妊娠中にみられる「おりもの」の特徴と注意すべきポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠中にみられる「おりもの」の特徴と注意すべきポイント【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠中にみられる「おりもの」の特徴と注意すべきポイント【医師監修】

 

妊娠は、赤ちゃんをお腹の中で育てる大切な時期。大切な妊娠期に、少しでも体調の変化があると気になりますよね。

「おりものの量が多いけど大丈夫かな?」
「おりものの色が濃くなった気がする。」
赤ちゃんに近い場所から分泌するおりものが変化することで、赤ちゃんに何かあったのではと心配になってしまう妊婦さんもいると思います。

この記事では、妊娠中のおりものの特徴と注意したいおりものについて解説していきます。妊娠中のおりものを観察することで、妊娠の経過を知ることができ、異常の早期発見もできますよ。

 

 

1. おりもの(帯下)の役割とは

 

おりものは「帯下(たいげ)」ともよばれ、膣内を酸性に保つことで菌が体内に入るのを防いでくれる役割をしています1)。ほかにも、精子が卵管までスムーズに移動できるように手助けをしています。

妊娠前に、生理後と生理前ではおりものが違うと感じたことがある女性も多いでしょう。おりものの性状や量、色が変化するのは、女性ホルモンの影響を受けているからです。

 

 

生理後のおりものは女性ホルモンのエストロゲンの影響で、サラッとしています。排卵に向けてエストロゲンとプロゲステロンの量が増えていくとおりものの量が増え、精子がスムーズに卵管に辿りつくためにややとろみのあるおりものに変化します。排卵期までのおりものは透明に近い色をしていますが、排卵期を過ぎて生理までは白く変化することが多いでしょう。

妊娠期間もエストロゲンとプロゲステロンは分泌するため、これらの女性ホルモンの影響を受けておりものが変化します。

 

 

2. 妊娠中のおりもの原因とは

 

妊娠中のおりものには妊娠期間全般にみられるおりものと、出産間近にみられるおりものの2種類あります。出産間近のおりものの変化の中には、出産が近いことを知らせるサインもあるので見逃さないようにしましょう。

 

1) 妊娠期間全般にみられる「おりもの」

妊娠中のおりものは、妊娠の経過が進むにつれて変化していきます。これは、出産に向けて女性ホルモンの分泌量が増えることが原因です。

妊娠初期にはさらさらで量もにおいも少ないおりものですが、妊娠後期になると女性ホルモンの分泌量が増える影響でねばねばとしたおりものが多く出ます。
出産が近づくと、おりもののにおいが気になるという妊婦さんもいます。

 

 

 

妊娠期間を通して、注意してほしいのが膣からの感染です。
妊娠中は赤ちゃんを異物として攻撃しないように免疫力が弱くなっています。そのため膣から菌が侵入するのを防ぐ「自浄作用」が弱くなり、膣内は感染しやすい状態となっています。もし感染すると、おりものに変化があるので「おかしいな」と思ったら病院に相談しましょう。

妊娠中に膣から感染してしまうと「絨毛膜羊膜炎」になってしまう可能性があり、早産や流産、赤ちゃんに感染してしまう危険があります2)
自浄作用が弱まっている妊娠期間は感染を予防するために、この後に解説する「5.妊娠中のおりもののケア」を参考にして、清潔を保ちましょう。

 

2) 出産間近にみられる「おりもの」

妊娠後期になると、おりものの粘り気が強くなります。そして赤ちゃんが産道を通りやすいようにおりものの量が増えるのも、出産間近のおりものの特徴です。

 

出産か近くなると、おりものに少量の血液が混じることがあり、ピンク色や茶色のおりものを見てビックリしてしまう妊婦さんもいるでしょう。これは「おしるし」という出産が近づいているサインです。

子宮にくっついていた赤ちゃんを包む「卵膜」が、出産に向けて少しずつはがれていく時に少量出血することが原因です。おしるしが出てもあわてずに、出産に向けて気持ちを整えていきましょう。

