よくある赤ちゃんの「しゃっくり」 原因と対処法について
- 2025年4月26日
- 更新日: 2025年4月16日
- 医療コラム
はじめての子育てママパパたちのなかには、赤ちゃんが頻繁に「しゃっくり」して驚いたという人を多いでしょう。特に新生児期の赤ちゃんはよくしゃっくりが出るため「どうすればいい?」「病気ではない?」と心配になる方もいるかもしれません。しゃっくりを止めるためにさまざまな工夫をしているママもいるかもしれませんが、間違った方法を実践すると赤ちゃんが危険になることもあります。
この記事ではよくあるあかちゃんのしゃっくりの原因と対処法について解説します。稀に、しゃっくりが病気のサインであることもあるため、見逃してほしくないポイントもふくめ紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
1. なぜ赤ちゃんはよくしゃっくりするの?原因とは
しゃっくりは「横隔膜のけいれん」による生理現象です1)。
横隔膜は胸の下の方にある「膜の形」をした筋肉で、横隔膜が上下することで肺の中に空気が出入りをやすくして呼吸をサポートしています。なぜしゃっくりが起こるのか原因は分かっていませんが、横隔膜をコントロールしている神経が刺激される刺激によって起こるのではないかといわれています。
【赤ちゃんがしゃっくりを誘発する具体的な行動】
● 空気を多く飲み込んでしまった
● ミルクを早く飲み込んでしまった
● ミルクをたくさん飲んだ
● 便が溜まっている
● 体の冷え
● 不安・興奮 など
では、大人と比べて赤ちゃんのしゃっくりが多いのはなぜなのでしょうか?
赤ちゃんは体のさまざまな場所が未熟な状態で生まれてきます。そのため小さな刺激であっても横隔膜がけいれんを起こして、しゃっくりが出てしまうのです。成長するにつれて横隔膜や神経が発達していき、しゃっくりは少なくなっていくでしょう。
お腹の中から赤ちゃんの「しゃっくり」を感じていたママは多くいるではないでしょうか。妊娠中にお腹が規則的に小さく振動していたのが、胎児しゃっくりです。お腹の中でも赤ちゃんが頑張って成長していたのを感じますよね。
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2. しゃっくりの止め方、対処法とは
赤ちゃんのしゃっくりが止まらないと、苦しそうに感じ、なんとか止めてあげたいと思う方もいるでしょう。ここからはしゃっくりの止め方と、しゃっくりを予防する対処法について解説します。
1) 自然になおるのを待つ
赤ちゃんのしゃっくりは生理現象のため、時間が経つと自然に治まります。
しかし、小さな赤ちゃんがしゃっくりをする姿は、見ていて心配になることもあるかと思います。赤ちゃん本人が、しゃっくりをしながらも機嫌よく過ごしているのであればそのまま様子をみていても構いません。しゃっくりで腹圧がかかり、吐き戻しをする可能性もあるため、なるべく顔は横にむけておきましょう。
長い時間しゃっくりが続く時は、この後に紹介する他の方法を試してみましょう。
2) 授乳の姿勢を工夫する
ミルクや母乳を飲んだときに毎回しゃっくりが出る赤ちゃんは、ミルクと一緒に空気を吸い込んでしまうことが原因になっているかもしれません。
空気をなるべく飲み込まないようこれから紹介する方法を試してみましょう。
【母乳授乳】
大きく口を開けたタイミングで乳輪まで口の中にふくんで、乳首を深くくわえさせる
【ミルク授乳】
赤ちゃんの上半身は少し起こし、ゴム乳首全体にミルクが満たせれる状態に哺乳瓶を傾ける
もし授乳の最中にしゃっくりが出始めたら、一旦授乳を中断し様子をみます。そのまま授乳が無理なくできそうあれば続行し、授乳ができないようであれば赤ちゃんの体勢を変えてみたり、抱っこをした状態でゆっくりと歩くのもおすすめです。背中を優しくトントンとたたくのもよいでしょう。
3) げっぷをさせる
