お腹の赤ちゃんが大きいといわれたら?大きい赤ちゃんや巨大児の原因・リスク・すごし方について【医師監修】
- 2024年6月1日
- 更新日: 2024年6月24日
- 医療コラム
妊婦健診などで「お腹の赤ちゃんが大きめですね」「このままいくと4000g超えるかもしれないです」などといわれると不安に思うママもいるでしょう。
赤ちゃんが大きく育つことは一概に悪いとはいえませんが、なかにはリスクが生じる場合もあります。
今回はお腹の赤ちゃんが大きい、または巨大児と診断されたママや赤ちゃんについてその原因やリスク、すごし方などについて詳しく解説します。
1.お腹のなかの赤ちゃんが大きいとは?巨大児とは?
「お腹の赤ちゃんが大きい」とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか、巨大児との違いについてもお伝えします。
1)お腹の中の赤ちゃんの大きさの基準とは?
お腹の赤ちゃんの体重「推定体重」は、妊婦健診の超音波検査で、BPD(赤ちゃんの頭の左右の幅)、ACまたはFTA(おなか回り、またはおなかの横断面積)、FL(赤ちゃんの太ももの骨の長さ)といった、各部位を測って算出します。
「赤ちゃんが大きめ」と指摘される場合、算出された推定体重がその週数の平均値と比べて、成長曲線から「大きくはずれている」場合と、「標準内だけど大きい」場合の2つがあります。
後者の場合は、特に心配する必要はないことがほとんどでしょう。
超音波検査の推定体重は必ず正しいというわけではありません。±10%程度の誤差があります。また、前述したように、同じ「大きい」でも意味が異なります。
定期的な妊婦健診は必ず受診し、心配や不安があるようならしっかりと担当医師に確認していくことが大切です。
2)巨大児とは
大きい赤ちゃんのなかには「巨大児」になる赤ちゃんがいます。
日本産科婦人科学会では、出生体重が4000g以上の赤ちゃんを巨大児としています。
妊娠中の児の推定体重が、毎回平均より大きく上回る場合が継続すると巨大児になる可能性もあり得るでしょう。「巨大児」は、出産・産後でママや赤ちゃんにリスクを伴う可能性があります。詳しくはのちほど説明します。
2.お腹の赤ちゃんが大きくなる、巨大児になる 原因・メカニズム
お腹の赤ちゃんが大きくなる原因はさまざまですが、ここでは主な3つを説明します。
1)両親の遺伝
赤ちゃんの両親のどちらか、また両方の身長が高い場合や体格が大きめなどの場合は、お腹の赤ちゃんが大きく成長する可能性があります。また、現在は標準サイズでも、両親どちらかの出生時の体重が大きめだと、赤ちゃんも大きくなる可能性があります。
2)肥満女性の妊娠
肥満女性が妊娠した場合、お腹の赤ちゃんの体重も大きくなりやすいことが分かってきました。メカニズムはまだはっきりとはわかっていませんが、肥満妊婦の胎盤は非肥満妊婦よりも重く大きいため、胎児の過剰発育への関与が示唆される1)という報告もあります。
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3)妊娠糖尿病
妊娠糖尿病になると、血糖が高い状態が続くため、胎盤に通るブドウ糖の量も多くなってしまいます。お腹のなかの赤ちゃんは、常に高血糖にさらされ、甘いものを食べると太るのと同じ現象が子宮内で起こります2)。そのため、巨大児になるリスクも高くなるのです。
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3.お腹の赤ちゃんが大きい・巨大児のリスクとは
お腹の赤ちゃんが正常より逸脱して大きい、巨大児の場合は、赤ちゃんやママのリスクが高くなる場合があります。
1)赤ちゃんへの影響
肩甲難産による胎児機能不全、腕神経叢麻痺、上腕・鎖骨骨折
新生児仮死、低血糖、呼吸障害 など
赤ちゃんが巨大児の場合、娩出時にうまく肩が娩出できない肩甲難産が起きやすく、赤ちゃんの心拍が下がるなどの胎児機能不全を起こすことがあります。また、無理に赤ちゃんを娩出させようとすると、腕神経叢麻痺、上腕・鎖骨骨折のリスクも考えられます。
お腹にいる間は高血糖状態が続いているため、インスリンの分泌量も高い状況です。娩出後、母体から切り離された赤ちゃんは、高いインスリン濃度の状態になるため低血糖になる可能性があります。また、高インスリン状態は肺の成長を防いでしまいます。そのため、赤ちゃんの呼吸障害なども招く可能性もあるのです3)。
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2)ママの影響
腟内や会陰が裂けることによる大量の出血
弛緩出血、産道損傷 など
経腟分娩の場合、赤ちゃんが大きい場合産道を通過するのに時間がかかってしまいます。そのため、母体の腟内や会陰が大きく裂ける産道損傷が起こり、大量の出血を及ぼす可能性もあるのです。また、出産後も子宮の収縮が十分にできない弛緩出血が起こりやすく、出血の危険性があります。
上記の危険性がある場合は、自然分娩ではなく予定日よりも早く産む計画分娩や誘発分娩を行う場合もあるでしょう。また経腟分娩が困難だと判断された場合は帝王切開になるケースもあります。
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4.赤ちゃんが大きいといわれたら
赤ちゃんが大きいと指摘されたら、焦る必要はありません。しかし、より普段の生活を意識することでリスクを防ぐことができます。
1)妊娠中のすごし方
肥満女性や糖尿病指摘されている、またママの体重増加が著しい場合は、生活習慣を見直していくことが大切です。
体重コントロールは安産の近道といわれているように、赤ちゃんの増えすぎてしまう体重をコントロールすることにもつながります。妊娠中はより一層、食事や運動などを通して普段の生活に気を付けることが大切です。
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2)妊娠37週をすぎたら
妊娠37週をすぎたらいつでも生まれていい時期(正期産)になります。赤ちゃんが大きめの場合は、予定日を待たず早めに出産できることを目指しましょう。
医師や助産師の指導のもと、運動や子宮収縮などを促す乳頭刺激などを行うなどして過ごしてくださいね。
3)巨大児で生まれた赤ちゃんのその後
巨大児で生まれたからといって「巨大児=大きく育つ」とは限りません。その子の成長を温かく見守りましょう。
まとめ:ママの日頃の生活を見直すきかっけに
赤ちゃんが正常の大きさより逸脱している・巨大児の場合は、出産や産後のママや赤ちゃんのリスクが高くなる可能性があります。日ごろから体調管理を心がけ、生活習慣に気をつけながら過ごしくださいね。心配なことがあれば、かかりつけの医師に早めに相談しましょう。
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出典
1) 杏林大学 産科婦人科学教室 准教授:田嶋敦 教授:小林 陽一 「妊娠前の母親の肥満は胎児の発育に影響を与える」
2) 沖縄県医師会 「子供の肥満・大人の肥満」
3) MSDマニュアル 「在胎不当過大児」
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。