 

 

 

3. 妊娠中のおりものの特徴 

 

妊娠中のおりものにはどのような特徴があるのか、量・色・におい・性状に分けて解説していきます。

 

1)量

おりものの量は、妊娠の経過が進むにつれて多くなることがあります。

量が増えるのは、出産に向けてエストロゲンの分泌量が増えていくからです。おりものの量が増えると、おりものシートを使用する妊婦さんもいるでしょう。おりものシートは下着の汚れを防ぎ、清潔を保つことができます。しかし、ムレたりかぶれたりするのが欠点です。免疫力の低い妊娠中は感染を防ぐために、おりものシートを使う場合はこまめに交換しましょう。

 

2)色

妊娠中のおりものはクリーム色~黄っぽい色をしています。

もし緑色や灰色など普段と違う色のおりものが出た場合は菌に感染している可能性があるので、早めに病院へ相談しましょう。また、おりものに血液が混じっていたら出産が近いしるしです。

 

3)におい

妊娠中のおりもののにおいはほとんどしないか、少し酸っぱいにおいがするという人もいます。

妊娠中は女性ホルモンのバランスが変化するため、出産が近づくにつれてにおいが強くなる傾向があります。もしおりものがくさい、においがきつい、と感じたら、感染している可能性があるため病院に相談しましょう。

 

4)性状

妊娠初期のおりものは、サラッとした水っぽい性状をしています。妊娠の経過が進むと、女性ホルモンの影響を受けて粘り気が強くなっていきます。

 

 

4.注意が必要な妊娠中のおりもの

 

妊娠中にこれらのおりものが出たら、注意しましょう。

● おりものの量が多い
● 黄・緑・灰色など通常の色とは違う色のおりもの
● 白いかたまりがある

 

このようなおりものが出た場合は、何らかの菌に感染している可能性があります。
妊娠の経過に影響を与えたり、赤ちゃんの命が危険になったりすることもあるため、おりものに異変を感じたら早めに病院に相談しましょう。

 

1) 異常な量

妊娠後期になるとおりものの量は増えることが多いですが、「おかしいな」と感じるほどおりものが増えたら注意が必要です。

おりものの量が増える病気として淋菌感染症、クラミジア感染症があります。これらの感染症には、黄色や黄緑色におりものの色が変化したり、陰部がかゆいと感じたり、痛みが出るなどの症状があります。感染を疑ったら、量が増える以外の症状がないかチェックしましょう。

 

ほかにも、妊娠後期には水のようなおりものがドバっと出て、いつまでも止まらないことがあります。これは、おりものの異常ではなく「破水」かもしれません。破水は、赤ちゃんを包んでいる膜が破れて、中の羊水が外に出てきている状態です。

破水すると赤ちゃんのいる場所と体の外がつながってしまい、赤ちゃんが感染するリスクが高くなります。破水の種類によっては途中で量が減ったように感じることがあるかもしれませんが、水のようなおりものは破水の可能性が高いため「破水かも?」と思ったらすぐに病院に連絡しましょう。

破水についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

 

 

 

2) 異常な色

妊娠中の正常なおりものの色は白・クリーム色~黄色っぽい色です。それ以外の色のおりものが出たら、注意が必要です。

黄色や緑色の膿のようなおりものは「膣トリコモナス症」、灰色のおりものは膣の中で細菌による炎症が起きている可能性があります。おりものの色の変化とともに下腹部痛や発熱、強いにおいなどがあると、これらの感染症の可能性が高いでしょう。

妊娠中は自浄効果が少なく、普段常在菌として膣の中に存在している菌が繁殖してしまうこともあるため、デリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。この後に解説する「5.妊娠中のおりいもののケア」を参考にして、感染を予防していきましょう。

 

