妊娠期の「塩分の摂りすぎ」にはどんなリスクがあるの?【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊娠期の「塩分の摂りすぎ」にはどんなリスクがあるの?【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊娠期の「塩分の摂りすぎ」にはどんなリスクがあるの?【医師監修】

 

妊娠中は食事や栄養に気をつけるよう指導されることも多いでしょう。特に妊娠中の塩分の摂りすぎは、ママの不調だけではなく出産や赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。

 

今回は妊娠中の食事のなかでも「塩分の摂りすぎ」によるリスクや注意する食事などについて説明します。

これを読んだ今日から、ぜひ意識して過ごしてくださいね。

 

 

1.なぜ塩分の摂りすぎは危険なのか

 

塩分は体の機能を保つために欠かせないものですが、過剰に摂取する状態が続くとさまざまな影響を及ぼしてしいます。

 

塩分を摂りすぎてしまうと、血液中のナトリウム濃度を正常に戻すために、多くの水分を蓄えようとする働きが現れます。それにより血液量が増え、血管への圧力が高まる高血圧を発症してしまうのです。

また、高血圧の状態が続くと、脳血管障害や心血管疾患を招いてしまう可能性があります。さらに、ナトリウムを排泄する腎臓に負担をかけてしまうため、腎機能の低下を招いてしまう恐れもあるのです。

 

 

2.妊婦さんは塩分の摂りすぎになりやすい

 

もともと20~30代の女性の塩分摂取量は、それ以外の年代の女性と比べ多いことが分かっています。これは、日常的に外食や加工食品をと摂る機会が多いからです。

さらに、妊娠すると、体調の変化や食事に対する嗜好の変化により、偏った食事になってしまうケースも多くなります。自然に濃いめの味を好むことも多くなるため、普段の食事の塩分量を意識することが必要なのです。

 

 

3.塩分の摂りすぎによるママと赤ちゃんのリスクとは?

 

妊娠中の塩分の摂りすぎは、ママと赤ちゃんにどのような影響を与えるのでしょうか。それぞれのリスクについて説明します。

 

1)ママのリスク

浮腫(むくみ)

塩分の摂りすぎは、ママの浮腫を起こします。浮腫とは、皮膚ないし皮膚の下に水分が溜まった状態です。 血液中の水分が血管の外に異常に浸み出した状態であり、その状態が続くとその部位の痛みだけではなく、他の疾患を引き起こしてしまう可能性があります。

 

 

蛋白尿

妊娠中は、体に負担がかかっている状態のため、ストレスや体調の変化などで蛋白尿が出やすい状態です。しかし、蛋白尿が持続すると腎機能の低下や妊娠高血圧症候群を発症しているケースもあるため注意が必要です。

 

体重増加

塩分の摂りすぎは、からだに多くの水分を蓄えてしまうことから体重増加につながります。妊娠中は体重増加しやすい状態ですが、過剰に体重増加してしまうと、難産やほかの病気の発症につながり危険です。

 

 

 

 

 

 

妊娠高血圧症

塩分過多の状態が続くと、高血圧を引き起こします。妊娠中に発症した高血圧を妊娠高血圧症候群とよび、以前は妊娠中毒症ともいわれていました。現在では妊婦さんの約20人に1人の割合で起こるとされています。妊娠高血圧症候群が重症化すると、母子ともに命の危険があります。詳しくは以下の関連記事を参考ください。

 

 

 

これらのような異常の早期発見をするためにも、妊婦健診では妊婦さんの浮腫・尿検査・体重などを毎回しっかりと診ていくのです。

 

 

2)赤ちゃんのリスク

妊娠高血圧症候群になると、お腹の中の赤ちゃんの成長を妨げ、出産時のリスクも高くなってしまいます。

 

常位胎盤早期剥離

赤ちゃんがお腹のなかにいるのに、酸素と栄養を供給する胎盤が剥がれてしまう状態です。胎盤が剥がれてしまうと、赤ちゃんの命が危険な状態になり、同時に大量の出血も引き起こすため妊婦の死亡につながることもあります。

 

 

胎児発育不全・胎児機能不全

重度の妊娠高血圧症候群の場合、子宮や胎盤での血液の循環が悪くなり、これによって赤ちゃんが栄養不足や酸素不足になる可能性があります。

その結果、胎児発育不全(胎児の発育が阻害される)、低出生体重児の出生(2500g未満の赤ちゃんが生まれる)、胎児機能不全(胎児心拍の異常)が起こり、最悪の場合は子宮内胎児死亡(胎児が子宮内で死亡すること)を起こすことがあります。

 

 

4.妊娠中の塩分の摂り方のポイント

 

厚生労働省によると、妊婦さんお食塩摂取量の目安は1日6.5g未満1)としています。
※食品別の塩分目安量はこちら2)

 

食品別の塩分目安量からも見てわかるように、加工食品や麺類などは塩分が多い食品になります。必ず避けるというわけではなく、1日に食べる量を調整して無理のない食事を行うことを意識しましょう。

 

1)注意したい食事

・汁物・スープ(味噌汁やラーメンのスープは飲み干さない)
・漬け物、梅干し(塩漬けよりも浅漬けに)
・ちくわ、かまぼこなどの練り製品
・あじの開き、みりん干し、塩鮭など(魚の塩分処理に注意)
・ハムやソーセージなどの加工肉
・うどん、そうめん、ラーメンなどの麺類(カップ麺は要注意)
・ファーストフード、コンビニのホットスナック
・せんべい、ポテトチップス(塩分のあるおやつ)

 

2)減塩のコツ3)

1. 漬け物は控える 自家製浅漬けにして、少量に
2. 麺類の汁は残す 全部残せば2~3g減塩できる
3. 新鮮な食材を用いる 食材の持ち味で薄味の調理
4. 具だくさんのみそ汁にする 同じ味付けでも減塩できる
5. むやみに調味料を使わない 味付けを確かめて使う
6. 低ナトリウムの調味料をつかう 酢・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシングを上手に利用する
7. 香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する こしょう・七味・しょうが・かんきつ類の酸味を組み合わせる
8. 外食や加工食品を控える 目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する

 

まとめ:食事がストレスにならないために

妊娠中は体調の変化もあり、思ったような食事を摂ることができないときもあるでしょう。そのときは、外食や出来合いのものを食べることもあるかもしれません。その際に少しの工夫で食塩の摂りすぎを防ぐことができます。妊娠高血圧症候群を予防するためにも、日々の食事がストレスにならないために楽しく減塩して過ごしてくださね。

 

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出典
1) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」
2) 順天堂大学医学部 「食品別カロリー・塩分目安量」
3) 厚労省 eネット「高血圧」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。