「つわり」はいつからいつまで続くの?つわりの症状・対処法について【医師監修】
- 2024年9月7日
- 更新日: 2024年8月27日
- 医療コラム
つわりは、妊娠初期によくみられる不快症状のひとつ。その症状は個人差が大きく、同じママでも妊娠のたびに症状や程度が違うこともあります。
今回は、つわりについて詳しくお伝えします。つわりの時期や症状、つわりの種類別の対策についてお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
1.つわりとは
つわりは妊娠によって起こる消化器症状のひとつで、症状によって「吐きつわり」「食べつわり」「においつわり」「よだれつわり」などに分かれます。
1)つわりの時期やピーク
つわりはおおよそ5週前後から始まることが多く、8週〜10週頃にピークをむかえ、12週〜16週ぐらいまでの妊娠初期の間に落ち着くのが一般的です。
しかし、時期や症状のピークは個人差も大きく、つわりの症状がほとんどないママがいる一方で、稀につわり症状が妊娠後期、出産直前まで続くママもいます。
2)つわりの原因とは
つわりのメカニズムについては、未だはっきりとしたとことは分かっていません。考えられる主な原因としては、妊娠中の分泌されるホルモンの変動が関与しているとわれています。ホルモンの急激な増減などにより、消化器症状や嘔吐中枢に影響を与えているのです。
2.つわりの種類や症状について
つわりにはさまざまな症状があり、ひとつの症状だけではなく複数同時に現れる場合があります。主な症状について説明します。
1)吐きつわり
つわりの症状の中でも多くのママにみられ、胃や胸のむかつきや吐き気が起こります。「食べても吐いてしまう」「空腹時に吐き気がある」「気持ち悪くて食べられない」といった症状がみられ、ひどい場合は水分の摂取も難しいママもいます。
2)食べつわり
食べつわりとは、「空腹時に気持ちが悪くなる」「吐き気を催すため常に口に何か含んでおきたい」といった症状のことです。夜間でも空腹による気持ち悪さで目が覚めてしまうこともあります。
3)においつわり
妊娠前や普段気にならない匂いが、妊娠中に不快に感じられ、気持ちが悪くなる症状です。これは嗅覚が敏感になることで引き起こされます。よくある例として、調理中の匂い(ご飯を炊く匂い、揚げ物の匂いなど)や香水・柔軟剤の匂いなど、これまではいい匂いと感じているものでも敏感に反応してしまうことがあります。
4)よだれつわり
口の中に過剰に唾液がたまりやすくなり、気持ち悪くて飲み込むこともできない症状のことです。そのため、唾液を常に外に吐き出さないといけず、テイッシュや袋などを常に持ち歩かないといけないママも多いです。
3.つわりの症状と具体的な対策について
つわりの症状は、ママの体質などによって個人差があります。またそのメカニズムも不明です。そのため、つわりの症状に対し「これをすればよい」というはっきりとした解決策をお伝えすることはできません。
しかし、症状を和らげる、軽減する方法はいくつかあります。取り入れやすいものから取り入れ、自分にあった対策を行いましょう。
1)十分な休息をとる
妊娠中はホルモンや急激な体調の変化の影響で、疲労感が強い状態。つわりの症状があるときは、十分な休息がとれるように心がけることが大切です。疲れている状態が続くと、つわりの症状を悪化させてしまうことがあります。妊娠初期は特に眠気が強く、集中力もきれやすくなります。無理はせず、まずはからだを休ませることを優先しましょう。
2)小分けに食べる
食事を一般的な量ではなく、小分けに分けて、少量ずつ摂ることが有効です。小分けにすることで、空腹を避け、胃にかかる負担を軽減します。ピンポン玉ぐらいのおにぎりを小分けに食べているというママも多いです。
3)レモンなど柑橘系のにおいを活用
レモンの香りやレモンの絞り汁を使うと、つわりの症状が軽減するというママもいます。また、妊娠初期にも使用できる柑橘系のアロマ、特に「グレープフルーツ」や「レモン」「ベルガモット」などを使った芳香浴も気分転換に効果的で消化も助ける作用が期待できます。
4)香りや匂いの回避
強い匂いや刺激的な香りを避けるように心がけると、においつわりの症状が緩和されることがあります。普段使っている洗剤やボディーソープなどを無香料のものにしてみる、スーパーの総菜コーナーには近づかないなどもその例です。
5)食べ物などを冷ます
温かいご飯や料理はおいしいもですが、つわりのときは一緒ににおいを強く感じ食べづらさを感じる場合があります。調理されたものを少し冷ましてみるのもよいでしょう。また、冷たい食べ物はにおいが強くなく喉を通りやすいというママもいます。しかし、摂取のしすぎによる体の冷えには注意が必要です。
6)こまめな水分補給
吐くことがつづくと、脱水になる危険があります。一度にたくさんの飲むのではなく、一口ずつの水分をこまめに摂ると、摂取がしやすいでしょう。また、口の中が乾燥しやすく、口内環境の変化で歯周病などの口内トラブルもおきやすくなります。妊娠中はなるべく口の中を潤すことを、意識して過ごすことをおすすめします。
4.妊娠悪阻(にんしんおそ)とは
つわり症状がひどく、極めて強い吐き気や激しい嘔吐を繰り返し、脱水や異常な体重減少などを起こすことを妊娠悪阻(にんしんおそ)といいます1)。
妊娠悪阻は、体重減少(体重の 5%以下)、脱水、ケトーシス、電解質異常の状態をみて診断します。治療としては、安静とともに輸液(水分・電解質・ビタミン・糖などを含む)を行い、症状によって制吐剤の投与をしながら様子をみていきます。
つわりの症状が強い場合は、妊婦健診を待たず早めに医師に相談することも大切です。
5.つわりは我慢しない!
多くの人がつわりを経験するとはいえ、症状が重いママや長く続くママは、体だけではなく精神的なダメージを受けることになります。つわりは個人差があるため、他の人と比べてはいけません。
「みんな同じだから自分も我慢しなきゃ」、ではく、自分がしんどい、きついと感じた場合は、早めにかかりつけの医師に相談しましょう。また、周りのサポートを受けることでつわり症状の緩和・軽減につながります。妊娠したら、家族や周りの方を頼る、会社の上司には早めに伝えるようにして、なるべく自分と赤ちゃんを優先するようにすごしてください。
まとめ:つわりがツライときは周りを頼ろう
つわりは、多くの妊婦さんが起こる不快症状ですが、個人差も大きいため我慢しすぎてはいけません。また、つわりの症状がひどいと赤ちゃんのことも心配になるでしょう。つわりはほとんどの場合赤ちゃんに影響しないとされていますが、それでも不安になるものです。
今回ご紹介した対処法を試しながらも、症状がつらい場合は妊婦健診を待たず早めに相談しましょう。ママは十分頑張っています!自分を労ることも忘れないでくださいね。
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出典
1)MSDマニュアルプロフェッショナル版 「妊娠悪阻」
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。