授乳の際に赤ちゃんはミルクと一緒に空気も飲み込んでしまいがちです。特に哺乳瓶で授乳している赤ちゃんは、空気を飲み込みやすいといわれています。授乳後のしゃっくりは、げっぷをすることでしゃっくりが止まることがあります。げっぷと一緒に吐き戻しがあるかもしれませんが、空気と一緒に飲んでいたミルクが出てきただけなので心配しなくて大丈夫です。
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4) 赤ちゃんが冷えていたら温めてあげる
体の冷えとしゃっくりは一見関係がないように思えますが、皮膚や粘膜が未熟な赤ちゃんは「冷たい」という刺激でもしゃっくりを誘発してしまうことがあります。「オムツは濡れていないかな」「汗で蒸れていないかな」など赤ちゃんの体を確認しましょう。
3. 間違った対処法とは
ここからは、赤ちゃんのしゃっくりに対する間違った対処法を紹介します。これらの方法は赤ちゃんが危険な状態になることもあるため避けましょう。
1) 驚かせる
驚くことでしゃっくりが止まるという医学的根拠はありません。赤ちゃんを過剰に驚かすことは、赤ちゃんにとって刺激が強く、別のトラブルを引き起こす可能性のあるため避けましょう。
2) うつぶせ寝をそのままにする
ネットなどの情報で「うつぶせ寝にするとしゃっくりが止まる」という情報を見たことがある人もいるかもしれません。しかし赤ちゃんをうつぶせで寝かせたままの放置すると、窒息してしまう危険が2)あるため、避けましょう。
3) 水を多く飲ませる
大人がしゃっくりが出たときに、水を多く飲むことで治まったという経験をしたことがある人がいるかもしれません。しかし赤ちゃんのしゃっくりは、ミルクを飲んで胃が大きくなることもしゃっくりの原因となってしまいます。そして赤ちゃんの胃は容量が少ないため、大量のミルクを飲んでも胃に貯めておくことができずに吐いてしまいます。しゃっくりの対処法として水分を多く飲ませるのはやめましょう。
4) 激しい振動や揺さぶり
激しい振動や揺さぶりは、脳や目の奥で出血してしまう「揺さぶられっ子症候群」になる危険があります。赤ちゃんの首がすわるのはだいたい6か月頃、それまでの赤ちゃんは首の筋肉が未発達のため、頭の揺れは大人よりも大きな力がかかってしまい危険です3)。赤ちゃんに対する激しい振動や揺さぶりは、しゃっくりを止めるときでなくても、行わないようにしてください。
4. 異常なしゃっくりとは?受診のタイミング
しゃっくりで受診するタイミングは「しゃっくりが数時間続く時」です。
また、しゃっくりに加えて以下の症状があるときは、肺炎や腸閉塞、胃食道逆流などの病気の可能性があるため、時間をおかず早めに病院に相談しましょう。
● 元気がない、ぐったりしている
● 発熱している
● 嘔吐やよだれが大量に口から出てくる
まとめ:赤ちゃんのしゃっくりは生理現象。ただし長時間続くしゃっくりには注意が必要
小さな赤ちゃんがしゃっくりをしている姿は、苦しそうに見えるかもしれません。赤ちゃんは体の機能がまだ未熟なので少しの刺激でもしゃっくりを誘発してしまいますが、大人と同じで赤ちゃんのしゃっくりも生理現象の一つです。自然に治まることも多いので、心配しすぎなくて大丈夫ですよ。
ただし、長い時間ずっとしゃっくりをしている場合には、もしかしたら生理現象以外の原因が隠れているかもしれません。赤ちゃんと毎日接しているママやパパが「おかしいな」と感じることがあったら、病院に相談しましょう。
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参考文献・参考サイト
1)MSDマニュアル家庭版 しゃっくり
2)消費者庁 Vol.607 就寝時の窒息事故に気を付けましょう
3)小児科オンラインジャーナル 激しい頭の揺れは「揺さぶられっ子症候群」に注意!
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。