妊娠中の浮腫(むくみ)はなぜ起こる?メカニズムやママと赤ちゃんの影響について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠中の浮腫(むくみ)はなぜ起こる?メカニズムやママと赤ちゃんの影響について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠中の浮腫(むくみ)はなぜ起こる?メカニズムやママと赤ちゃんの影響について【医師監修】

 

浮腫(むくみ)は、妊娠中によく起きるマイナートラブルのひとつです。とはいえ、妊娠浮腫が続いてしまうと、不調を感じやすく、日常生活にも支障をきたすこともあるかもしれません。

 

今回は、妊娠中に浮腫(むくみ)が起きやすい原因やメカニズム、ママや赤ちゃんへの影響についても解説します。また、浮腫の対策や対処についてもお伝えしますのでぜひ参考にしてください。

 

1.妊娠浮腫の原因とメカニズム

 

妊娠中は、さまざまな体の変化により非妊娠時より浮腫が起きやすくなってしまいます。その原因は主に以下の3つ1)が考えられます。

 

1)妊娠による血液量の増加

妊娠をすると、体内を循環する血液(循環血液)の量が増加します。非妊娠時に比べ、体内の水分量が増えるためむくみやすい状態です。

 

具体的に、血液量は妊娠7週目には早くも10%増加し、32週前後でピークになります。これは、非妊娠期と比較して血液量は45%〜50%(1500~1600ml)の増加に相当することになります。

 

2)ホルモンの変化による水分貯留量の増加

妊娠によるホルモンバランスの変化により、毛細血管は普段よりも多くの水分や栄養素、その他の物質を外に漏らしやすい状態になります。ナトリウムという成分も体内に再び吸収される量が増えてしまい、血液中の血漿タンパク濃度の低下なども原因で体内の水分貯留が非妊娠時よりも増えてしまいます。

 

3)子宮の増大などよる血管の圧迫

妊娠による子宮の増大と赤ちゃんの成長により、脚の付け根にある腸骨静脈が圧迫されてしまいます。その状態が続くと、静脈の血液が心臓に戻れず、下肢に溜まってしまい浮腫が起きやすくなります。

 

2.妊娠中の浮腫によるママと赤ちゃんの影響

 

妊娠浮腫そのものは、妊婦のママや胎児に大きな影響を与えることは少ないですが、妊娠高血圧症候群を早期に発見して治療するための重要な手がかりとなります2)

 

妊娠高血圧症候群が重症化してしまうと、母子ともに命の危険がある病気を引き起こすことがあります。

詳しくは以下の「妊娠高血圧症候群」についての医療コラムを参考にしてください。

 

 

 

また、浮腫の状態が続くと体重コントロールが難しくなり、それに伴いさまざまなトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。

妊娠中の体重管理は、健やかな妊娠・出産・産後を迎えるためにもとても大切です。妊婦健診時のみではなく、毎日体重測定をするなどして体重を意識した生活を送りましょう。

 

 

 

3.妊娠浮腫の対策・対処法

 

妊娠中の浮腫を予防するため、悪化させないためには日頃の生活を意識して過ごすことが大切です。からだに負担をかけないようにすごしていきましょう。

 

1)血液の循環を滞らせる姿勢や衣服を避ける

同じ姿勢を長時間とらない

座りっぱなしや立ちっぱなしなど、長時間の同じ姿勢は、全身の血の巡りを悪くしてしまいます。仕事などでどうしても同じ姿勢を保たないといけない場合は、自分で意識して体勢をかえる、休憩をこまめに入れる、立つ・座るなどの違う姿勢をとるなどしていきましょう。

 

締め付けの少ない衣類や下着を選ぶ

妊娠初期のお腹がまだ目立たないときでも、これまでの下着や衣服が窮屈に感じやすくなります。ショーツやブラなどははやめにゆとりのあるものを選び、窮屈にならないようなものを着用しましょう。

 

2)血液の循環をよくする

ウォーキングやストレッチなど軽い運動を行う

切迫早産などで医師から安静の指示が出ている方以外は、毎日軽めの運動を取り入れましょう。運動することは、血液循環をよくすだけではなく、出産・育児に必要な体力づくりや体重コントロールにおいても大切です。

