣痛の力を使って赤ちゃんが生まれてこようとします。さらに呼吸法をすることで、お腹の赤ちゃんのストレスも軽減できます。
安産を目指すためにも、呼吸法をしっかりと行いましょう。
呼吸法は、妊娠期間中に出産する施設で母親学級などで指導を受け、家で練習するのが理想です。例え呼吸法の練習ができていなくても、実際のお産の現場にいるスタッフに呼吸法を教えてもらうことができます。
当院では、母親学級2課(安産教室)では、ソフロロジー分娩の呼吸法を一緒に練習していきます。「お産に対する恐怖心が減った」「これならお産を乗り越えられそう」など、多くの産婦さんの満足の声と、自信につながっております。当院に受診されている妊婦さんは、ぜひご参加ください。
3) 体を温める
痛みの生じる部分(下腹部や腰部など) 体を温めることで筋肉の緊張を緩和し、痛みの緩和を図ることができます。温かいタオルや湯たんぽなどで温めるとよいでしょう。
4) 楽な姿勢をさがす
お産の進行によって、そのときに合った楽な姿勢が違います。可能であれば自分で体を動かし楽な姿勢をとりましょう。ママが動くことで、お産を進めることも期待できます。
まとめ:陣痛は赤ちゃんを産みだすための大切なエネルギー
陣痛は大切なエネルギーであり、出産に不可欠な生理現象です。陣痛の感じ方には個人差がありますが、心配しすぎることはありません。まずは、陣痛を肯定的にとらえることで、お産が始まってもリラックスできるようになります。
今回お伝えしたお産のタイミングを理解し、焦ることなくお産に臨めるように心と体の準備をしておきましょう。無事に出産を終えることを、心から願っております。
安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。
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出典
1)国立成育医療研究センター:おしるし、破水、陣痛について
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。