妊娠中のお酒は大丈夫?胎児への影響とアルコール摂取について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠中のお酒は大丈夫?胎児への影響とアルコール摂取について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠中のお酒は大丈夫?胎児への影響とアルコール摂取について【医師監修】

 

アルコールは飲むだけでなく、料理や消毒など生活に欠かせないものです。妊娠中の禁酒について多くの人が知っていても、生活で使用するアルコールは赤ちゃんに影響はないのでしょうか?

飲酒による赤ちゃんへの影響はどのようなものがあるのか、妊娠とアルコールの関係について解説していきます。コロナを経てより身近となったアルコールとの妊娠中の付き合いについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

1. 妊娠中の飲酒が胎児に与える影響とは

 

妊婦さんが飲酒をすることで高まるリスクを解説します。これらを予防するためにも妊娠中は禁酒することが大切です。

 

1)早産・流産

妊婦さんが飲酒をすると、血液によってアルコールが赤ちゃんに運ばれます。おなかの赤ちゃんはアルコールをうまく代謝することができず、ママにとっては少量のアルコールでも赤ちゃんは大量のお酒に酔っぱらっている状態になってしまうのです。アルコールは赤ちゃんの成長にも影響を与え、赤ちゃんの成長が遅くなったり止まってしまったりする「発育不全」になってしまいます。

さらにアルコールにはママの体の「プロスタグランジン」を増加させる作用があります。プロスタグランジンは子宮の収縮を促すホルモンのため、出産時期ではないのに子宮が収縮してしまい流産や早産になるリスクが高くなるのです。

 

2)胎児性アルコール症候群(FAS)

妊娠中の飲酒によって生じる3つの特徴が赤ちゃんにみられると、胎児性アルコール症候群と診断されます。

【胎児性アルコール症候群の特徴】
顔面の特徴
平たい顔、薄い上唇、頭が小さいなど
発達の遅れ 低体重、骨や筋肉の発育不良など
中枢神経障害 学習障害、知的障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)など

出生直後は顔面や低体重など外見の特徴だけですが、成長とともに精神面の問題が分かっていくことが多いです1)

 

3) 胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)

胎児性アルコール・スペクトラム障害とは、妊婦さんの飲酒が原因で起こるすべての障害のことです。「顔面の特徴」「発達の遅れ」「中枢神経障害」の3つを満たした胎児性アルコール症候群が、胎児性アルコール・スペクトラム障害のなかで最も重症です。しかしこれらの特徴すべてが当てはまらなくても、アルコールによる影響を赤ちゃんが受けていると判断された場合に胎児性アルコール・スペクトラム障害と診断されます2)

 

4)胎児奇形

胎児奇形の原因は「アセトアルデヒド」です。アルコールを飲むと体内で作られるアセトアルデヒドには赤ちゃんの奇形を誘発してしまいます。奇形は外見だけでなく、心臓や脳といった重要な臓器にも起こります。多くの人が妊娠に気が付く妊娠初期にこれらの重要な臓器は作られます。妊娠に気づいた時点で禁酒をしなければいけない理由は、これらの臓器に影響を与えないためなのです3)

 

 

2. 妊娠中の「いつから」「いつまで」お酒を避けるべき?

 

妊娠中何週であっても、赤ちゃんはアルコールによる影響を受ける可能性があります。妊活期間から禁酒をするのが理想ですが、妊娠に気づかず飲酒をしてしまっていたという人もいるでしょう。実は妊娠超初期はアルコールの影響がほかの時期に比べると少ないといわれています。あまり心配しすぎず、妊娠に気づいたらすぐに禁酒をしましょう。

 

妊娠中のアルコールの量に「安全な量」はありません。少量だから大丈夫と思わず、妊娠に気付いたら「お酒は飲まない」を徹底しましょう4)

 

 

3. 妊娠中にアルコール消毒は大丈夫?

 

コロナを期に生活に欠かせない存在となったアルコール消毒ですが、妊娠中に使用した場合赤ちゃんに影響が出てしまうのでしょうか?