 

 

 

お風呂に浸かる

シャワーですませるのではなく、お風呂に浸かることも血液循環をよくするポイントです。疲れもとれやすく、安眠効果もあるため積極的に入浴をしましょう。妊娠中の入浴時間は10分程度が望ましいです。不調がある場合は、入浴は避けてください。

 

冷え性を予防する

身体の冷えは血液循環を悪くし、浮腫も生じやすくなります。実際、夏場でも足先やお腹が冷たくなっている妊婦さんは多いです。どの季節でも、下半身やお腹が冷えないように腹巻や靴下を活用して過ごしていきましょう。

 

3)足にたまりやすい血液を心臓に戻す

 

マッサージをする

ふくらはぎは第2の心臓ともいわれており、下肢に貯まった血液や水分を心臓に送り返す大切な役割を持っています。

しかし、妊娠中は血管の圧迫や運動量の低下によって足がむくみやすい状態です。足のマッサージをすることで、血流の改善がみられ浮腫を解消しやすくなります。

 

【マッサージの方法】
①手のひら全体を使って少し圧を加えのを意識
②足のくるぶしからふくらはぎを通り太ももへ向かってゆっくりとなでる
③それぞれ数分行う
④からだが温まっている、入浴中やお風呂あがりにするのがおすすめ

 

横になるときに足を高くする

横になるときに、足元を心臓より少し高い位置に置くようにする時間をつくりましょう。妊娠後期になると仰向けの姿勢がきつくなるため、長時間は避けます。

足元を高くすることで、足に貯まっていた血液や水分の戻りがよくなります。クッションなどを使って、楽な姿勢をとれるよう調整しましょう。

 

着圧ソックス(弾性ストッキング)を着用する

ほどよく足に圧をかけることで血液の循環をよくし、浮腫の対処に効果が期待できます。しかし、締めすぎは体調不良を来すため、マタニティ用や使い慣れたものを使用しましょう。

 

4)食事に注意する

 

塩分の摂りすぎに注意する

塩分を摂りすぎると、からだはむくみやすくなります。妊婦さんは、ナトリウムを再吸収しやすくなるため、より浮腫が起きやすい状態です。これまで以上に塩分摂取量には注意しましょう。

 

 

 

カリウムを多く含む食品を摂り、塩分を排出させる

バナナ、野菜、イモ類などに含まれるカリウムは、体内のナトリウムを排出させる働きがあります。カリウムを含んだ食材を多く摂取する必要はありませんが、食事のバランスをみながらカリウムを含んだ食材も摂取していきましょう。

 

5)しっかり休息をとる

しっかり休息・睡眠をとり、ストレスをためないようにすることもとても大切です。心身の疲労がたまってしまうことで不調を起こしやすくなるため、ストレスはなるべくため込まず、しっかり休息をとりましょう。

 

4.病的な原因があることも

 

妊娠浮腫は特に治療の必要はありませんが、病的な原因の浮腫3)もります。
浮腫がずっと続く、顔の浮腫がある、左右差がある、息苦しい、腎臓や心臓に持病がある方など、異変や不安がある場合は早めにかかりつけの医師に相談しましょう。

 

深部静脈血栓症(DVT)
妊娠高血圧腎症
周産期心筋症
蜂窩織炎(妊娠後期における浮腫の主な原因の表を参照)

 

 

 

 

 

まとめ:妊娠浮腫はよくあるトラブルだが、注意が必要

妊娠浮腫は多くのママで見られる症状です。しかし、それが長時間続く、妊娠初期から顕著にある場合は、注意が必要です。

妊娠・出産・育児にトラブルにならないためにも、妊娠浮腫の予防や対処を行い、妊娠浮腫が悪化しないように、今回お伝えした対処法や対策を行ってみてくださいね。

 

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出典
1) 「新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版」:サイオ出版
2) 厚生労働省委託 働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート「妊娠浮腫」
3) MSDマニュアル プロフェッショナル版 「妊娠後期における下肢浮腫」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。