赤ちゃんとママの命綱「臍帯」(へその緒)の異常とは?臍帯異常のリスクと対応について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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赤ちゃんとママの命綱「臍帯」(へその緒)の異常とは?臍帯異常のリスクと対応について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

赤ちゃんとママの命綱「臍帯」(へその緒)の異常とは?臍帯異常のリスクと対応について【医師監修】

 

臍帯(へその緒)は赤ちゃんが成長するためになくてはならない「命綱」、妊娠中ママと赤ちゃんは臍帯によってつながっています。

この記事ではお腹の赤ちゃんになくてはならない臍帯にもし異常が起こってしまったら?そのリスクと対応は?というママの疑問を解決します。

 

 

1. 臍帯(へその緒)について

 

臍帯はへその緒ともよばれ、おなかの赤ちゃんは臍帯でママとつながっています。赤ちゃんのおへそと胎盤をつなぐ臍帯は、赤ちゃんの成長に必要な酸素や栄養を運ぶ道です。そして赤ちゃんが不要になった老廃物を、臍帯を介してママに渡しています。

臍帯の長さは50㎝、太さは2㎝ほどで、太い1本の静脈と細い2本の動脈、ワルトン膠質(こうしつ)で構成されています。太い静脈の周りに2本の細い動脈が絡みつくようになっており、血管が傷ついたりちぎれたりしないよう血管の周りは弾力性のあるワルトン膠質で守られています。

通常動脈には酸素、静脈には老廃物が流れていますが、臍帯は静脈に酸素や栄養、動脈に不要なものが流れているのです1)2)

 

 

2. 臍帯異常とは?

 

臍帯が通常とは違う状態になることで赤ちゃんに栄養や酸素が届きづらい状況になったり、赤ちゃんとママの命が危険な状態になることを臍帯異常といいます。

臍帯異常は大きく2種類に分けられ、1つめに臍帯に異常があるもの、もう1つは臍帯は正常だが妊娠の過程で異常が発生するものです。臍帯異常はママが自身で気づくことないため、妊婦健診で発見しましょう。ここからは、代表的な臍帯異常を説明します。

 

3. 臍帯巻絡

 

臍帯巻絡とは、臍帯が赤ちゃんの体に巻き付いてしまう状態のことです。手足や胴体など赤ちゃんの体のどの部分にも巻き付きますが、特に多いのが「頸部巻絡」という首に巻き付いた状態です。

臍帯が体に巻き付くと聞くと、ママは「赤ちゃんは大丈夫なの?」と心配になってしまうでしょう。実は臍帯巻絡は赤ちゃんの3割ほどの確率で確認されるもので、決して珍しいものではありません。そして臍帯巻絡になってしまっても、臍帯は弾力性のある組織でできているため赤ちゃんに大きな影響はないといわれています。

しかし、臍帯が何重にも巻き付いたり巻き付きが強かったりすると、赤ちゃんはストレスを感じてしまうことがあります。

臍帯巻絡の原因ははっきりとは分かっていません。臍帯が通常の50㎝より長かったり赤ちゃんの胎動が激しかったり、羊水が多い、双子や三つ子などに多いといわれています。

臍帯巻絡についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

 

 

 

4. 臍帯付着部異常

 

臍帯の赤ちゃん側はおへそに、ママ側は胎盤の中央付近にくっついています。ママ側の臍帯が胎盤の端にくっついていたり、胎盤から外れた卵膜という部分にくっついていたりすることを臍帯付着部異常といいます。

臍帯付着部異常になると妊娠中や出産時に赤ちゃんへのリスクが高くなることがあるため、注意が必要です。臍帯付着部異常には臍帯がくっついている部分によって辺縁付着と卵膜付着、前置血管の3つに分けられます。それぞれ詳しく解説していきます。

 

1)卵膜・辺縁付着

辺縁付着とは胎盤の端に臍帯がくっついている状態、卵膜付着とは胎盤の外側にある卵膜という組織に臍帯がくっついている状態のことをいいます。

通常臍帯は胎盤の中央についていますが、辺縁付着では胎盤中央ではなく端のほうに付着部分が少しずれてしまった状態なのです。しかし、臍帯は胎盤にくっついているため、問題になることはあまりありません。

しかし、卵膜付着では臍帯が胎盤ではなく卵膜にくっついているため、胎盤から送られるはずの酸素や栄養が十分に赤ちゃんに届きません。その結果、赤ちゃんの発育に影響を与えてしまうことがあるのです。ほかにも早産や新生児死亡などの赤ちゃんが危険になる可能性や、胎盤早期剥離といったママへのリスクも高くなる可能性があります3)

