出産後のからだはどう変化する?いつ回復する?産褥期について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

〒810-0033 福岡県福岡市中央区小笹5-15-21
TEL092-521-7500
ヘッダー画像

ブログ

出産後のからだはどう変化する?いつ回復する?産褥期について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

出産後のからだはどう変化する?いつ回復する?産褥期について【医師監修】

 

妊娠・出産を経て、産後は赤ちゃんを育てるために、ママの体は劇的な変化が起こります。ママの体は想像以上にダメージが大きく、産後しばらくは体の回復のためにも休養が大切になってきます。

 

今回は、産後、体が回復するまでの期間とされている産褥期について詳しく説明します。産後ママの体がどのように変化することを知ることで、無理のない育児のスタートを切れるよう参考にしてください。

 

 

1.産褥期とは

 

産褥期の定義は、妊娠・分娩によって変化した身体が妊娠前の状態に戻るまでの時期のことをいい、産後約6~8週間のことをさします1)

 

俗にいう「産後の肥立ち」も、産褥期と同様の期間のことをさすと考えられています。昔から「産後の肥立ちが悪いと…」と言われ、産褥期のすごし方が悪いと、その後もずっと体の不調が続き病気などを招くという風に信じられてきました。

産後の体のダメージは、全治数か月の交通事故と同等のダメージといわれることや、昔からいわれてきたことからも想像しやすいように、産後は無理をせず体を回復させることが重要になります。

 

 

2.出産後に起こる体の変化が起こる

 

出産を終え、体にはさまざまな変化が起きます。またその変化を促すために、ホルモンバランスも変化し、体だけではなく心も不調を来しやすくなります。ここでは、産褥期に起こる体の変化について詳しくお伝えします。

 

1) 子宮が小さくなる

鶏の卵ほどの大きさだった子宮は、出産直前になると約20倍の重さ、2000~2500倍の容積に。しかし、出産を終えた直後から子宮は急激に小さくなり、およそ6週間から8週間かけて元の大きさに戻るとされています。

この過程を「子宮復古」といい、産後の体の回復には欠かせない大切な変化です。具体的には、産後に子宮が収縮する後陣痛が起こることで子宮は徐々に小さくなり、産後2週間以内にはお腹の外から触れることができなくなります。そして、産後4週間頃には妊娠前の大きさに近づき、6~8週間で妊娠前と同じ大きさに戻ります。

 

 

 

2)悪露がみられる

悪露とは、出産直後からみられる出血の混じったおりもの・分泌物のことで、子宮内で不要となった残留物(血液成分や粘液など)を排出します。

悪露の状態は、出産後子宮が元に戻ろうとする「子宮復古」が順調に進んでいるかをみる大切な目安になります。
悪露は、出産後しばらくは赤色悪露ですが、その後褐色、黄色、白色と色が変化し分娩 6~8週後までには消失します。

 

 

 

3)母乳が出る

出産後に起こるホルモン変化と赤ちゃんが吸啜(乳頭刺激)することで母乳の分泌が始まります。出産後2日目頃から、薄い黄色の透明な初乳が出始め、5日目頃からは、成分が変化して移行乳となり、7~10日目頃には、白く濁った成乳へと変化がするのです。

母乳には、免疫グロブリンやラクトフェリンなど、赤ちゃんの免疫力を高める成分が豊富に含まれています。

 

4) 体型・体重

出産後は、体型も体重もすぐ元に戻ることはほとんどありません。

 

体型

お腹のふくらみは、出産直後ほどの大きさはないにしろ、しばらく前に出ている状態が続きます。体型が気になる場合は、無理にガードルで締めつけることはせず、子宮復古と体の調子をみて、骨盤矯正や運動などを取り入れていくのもよいでしょう。

 

体重

出産したからといって、妊娠前と同じような体重にすぐ戻ることはほとんどありません。しかし、育児や母乳栄養をすることによって徐々に体重が落ちることが多いです。

とはいえ、過度に体重増加がみられると元の体重に戻るためには時間や、必要応じて運動などが必要になるでしょう。また、初めての出産では体重が戻ったという人が多い一方で、2人目以降の出産では、体重がなかなか戻らない、未だに戻っていないと答えるママも多いです。

