赤ちゃんの体重が小さく生まれてしまう「低出生体重児」とは?原因や赤ちゃんの影響などについて【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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赤ちゃんの体重が小さく生まれてしまう「低出生体重児」とは?原因や赤ちゃんの影響などについて【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

赤ちゃんの体重が小さく生まれてしまう「低出生体重児」とは?原因や赤ちゃんの影響などについて【医師監修】

 

体重が小さい赤ちゃんは、正常な赤ちゃんよりも成長や発達において注意が必要です。

今回は低出生体重児のことについてお伝えします。低出生体重児になる原因や、赤ちゃんへの影響、成長・発達についても説明します。

低出生体重児だからといって、すべての赤ちゃんのリスクが高いとはいえませんが、低出生体重児の特徴などを詳しく知ることは、今後の育児のポイントになる部分もありますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

1.低出生体重児とは

低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)とは、出生時の体重が2,500g未満の新生児のことを指します。そのなかでも1,500g未満を極低出生体重児、1,000g未満を超低出生体重児とよびます1)

 

1) 低出生体重児の割合とは

 

日本での出生数は減少傾向にあるものの、出生数に占める低出生体重児の割合は1980 年代(約5%)から増加傾向で、2020年時点で約9.4%2)となっています。これは先進国の中でも高い水準で、近年は横ばい傾向ですが依然として高い状態です。

 

なぜ増加傾向なのか

低出生体重児が増加している主な原因として、大きく3つの要因が挙げられます。

①高齢出産の増加
母体年齢が高くなるほど、低出生体重児のリスクが高まることが知られています。

②痩せすぎの若い女性の増加
妊娠前の母体のBMIが低いことは、低出生体重児の一因となります

③多胎妊娠の増加
不妊治療の普及により、双子などの多胎児の出産が増え、それに伴い低出生体重児も増加しています。

 

2)未熟児・早産児との違いとは

 

低出生体重児と混同されやすい「未熟児」「早産児」との違いを解説します。

 

未熟児

未熟児とは、母子保健法第 6 条で「身体の発育が未熟のまま出生した乳幼児であって、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至るまでのものをいう」とされています。世界保健機関(WHO)は出生体重 2500g 未満を未熟児とよんでいましたが、現在では低出生体重児とよんでいます3)

 

早産児

早産児は「妊娠37週未満で生まれた赤ちゃん」のことです。そのため、正期産(妊娠37週以降)でも体重が2,500g未満であれば低出生体重児となり、また早産でも2,500g以上であれば低出生体重児には含まれません。

早産で生まれた赤ちゃんは、低出生体重児であることが多いですが、必ずしもそうとは限りません。

 

 

 

2.低出生体重児の原因・理由

 

低出生体重児の原因は、主に母体因子、胎盤・臍帯因子、胎児因子にわけることができますが、理由がはっきりとわからない場合もあり、1つの要因に特定できない場合も少なくありません。

妊娠中は定期的な妊婦健診を受け、異常の早期発見や予防につなげていくことが大切です。

 

1) 母体側の要因

ママの健康状態や生活習慣が出産する赤ちゃんの発育に大きく影響します。低出生体重児の母体因子として考えられるものには、以下のようなものがあります。

 

年齢(高齢妊娠、若年妊娠)

若年妊娠では、身体的・精神的な未熟さや、適切な産前ケアを受けにくい社会的要因により早産リスクが上昇します。

一方、高齢妊娠では加齢に伴う子宮や卵巣機能の低下、慢性疾患(高血圧、糖尿病など)の合併率上昇、多胎妊娠のリスク増加により、早産の可能性が高まります。そのため低出生体重児を出産する確率が高くなるのです。

 

 

 

ママのやせ、体重増加不良

妊娠前の低体重や痩せは、母体の栄養状態がもともと良いとはいえないため、胎児に十分な栄養を供給できないことがあります。また、妊娠中の体重増加不良も、胎盤の形成や機能が十分ではなくなり、胎児の発育に必要な栄養や酸素が不足し、低出生体重児のリスクを高めます。

 

喫煙、飲酒、薬物使用

妊娠中の喫煙は、胎盤への血流を悪くし、胎児の発育を阻害する可能性があります。

 

 

 

妊娠中の飲酒は、胎児性アルコールスペクトラム障害を引き起こし、低出生体重や様々な発達障害の原因となります。

妊娠中に服用する薬の中には、胎児に悪影響を及ぼすものがあります。内服する際は必ず医師の指示に従いましょう。

 

妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、糖尿病、貧血、子宮内膜症など)

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症は、胎盤の機能不全を引き起こし、胎児への栄養供給が滞ることがあります。

 

 

 

 

持病

高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病などの持病がある場合、胎児の発育に悪影響を及ぼすことがあります。

 

子宮の形態異常

子宮の形態異常(双角子宮、中隔子宮など)は、子宮内腔の形態に異常があるため、胎児が正常に成長するための十分なスペースを確保できない場合があります。

 

栄養不足

妊娠中の栄養不足は、胎児の発育に不可欠な栄養が不足し、低出生体重につながる可能性があります。

 

2)胎盤・臍帯因子について

 

胎盤は、母体から胎児へ栄養や酸素を供給する重要な器官です。臍帯は、胎盤と胎児をつなぐへその緒のことです。これらの部分に問題があると、胎児は十分に成長することができません。