 

2)前置血管

前置血管は卵膜付着と同様に卵膜に臍帯がくっついてしまいます。卵膜付着と違う点は、臍帯が付着している部分が子宮の出口近くだということです。

前置血管でもし破水をしてしまうと、臍帯に血液を送っている卵膜の血管が断裂してしまいます。その結果臍帯に血液が流れず、血液を栄養に生きている赤ちゃんの命は危険な状態になってしまうのです。妊婦健診で前置血管の診断を受けたら、無事出産をするために帝王切開での出産となります。出産時期までは破水をしないよう十分に注意をしなければいけません4)

 

 

5. 臍帯過捻転

 

臍帯は引っ張られたり圧迫されたりしても大丈夫なように、弾力性がある組織で構成され、やや捻じれた構造をしています。臍帯過捻転は臍帯のねじれが通常よりもさらに強い状態になっていて、臍帯が引っ張られたり、圧迫されたりすることに弱くなっています。

臍帯の外から受ける影響によって臍帯の血液の流れに支障をきたす可能性があり、赤ちゃんの発育に影響がでたり、稀ではありますが突然死亡してしまったりすることがあるのです。

 

 

6.臍帯結節

 

臍帯結節とは、臍帯に結び目ができてしまっている状態のことです。完全に結び目ができてしまっている状態を「臍帯真結節」、実は結び目はできていないけれど臍帯がねじれたり肥厚したりすることで結ばれているように見える状態「臍帯偽結節」といいます。

臍帯に結び目ができてしまう原因は、主に赤ちゃんの胎動です。お腹の中で赤ちゃんが自由に動き回っている時に臍帯を結び付けてしまうため、臍帯結節を防ぐ方法がありません。ほかにも臍帯が長いことや羊水が多いことも、結び目が作られやすい原因だと言われています。

臍帯真結節では結び目によって臍帯が一部狭くなるため、血液が滞って赤ちゃんの発育不良が起こることがあります。一度臍帯真結節になると、結び目が自然に治ったということはほとんどありません。しかし、臍帯結節に気づかず無事に出産を終える方も多くいます6)

 

 

7.臍帯異常の診断と管理・対応について

 

ここまで紹介したように臍帯異常には臍帯に問題があるもの、環境によって異常がおこるものなど、さまざまな種類があります。
これらは妊婦健診のエコーやカラードップラーなどで発見されることがありますが、すべての臍帯異常が見つかるわけではありません。なかには出産後に臍帯異常が発見されることもあります。

ママと赤ちゃんがより安全に妊娠生活を過ごし、出産を迎えるためには、定期的な妊婦健診と、医師に受診の指示をされた場合はそれに従うことがとても大切です。

 

臍帯異常になると、状態によっては赤ちゃんの発育に影響を与える「胎児発育不良」や赤ちゃんが酸素不足になる「胎児機能不全」、お腹のなかで赤ちゃんが亡くなる「胎児死亡」を引き起こすこともあります。

臍帯異常が発見された場合は、定期的なモニタリングをおこなったり出産方法を帝王切開に変更したりするなどの対処を行います。臍帯異常の診断を受けたら医師の指示にそった生活を心がけていきましょう。

 

 

まとめ:臍帯異常の発見には定期的な妊婦健診が必須

臍帯異常の発見には、妊婦健診のエコーやカラードップラーなどの検査が必須です。お腹の赤ちゃんが成長するために必要な酸素や栄養を届ける役割をしている臍帯に異常があると、赤ちゃんの発育に問題が起こるだけでなく、命の危険もあります。妊婦健診で必ずしも臍帯異常が発見されるわけではありませんが、ママが自分で臍帯異常を発見することはできません。そのため、定期的な妊婦健診は必ず受けることが、臍帯異常の発見には重要です。赤ちゃんとママの命を守り、無事に出産を迎えるためにも妊婦健診は必ず受けましょう。

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)日本産婦人科医会 25. 胎盤・臍帯の超音波像
2)日本産婦人科医会 33. 単一臍帯動脈
3)日本産婦人科医会 30. 臍帯付着部異常(辺縁付着・卵膜付着・前置血管)
4)MSDマニュアルプロフェッショナル版 前置血管
5)日本産婦人科医会 31. 臍帯過捻転・過少捻転
6)日本産婦人科医会 32.臍帯巻絡・真結節

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。