新生児期の赤ちゃんはどのくらい眠る?睡眠の特徴と注意するポイント【医師監修】
- 2025年7月12日
- 更新日: 2025年6月30日
- 医療コラム
出産を終え赤ちゃんに会えた嬉しさとともに、これから始まる赤ちゃんとの生活は24時間休みなし。唯一ママが体を休められるのは、赤ちゃんが眠っている時間です。しかし新生児期の赤ちゃんの睡眠はとっても短い細切れ睡眠。さらに赤ちゃんは眠っている間にも手足や口を動かしたり、急に泣き出したり、ちょっとした物音や刺激で起きてしまうので、赤ちゃんの睡眠中もママは気を抜くことができないですよね。
この記事では「新生児期の赤ちゃんはどれくらい眠るのか?」というママの疑問を中心に、赤ちゃんの睡眠の特徴と注意するポイントについてまとめました。ぜひ生活リズムが整っていない新生児期のお世話のヒントにして、赤ちゃんとの生活を楽しみましょう。
1. 新生児の睡眠時間の特徴
新生児は1日の大半を眠って過ごします。1日のトータル睡眠時間は16~20時間ですが、1回の睡眠時間は2~3時間ほど。短い睡眠を繰り返すのが、新生児期の睡眠の特徴です。
新生児期には昼と夜の区別がなく、眠くなったら寝て、お腹が空いたりオムツが気持ち悪くなったりすると起きるといった睡眠サイクルを繰り返します。そのため、赤ちゃんのお世話をしているママはまとまった睡眠をとることができず、睡眠不足になりやすい時期です。
昼夜の区別がついてくるのが生後3カ月頃からで、この頃から徐々にまとまって眠ってくれるようになります。それまではこの後に紹介する「パパママの睡眠不足対策」を参考にしてパパとママは体を休めていきましょう1)。
2. 新生児期の睡眠の重要性
新生児にとって睡眠は、成長と発達にとても大きな意味をもちます。睡眠には、眠りが浅い「レム睡眠」と眠りが深い「ノンレム睡眠」の2種類があります。大人は睡眠の20%がレム睡眠ですが、新生児期の赤ちゃんはレム睡眠とノンレム睡眠が50%ずつの割合です。赤ちゃんが少しの物音や刺激で起きてしまうのは、眠りが浅いレム睡眠の時間が長いからといわれています。
新生児期にレム睡眠が長いのには、理由があります。実は赤ちゃんは、レム睡眠の間にその日に経験したことや触れたもの、音などの情報を整理して学習しているのです。レム睡眠の割合が多い新生児期は「脳が一番発達している時期」ともいえるでしょう。
もう一方のノンレム睡眠は深い眠りで体を休めるだけでなく、赤ちゃんの成長に大切な「成長ホルモン」が分泌する時間でもあります。成長ホルモンが集中的に分泌されるのは生後3~4カ月頃からです。その頃から徐々に睡眠時間が長くなり、レム睡眠の割合が減ってノンレム睡眠の時間が長くなります。
このように赤ちゃんはレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すことによって脳と体を発達させるのです。睡眠時間がしっかりととれている赤ちゃんは、情緒が安定していて、睡眠中に母乳やミルクの消化も進むためすくすくと成長するといわれています2)。
3. 赤ちゃんの睡眠環境について
1) 適切な明るさに調整
新生児期の赤ちゃんは、まだ昼と夜の区別がありません。赤ちゃんの1日のリズムを作るためには、まず朝になったらカーテンを開けて太陽の光を部屋に入れるようにしましょう。日中は適度な音に触れながらパパママと過ごすことで、活動する時間なんだと赤ちゃんも認識できるようになります。
夜になったら照明は暗めにして、静かな環境を作りましょう。夜泣きで起きてしまったときはナイトライトなどを使って明るくなりすぎないよう意識します。
このように昼は適度に明るく、夜は暗く静かな環境を作ることで昼と夜のメリハリをつけて、赤ちゃんの1日のリズムを確立していきましょう。
2) 快適な室温と湿度
赤ちゃんは代謝が活発で汗をかきやすく、体温調節が苦手です。室温や湿度、衣服の調整をすることで、赤ちゃんにとって快適な環境を整えていきましょう。
赤ちゃんに最適な室温の目安は冬は20℃前後、夏は27℃前後です。1年を通して湿度は50~60%に保つようにしましょう。しかし住んでいる地域などによって目安の室温・湿度が赤ちゃんにとって快適とは限りません。目安の室温・湿度は参考にしつつ、大人が過ごしていて快適かどうかで判断しましょう。
季節によってエアコンやヒーターなどを使う場合は、赤ちゃんに直接風が当たらないように注意しましょう。
3) 快適な寝具とは
寝返りをうったり自分で動かなかったりする新生児期の赤ちゃんでも、思わぬ事故を招く恐れがあります。実は赤ちゃんの事故のうち、8割が窒息によるものです。柔らかい素材の寝具や枕、毛布、掛布団は、誤って口や鼻を塞いでしまい窒息してしまう恐れがあるため避けましょう。固めに作られ、固定された赤ちゃん専用の寝具を使うのがおすすめです。
ママやパパが添い寝をしているというご家庭も多いと思いますが、添い寝は窒息やケガのリスクがあります。生後6カ月まではベビーベッドを使用する、寝ている赤ちゃんの周りには何も置かないようにする、掛布団のかわりにスリーパーを使用するなどの工夫をして、赤ちゃんの事故を防ぎましょう。
4) 音楽や環境音の活用
赤ちゃんを寝かせつけるためによく歌われる子守り歌には、赤ちゃんの気持ちを落ち着かせる効果があります。子守唄を聞いた赤ちゃんはリラックスして、安心して眠ることができるのです。
子守唄以外にもゆったりとしたリズムの音楽を流すのもおすすめです。適度な生活音やホワイトノイズを活用するのもよいでしょう。毎日同じ音楽を歌ったり流したりすることで、赤ちゃんは「寝る時間なんだな」という認識を持つこともできますよ4)。