 

5) その他の変化

産後の体の変化としては、上記の他に、会陰切開や裂傷による会陰部痛や帝王切開後の創痛がみられることもあります。必要に応じて母乳に影響の少ない鎮痛剤を飲むなど様子をみます。

また、産後の浮腫や腰痛、尿モレなどさまざまな不調がみられる場合もあります。我慢はせず、ツライ場合は早めに医師などに相談しましょう。

 

 

3.産褥期のすごし方

 

産褥期は体の回復に合わせた過ごし方をすることが望ましいです。赤ちゃんのお世話をしながらも、ママの体を労わることを優先して過ごせるよう、妊娠中からサポート体制を考えていきましょう。

 

1) 産後1~2週間目

産後の体がもっとも急速に変化する時期。赤ちゃんのお世話は最低限にとどめてママの回復を最優先し病院と同じように過ごします。そのため、母乳以外の育児や家事はできるだけパパや両親、第三者のサービスを積極的に頼ることが大切です。

お風呂では入浴はできません。短時間のシャワーにとどめておきましょう。

 

 

 

2) 産後3~4週目

体の調子が徐々に戻ってくる時期で、少しずつ動くこともできるようになるでしょう。体の調子が良い時に、軽い家事をすることからはじめていきます。しかし、無理はしてはいけません。育児や家事の合い間にこまめに休憩をいれる、重いものを持つなど負担が大きい家事は控えるなどして、その日の体調に合わせて無理のない範囲で行います。

入浴はせずシャワーですませましょう。2週間健診は、ママと赤ちゃんだけではなくなるべく家族の付き添いをお願いするのが望ましいです。

 

3)産後1ヶ月以降

生後1カ月ほど行う1か月健診で問題がなければママは日常生活に戻ることができます。入浴の可能になり性生活も可能です。まずは、体力を戻すためにも軽い運動から始めるのもよいでしょう。里帰り出産をしたママは、体調をみながら自宅へ戻る計画を進めましょう。

とはいえ、産褥期であることには変わりなく体の状態も万全ではありません。また、夜間の赤ちゃんのお世話も頻繁にある時期。長時間の外出や、体に負担のかかる家事などは様子をみながら行いましょう。

 

4) 産後8週間は原則就業禁止

労働基準法により、出産の翌日から8週間は就業することができません。ただし、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができます2)

ママの体調や赤ちゃんの状態をみて仕事復帰の時期を、周りの家族と一緒に考えていくことが大切です。

 

 

4.産褥期に気をつけないといけない症状

 

産褥期にはさまざまな体の変化みられますが、注意しないといけない体の変化もあります。以下のような症状が見られる場合は、健診を待たず医師に相談しましょう3)

また、体だけではなく心がツライと感じる場合も、医師だけではなく地域の助産師や保健師に相談するなどして早めに対処することが大切です。

 

赤い悪露の量が多い、ずっと続いている
悪露から異臭がする
お腹がずっと痛い
排尿痛や頻尿がある
高熱がみられる
めまいや息切れ、動悸などがある
頭痛が続いている
胸部が痛い(おっぱい以外)
乳房が痛い・熱を持っている、乳首が痛い
赤ちゃんのお世話がつらいと感じる

 

 

まとめ:出産後しばらくは、周りの力を頼って無理をしないように

出産後のママの体は、思ってる以上にしんどくツライ状態です。そのうえで育児がはじまるため多くのママが無理をしがち。産後の肥立ちが悪くならないためにも、産褥期はママの体を優先にして積極的に休養することを意識しましょう。

また、家族のサポートが得られない場合は、早めに使えるサービスや相談場所を調べておくことが大切。自分に合ったサービスを利用し、少しでも不安の少ない産後を送れるようにしてくださいね。

 

 

安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。

詳しくはこちら
ガーデンヒルズウィメンズクリニック 各種教室の案内

 

出典
1) 日本助産師会:妊娠中の標準的な健康教育
2) 厚生労働省委託 働く女性の心とからだの応援サイト:産前・産後休業を取るときは
3)日本産婦人科医会:分娩中・産褥期に起こり得る症状

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。