出産前に知っておきたい「会陰裂傷」と「会陰切開」【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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出産前に知っておきたい「会陰裂傷」と「会陰切開」【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

出産前に知っておきたい「会陰裂傷」と「会陰切開」【医師監修】

 

「会陰裂傷」や「会陰切開」と聞いて怖いと思っている妊婦さんもいるでしょう。

この記事では会陰裂傷と会陰切開について解説しています。「会陰裂傷と会陰切開の違いはなに?」「産後の会陰はどうなるの?」という妊婦さんの疑問や、出産前に知っておきたい会陰のことをまとめています。ぜひ参考にしてください。

 

 

1. 会陰とは?

 

会陰(読み方:えいん)とは、膣の入り口と肛門の間にある2~3㎝ほどの皮膚のことです。

出産で赤ちゃんが産道を通る時に、会陰部の皮膚は大きく引き伸ばされます。この時に会陰の伸びが足りないと皮膚がさけてしまい会陰裂傷を起こしたり、会陰切開が必要になるのです。

 

 

2. 自然に起こる「会陰裂傷」について

 

会陰裂傷とは、出産時の負担に耐えきれずに会陰部の皮膚がさけてしまうことです。この後に紹介する会陰切開とは異なり、お産の流れのなかで自然に起こるのが会陰裂傷です。

 

1) 会陰裂傷の原因と度合い

会陰裂傷の原因は、赤ちゃんが産道を通ることによる会陰部への負荷です。大きな負担がかかった皮膚が、耐えきれずにさけてしまうのです。分娩に立ち会う助産師が会陰がさけないように保護しますが、皮膚が十分に伸びなかったり急速にお産が進んだりすると会陰はさけてしまうことがあります。

 

会陰裂傷はさけた度合いによって4つに分類されます1)。多くは第1~2度の裂傷です。

【会陰裂傷の度合い】
第 1 度会陰裂傷: 会陰の皮膚と腟の粘膜が損傷
第 2 度会陰裂傷 :会陰の筋層までの裂傷
第 3 度会陰裂傷 :肛門括約筋や腟直腸中隔までの裂傷
第 4 度会陰裂傷 :肛門粘膜・直腸粘膜まで裂傷があり、膣と腸がつながってしまった状態

 

2) 裂傷後の処置・治療法について

会陰裂傷の度合いによって処置が異なります。第1度会陰裂傷は医師の判断で裂けた部分を縫う場合と、自然に治るのを待つ場合があります。2度以上の裂傷には医療的処置が必要です。

会陰裂傷してしまっても、適切な診断・治療をおこなうことで後遺症が残ることはほとんどありません。産後の痛みの程度や期間には個人差がありますが、医療スタッフと相談しながら鎮痛剤を使用して痛みをコントロールしていきましょう。

 

 

3. 計画的におこなう「会陰切開」について

 

出産時に自然に起こる会陰裂傷に対し、医師の判断のもと計画的におこなわれる医療的処置が会陰切開です。過度な会陰裂傷を回避するだけでなく、スムーズなお産をすすめる、産後の回復を助けるといった目的もあります。

 

1) なぜ「会陰切開」が必要か

会陰切開はすべての妊婦さんにおこなわれるわけではありません。出産中に赤ちゃんに異常がみられて早くお産を進めたい場合や、吸引分娩・鉗子分娩といった介助が必要な場合におこなわれます。ほかにも会陰の伸びが悪く、重度の会陰裂傷になる可能性があると医師が判断したときも会陰切開の適応となります。

会陰切開の傷は会陰裂傷よりもきれいで、治りが早いことが多いといわれています。

 

2) 会陰切開の方法・縫合について

会陰切開は会陰部を医療用のはさみを使って切開します。はさみで皮膚を切ることを想像すると「怖い」と思うママもいるでしょう。しかし局所麻酔をおこなうため、切開の痛みを感じることはほとんどありません。無痛分娩の場合はすでに麻酔を使用しているため、追加で麻酔を使用しないことが多いでしょう。