 

胎盤異常

胎盤が子宮壁から剥がれてしまう常位性胎盤早期剥離や、胎盤が子宮口を塞いでしまう前置胎盤など、胎盤の異常は胎児への栄養供給を妨げます。

 

 

 

 

臍帯異常

臍帯が胎児の首や体に巻き付いてしまう臍帯巻絡や、臍帯が短すぎる、細すぎるなどの異常は、胎児への血流を阻害する可能性があります。

 

3)胎児因子

胎児側の要因として、先天的な異常や感染症などがあげられます。

 

染色体異常

ダウン症候群などの染色体異常は、胎児の発育不全を引き起こすことがあります。

 

先天性奇形

心臓や脳などの重要な臓器に奇形があると、胎児は正常に発育することが難しい場合があります。

 

多胎妊娠

双子や三つ子などの多胎妊娠は、子宮内の空間が狭くなり、胎児の発育が制限されやすくなります。

 

子宮内感染

風疹ウイルスやサイトメガロウイルスなどの感染症は、胎児に先天性感染症を引き起こし、発育に影響を与える可能性があります。

 

 

 

3.低出生体重児になると赤ちゃんはその後どうなる?リスクとは

 

低出生体重児のなかでも、赤ちゃんの体重が低いほど赤ちゃんの機能は未熟で、様々な健康上の問題を抱えるリスクが高まります。

 

1)出生した直後の(短期的な)リスク

低出生体重児の赤ちゃんは体温調節機能が未熟なため体温維持が困難で、低体温になりやすい傾向があります。また、呼吸器系が未熟なため、呼吸障害(特に新生児呼吸窮迫症候群)のリスクが高くなります。免疫機能も未熟なため、感染症にかかりやすく、感染してしまうと重症化するおそれがあります。

これらのリスクに対しては、NICU(新生児治療室)での適切な医療管理や、退院後の定期的な発達チェック、早期からの介入支援が重要です。そして近年では医療技術の進歩により、低出生体重児の生存率や後遺症が残る確率も大きく向上しています。

※新生児呼吸窮迫症候群:呼吸を助ける肺の中の物質である肺サーファクタントが十分に産生されずに赤ちゃんの呼吸が困難になる病気

 

2) 出生後しばらく経ってからの(長期的な)リスク

最近の研究で、出生体重が小さい方ほど、成人後期に心血管疾患のリスクが高いことが分かりました。また40~74歳の成人後期には高血圧、糖尿病の生活習慣病になりやすいこともわかるようになってきました4)

 

 

4.低出生体重児の赤ちゃんの成長・発達のとらえかた

 

低出生体重児は、お腹の中で十分に成長できなかったため、発達・成長のスピードもゆっくりであることが一般的です。しかし、焦る必要はありません。修正月齢や発育曲線を参考にしながら、その子のぺースで発達・成長を見守ることが大切です。

 

1)修正月齢とは

修正月齢とは、本来の出産予定日から数えた月齢のことで、早産で生まれた赤ちゃんの発達を評価する際に用いる月齢の数え方5)です。

 

例えば…
出産予定日より2か月早く生まれた赤ちゃんの場合
・生後3か月時点で、修正月齢は1か月
・生後6か月時点で、修正月齢は4か月

 

低出生体重児は、少なくとも1歳、場合によっては2歳くらいまでは修正月齢で発達・成長を評価していきます。修正月齢を用いることで、標準的な発達段階にあるのか、発達に遅れが見られるのかを、より正確に判断することができるのです。

 

2) 成長曲線のみかた

子どもの発達・成長を把握する上で、体重、身長、頭囲を記録した「成長曲線」も重要な指標です。成長曲線は、標準的な発達の範囲を示したものであり、子どもの発達状況を客観的に確認することができます。

大切なのは、どの曲線のライン上に乗っているかどうかではなく、「そのカーブに沿って」順調に成長しているかどうかです。一時的な数値よりも、成長曲線に沿って継続的に成長しているかどうかが重要になります。

定期的な計測と記録により、成長の推移を確認することが大切です。

 

 

まとめ:その子なりの成長を見守ることが大切

低出生体重児で生まれる原因はさまざまですが、原因が特定できないことも多く完全な予防もできません。そして、低出生体重児の赤ちゃんの成長は、同じ月齢の子などと比べる必要はありません。その子の状態に合わせた適切な医療ケアやサポートを受けながら、外の世界でゆっくりと成長するのを見守ることが大切です。

お子さんの成長に不安があるときは、ひとりで悩みすぎるのではなく、かかりつけの小児科や地域の保健師さんなどを頼っていきましょう。

 

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出典
1)ATOM MEDICAL :はじめてのNICU
2)厚生労働省:活力ある持続可能な社会の実現を目指す観点から、優先して取り組むべき栄養課題について
3)厚生労働省:平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 「低出生体重児 保健指導マニュアル」
4)国立成育医療研究センター:低出生体重による出生は心血管疾患や生活習慣病リスクを増加 ~日本初!出生体重と成人後期の生活習慣病の関連が明らかに~
5)こども家庭庁:母子健康手帳情報支援サイト:低出生体重児の成長・発達やサポートなど

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。