4. 睡眠中の赤ちゃんの様子
睡眠中の赤ちゃんはぐっすり眠っている時もあれば、手足を動かしたり、口をもごもごしたりすることもあります。突然大きな声で泣く、うなるといったこともあるでしょう。このような赤ちゃんの様子を見ると「眠れてるのかな?」と心配になるママ・パパも多いと思います。しかしこれは赤ちゃんの生理的な現象で珍しいことではありません。
赤ちゃんが成長して寝返りをうったり、ベッドの中をズリズリと移動するようになったりすると、ベッドからの転落や窒息のリスクが上がっていきます。必ず赤ちゃんの周りにはなにも置かないようにして、ベッドの柵をしっかりと上げておきましょう。
5. 注意すべき睡眠時の赤ちゃんのトラブル
1) 睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の呼吸が浅くなったり、止まってしまう病気です。特に早産で産まれた赤ちゃんに起こりやすいため、注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群が起こる原因にはさまざまありますが、呼吸中枢の発達が未熟であることや生まれつき空気の通り道が狭くなっている、感染症、寝る時の姿勢などが関係していることもあります。赤ちゃんのいびきが気になる、無呼吸になる、夜中に不自然に何度も起きるといった気になることがあるときは病院に相談しましょう。
2) 乳幼児突然死症候群(SIDS)
乳幼児突然死症候群は、それまで元気だった赤ちゃんがなんの予兆もなく突然死亡してしまう病気です。生後2~6か月の赤ちゃんに多く、SIDSで亡くなる赤ちゃんの数は年々減少傾向ですが2023年時点では1歳未満の児の死亡原因の5位に上がっています6)。
原因はしっかりと分かっていませんが、SIDSを防ぐために以下のことに気をつけましょう。
寝かせるときは仰向け寝にする
SIDSの発症に赤ちゃんの寝方が関係しているかは不明です。しかしあおむけに寝かせた方が発症率が低いというデータがあります。睡眠中の窒息事故を防ぎ、赤ちゃんの異変にすぐに気づくこともできるため、赤ちゃんが寝るときはあおむけにしましょう。
周囲の大人の禁煙
赤ちゃんがたばこの副流煙を吸ってしまうことが、SIDSの原因の一つだといわれています。妊娠中から産後にかけて、ママだけでなく周囲の大人は禁煙をしましょう。
SIDSに直接関係しているわけではありませんが、赤ちゃんが寝ている間の窒息を防ぐために柔らかい寝具を避けて、枕やぬいぐるみといった口や鼻をおおってしまうものを周囲に置くことは避けましょう7)。
乳幼児突然死症候群(SIDS)については、こちらの記事を参考にしてください。
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5. パパママの睡眠不足対策
赤ちゃんのお世話は24時間休みなしです。特に赤ちゃんが昼夜の区別がついていない新生児期には、ママはまとまった睡眠時間を確保することがむずかしいでしょう。
出産直後のママはアドレナリンが多く分泌されているため、出産の喜びとともに赤ちゃんのお世話も頑張ってしまいがちです。しかし産後はホルモンバランスが急激に変化して自律神経が乱れたり産後うつのリスクが上がりやすい時期です。
周囲に頼れるパートナーや家族がいるときは、ママは赤ちゃんを任せて睡眠をとりましょう。長時間の睡眠をとるのがむずかしいときは、赤ちゃんのお昼寝に合わせてママも体を休めるのがよいでしょう。その際、質のよい睡眠を意識することで、短時間であっても体と心を休めることができます。睡眠の質を上げるポイントは①寝る前のスマホは避ける②直前の食事は避けることです。
赤ちゃんは生後3か月頃からまとまった睡眠をとれるようになり、生後半年頃から睡眠のリズムが整ってくることは多いといわれています。パパママのつらい睡眠不足がいつまでも続くわけではありません。頼れる大人がいるときは育児や家事を助けてもらい、一人で頑張りすぎないようにしましょう。
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まとめ:新生児期の赤ちゃんの睡眠は成長・発達に重要
新生児期の赤ちゃんの睡眠時間は2~3時間ほどと短く、ちょっとした音や刺激に反応してすぐに目が覚めてしまいます。しかし、新生児期の赤ちゃんにとって睡眠時間は、脳と体を成長させる大切な時間です。しっかりと睡眠を確保できるよう、赤ちゃんの眠りの環境を整えていきましょう。
パパママにとって新生児期は睡眠不足になりやすい時期です。周囲の大人が疲れてしまうと、赤ちゃんのお世話がきちんとできない状況にもつながります。なるべく周囲の大人の手を借り、頑張りすぎないようにしていきましょう。
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参考文献・参考サイト
1)未就学児の睡眠指針
2)生活リズムの確立と睡眠
3)乳児の安全な睡眠環境の確保について 2024 年改訂「寝ている赤ちゃんのいのちを守るために」(こども家庭庁)に関する見解
4)こども家庭庁 寝ている赤ちゃんのいのちを守るために
5)国立成育医療研究センター 睡眠時無呼吸症候群(2歳以下)
6)政府広報オンライン 赤ちゃんの原因不明の突然死 「SIDS」の発症リスクを低くする3つのポイント
7)こども家庭庁 乳幼児突然死症候群(SIDS)について
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。