手指用、そして食器や家具などに使用するアルコール消毒は、日々の生活でよく利用するという人も多いと思います。これらのアルコールは皮膚から吸収される量は極めて少なく、アルコール成分がすぐに蒸発してしまうため妊婦さんが使用しても問題はありません。

実は妊婦さんにこそアルコール消毒はしっかり使ってもらいたいのです。厚生労働省でもインフルエンザ対策として、妊婦さんのアルコール消毒の使用を推奨しています。妊娠中は免疫力が低くなるため、さまざまな菌に感染してしまう恐れがあります。アルコール消毒をうまく利用して、妊婦さんとおなかの赤ちゃんの感染対策をしていきましょう5)

 

 

4. アルコールが入っている食品は食べて大丈夫?

 

1) 料理に使われる日本酒やみりん

食材の臭み取りや旨味を引き出すために使いたい料理酒やワイン、これらのアルコールを妊娠中に使用してよいか心配になる人もいるでしょう。結論から言うと、少量を加熱するのであれば問題なく使って大丈夫です。加熱することでアルコールのほとんどは蒸発するのですが、完全になくなるわけではないので大量に使うのは避けましょう。

料理酒やワインだけでなく、みりんや醤油にもアルコールは使われています。調味料を料理に使用する前に、成分表示を確認するのがおすすめです。

 

2) アルコール入りのチョコレートや洋菓子

妊娠中はついついお菓子に手を伸ばしてしまいがちです。甘いものが食べたい時に手軽に食べられるチョコレートですが、中にはアルコールが使われているものもあります。ほかにもケーキやゼリー、健康のために取り入れたいドライフルーツにもアルコールが含まれていることも。

風味付けで使われるなどアルコールの量はそれぞれですが、妊娠中はなるべくアルコールが含まれていないお菓子を選ぶのがおすすめです。ケーキ屋さんなどの専門店で購入するときは、お店の方にアルコールが含まれているかどうかを確認しましょう。

 

 

5.ノンアルコール飲料は飲んでもいいの?

 

妊娠前までお酒が好きでよく飲んでいたという人は、妊娠中も「アルコールが飲みたい」と思うことがあるかもしれません。どうしても飲みたいと思ったら「アルコール0.00%」と表示されているノンアルコール飲料を選んで飲みましょう。

ノンアルコール飲料のなかには、アルコールが微量に含まれているものがあるので注意が必要です。厚生労働省はアルコール度数0.00%をノンアルコールと定義していますが、酒税法ではアルコール分1%以上の飲料が酒類と定めています。そのためアルコールが1%未満であればノンアルコールに該当するという考え方もあります。妊娠中にノンアルコール飲料を飲むときは必ず表示を確認して「アルコール分0.00%」のものを選びましょう6)7)

 

 

まとめ:妊娠に気付いたらアルコールは飲まない!を徹底しよう

妊娠中の飲酒は、少量であっても赤ちゃんに影響がないということはありません。妊活中からの禁酒をするのがおすすめですが、妊娠に気が付く前に飲酒をしてしまっていたという人もいると思います。しかし妊娠超初期は赤ちゃんへの影響が少ないといわれている時期です。心配しすぎず、妊娠に気付いた時点から禁酒をしましょう。

アルコールは「飲む」以外でも、日常生活には欠かせない存在です。旨味をひきだすために料理に使ったり、消毒でウイルスからママと赤ちゃん守ったり、このようにアルコールと上手に付き合うことで健やかなマタニティライフを過ごせますよ。

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)MSDマニュアル 胎児性アルコール症候群
2)健康日本21アクション支援システム 胎児性アルコール・スペクトラム障害
3)日本産婦人科医会 飲酒、喫煙と先天異常
4)日本産婦人科医会 妊娠中の飲酒について
5)厚生労働省 新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中の人や授乳中の人へ厚生労働省
6)酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準
7)国税庁 Q1 酒類の定義を教えてください。

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。