3) 異常な症状

白くてポロポロとしたおりものがある場合は、カンジダ膣炎の可能性があります3)。妊娠後期は白い塊のようなおりものが出ることがあり、「カンジダ膣炎かな?」と不安になるかもしれません。しかしカンジダ膣炎のおりものはカッテージチーズや酒粕のような特徴のあるおりものなので、判別するのは難しくないでしょう。さらにカンジダ膣炎になると強いかゆみやヒリヒリした痛み、生臭いにおいがあるのも特徴です。

カンジダは妊婦さんの約30%が保有しているといわれる常在菌の1つです。妊娠前は特に症状がなく過ごしていても、自浄作用が低くなる妊娠中に炎症を起こしてしまうことがあります。カンジダ膣炎になると早産や出産の時に赤ちゃんが感染する可能性もあるため、これらの症状を感じたらすぐに病院に相談しましょう。

 

 

5.妊娠中のおりもののケア

 

妊娠中は膣の自浄効果が低くなるため、感染しやすくなっています。さらにデリケートゾーンがムレた状態は、細菌やカビが活動しやすい環境です。細菌やカビの感染を防ぐためには、通気性をよくして清潔を保ちましょう。

 

1)デリケートゾーンを清潔に保つ

デリケートゾーンを洗う際は、ボディソープを使って指先で優しく洗います。
デリケートゾーンの皮膚は薄く、強く擦ると傷ついてしまうため優しく撫でるように洗うのがポイントです。

妊娠の経過が進むとおりものが増えて、おりものシートやナプキンを使う妊婦さんもいるでしょう。下着が汚れるのを防ぐことでデリケートゾーンの清潔は保てますが、ムレやすいためこまめに交換するのがおすすめです。

また、トイレのビデ機能を使う妊婦さんもいると思いますが、実はビデ機能には膣炎を悪化させてしまうことがあるため妊娠中は控えた方がよいでしょう。

 

2)通気性のよい下着を選ぶ

デリケートゾーンがムレると、菌が活動しやすい環境となり感染が拡大してしまいます。ムレを防ぐ通気性のよい下着は「天然素材」のものがおすすめです。綿やシルクは通気性だけでなく、吸湿性と放湿性も優れているため妊娠中の下着にはぴったりです。

下着を通気性のよいものにしても、タイツやストッキングで通気性が悪くなることがあるため注意しましょう。

 

3)異常を感じたら早めに相談

おりものの異常な変化は、膣の中で異変が起こっているサインです。膣が感染すると妊娠の経過や赤ちゃんに影響を与えてしまうことがあるため、おりものに異常を感じたら早めに病院に相談しましょう。

妊婦健診には膣の感染を調べる検査がありますが、検査時には異常がなくてもそのほかの妊娠の経過の中で感染してしまうこともあります。妊婦さん自身が日々のおりものを観察することで、感染の早期発見につながるでしょう。

 

 

まとめ:おりものは妊娠中の体の状態を知らせる大切なサイン

妊娠中は女性ホルモンの影響を受けて、おりものの状態は変化していきます。出産が近くなると粘りが強く量が多いおりものに変化し、出産が近いことのサインであるおしるしや破水が出ることもあります。正常なおりものを知ることは、妊娠の経過がどの位進んでいるのか知ることができるだけでなく、感染の早期発見にも役立つでしょう。

おりものは、膣の健康と妊娠の経過を知らせてくれるサインです。いつもと違うおりものは、膣になにかしらの変化があることを教えてくれます。妊娠中は赤ちゃんの成長や妊娠の経過など目に見えないことが多いですが、目に見えるおりものをチェックすることで妊娠中の異常を早期発見したり、出産時期が近いことを知ることができます。おりものが発信しているサインを見逃さずに、妊娠中の赤ちゃんとママの健康を守っていきましょう。

 

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参考文献・参考サイト
1)MSDマニュアル家庭版 おりもの
2)日本産婦人科医会 31.ジャンプアップ7(感染)
3)久保田 武美:治療抵抗性外陰膣真菌症

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。