切開する場所は妊婦さんの状態や医師の判断によって異なりますが、会陰の横を斜めに切る方法が多いです。

赤ちゃんと胎盤などの子宮のなかみがすべて出た後に、切開した部分を縫い合わせていきます。現在多くの産院で取り入れられているのが「吸収糸」とよばれる、時間の経過とともに体に吸収される糸です。「溶ける糸」と表現されることもあります。抜糸の必要がないため、抜糸の際の痛みや通院の手間がなく、ママの負担を軽減することができます。しかし糸のつっぱる感じが残ってつらいといった違和感が続く時は、医療スタッフに相談しましょう2)

出産時の会陰への負担を軽くしたいと思ったら、出産前から「会陰マッサージ」をしておくことがおすすめです。会陰マッサージとは会陰の柔軟性を高めて、出産時の会陰の伸びを良くすることを目的におこなうマッサージです。妊娠36週頃からおこないましょう3)

 

 

4. 産後の会陰部の症状について

 

1)かゆみ

会陰裂傷、会陰切開の傷が治る過程で、かゆみを感じることがあります。また産後のホルモンの変化から肌が敏感になっているので、傷が下着に擦れてかゆみを感じることもあります。

 

2)腫れ

産後の会陰部の腫れは出産時の赤ちゃんによる会陰の圧迫、皮膚が伸びることが原因です。腫れは産後1週間程度でおさまることが多いでしょう。

 

3)痛み

切開や裂傷、出産時の会陰の伸びによって、産後は会陰に痛みが生じます。

産後に会陰部にかゆみや腫れ、痛みが生じることは産後の正常な過程です。しかしこれらのつらい症状が長く続くときや我慢ができないときは医療スタッフに相談しましょう。

産後のつらい痛みを和らげる方法についてはこちらの記事で紹介していますので、参考にしてください。

 

 

 

5.「会陰裂傷」「会陰切開」についてのよくある質問

 

Q1)保険適用になるの?

会陰切開は正常な出産中の医療行為とみなされ、基本的には健康保険の適用外である自費診療となります。しかしお産の状況によっては保険適用になる場合もあるため、出産した施設に確認しましょう。

また民間の保険では給付金の対象となる場合があります。給付金の対象になるかどうかは加入している保険会社に確認しましょう。

 

Q2)排便はできるの?

会陰裂傷・会陰切開をした多くの妊婦さんが経験するのが「排便時の恐怖」です。強くいきむことで痛みを感じたり「傷が開いてしまうのではないか?」と心配で、便を我慢してしまうという人もいるでしょう。こんな産後の排便の悩みを解消するために、便を柔らかくコントロールすることが大切です。

 

【便を柔らかくする生活習慣】
● 水分をしっかり摂る
● 食物繊維の多い食事に気を付ける
● 必要に応じて下剤などの薬を処方してもらう

産後に注意してほしいのは、排便時のいきみよりも清潔を保つことです。会陰部は汚染しやすい場所なので、シャワーやビデ、洗浄綿などで清潔を保つよう注意しましょう。 

 

Q3)産後に再びさけることはあるの?

座った状態での会陰への負荷や排便時のいきみなどで「傷が開いてしまうんじゃないか?」と心配になるママも多いでしょう。しかし会陰部の傷が再びさけることはほとんどありません。再びさけることを心配して活動を制限するのではなく、無理のない程度に産後の生活をすることで血液の巡りがよくなり傷の治りが早くなりますよ。

 

 

6.まとめ:会陰裂傷と会陰切開はあまり怖がらないで

出産時に会陰に負担が掛かってしまうのは仕方がないこと。出産の自然な流れでできる会陰裂傷、予防的医療処置の会陰切開、これら2つはどちらも予後は悪くありません。

お産の前から「会陰切開は絶対にしない!」と決めつけたり、会陰裂傷が怖いから大きくいきむのが怖いなどと考えず、まずは赤ちゃんが無事に出てくることを第一に考えましょう。医療スタッフがあなたの傷が小さく、痛みが最大限に少なくなるようにその場の状況をしっかり判断しサポートしていきます。安心して出産にのぞみましょう。

 

安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。

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参考文献・参考サイト
1)看護roo! 会陰切開・会陰裂傷
2)国立成育医療研究センター 会陰切開について
3)日本助産学会 会陰への負担を軽くするための会陰マッサージとは

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。