元気だった赤ちゃんが突然死んでしまう「乳幼児突然死症候群(SIDS)」について【医師監修】
- 2024年10月26日
- 更新日: 2024年12月2日
- 医療コラム
赤ちゃんに万が一のことが起きてしまったら?そう考えるご家庭は多いのではないでしょうか。乳幼児突然死症候群は、乳幼児の死因の中でも高い死因のひとつですが、しっかりとした原因は未だ不明です。しかし、発生の可能性を軽減することはできます。
今回は元気な赤ちゃんでも起きることがある、乳幼児突然死症候群について詳しく説明します。今回ご紹介する予防方法を参考にし、これまでの生活を見直すきかっけや、これからのすごし方について家族と考える機会にしてください。
1.乳幼児突然死症候群(SIDS)とは
乳幼児突然死症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome/読み方:シズ)は、それまで元気だった赤ちゃんが、何の予兆や病歴のないまま、眠っている間に突然死亡してしまう病気です1)。
直接的な原因や要因は未だにわかっていない病気で、窒息などの事故とは異なります。睡眠中に起きるため、発見や対応が遅れてしまうこともあります。
2.乳幼児突然死症候群の確率・割合
乳幼児突然死症候群は、医療は発達している先進諸国でも毎年多く報告されています。日本はその中で死亡率は低く、発生数も減少傾向にありますが、令和4年(2022)年は47人の乳幼児が乳幼児突然死症候群で死亡したという報告があります2)。
乳幼児突然死症候群の8割は生後6ヶ月までに起こっており3)、1歳未満の赤ちゃんの死亡原因としては第4位となっています。まれに1歳以上でも発症することがあります。また、多くは夏場ではなく、冬の寒い時期に発生していることが報告されています。
乳幼児突然死症候群死亡者数の推移
資料:こども家庭庁資料より政府広報室作成2)
3.乳幼児突然死症候群を防ぐためには
乳幼児突然死症候群は原因不明であるため、予防法が確立されていないのが現状です。しかし、以下1)~3)で示しているポイントを日頃から心がけることで、この病気の発症率が低くなるというデータがあります4)。くわえて、4)の内容も普段の育児から気を付けることでより発生率を下げる可能性があるとされているので、ぜひ参考にしてください。
1)赤ちゃんを寝かせるときは、あお向けに寝かせる
乳幼児突然死症候群は、うつぶせ寝でもあおむけ寝でも起こる可能性がありますが、研究によると、うつぶせで寝かせた場合の方が、発生率が高いことがわかっています。
医学的な理由でうつぶせ寝を推奨されていない限り、赤ちゃんは顔が見えるあおむけで寝かせることが望ましいです。またあお向け寝は、睡眠中の窒息事故の予防になるため、うつぶせ寝よりは安全といえるでしょう。
2) 妊娠中や赤ちゃんの周囲では、たばこを吸わってはいけない
たばこは、乳幼児突然死症候群のリスクを高める主要な要因です。妊娠中の喫煙は、胎児の体重増加を妨げ、呼吸機能にも悪影響を与えることが明らかです。妊娠しているママ自身の喫煙はもちろん、妊婦や赤ちゃんの近くでの喫煙も避けるべきです。家族や周囲の人々の理解と協力も大切ですので、日頃から喫煙者への理解と協力をお願いしましょう。
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3)できるだけ母乳育児にトライする
母乳育児が赤ちゃんに多くのメリットをもたらすことは広く知られています。SIDSの研究では、母乳で育てられた赤ちゃんの方が乳幼児突然死症候群のリスクが低いことが明らかになっています。まずは、ママの体が優先ではありますが、可能な限り母乳育児に挑戦してみましょう。
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4)普段の育児で注意したいこと(乳幼児突然死症候群を少なくするため)
普段の生活で気を付けるポイントをご紹介します3)。
赤ちゃんを暖め(温め)すぎないようにしよう
「赤ちゃんを暖め(温め)すぎる」「厚着をさせる」「重い布団を使用しない」などのことを注意しましょう。厚生省研究班報告書では、赤ちゃんを布団や着衣で暖めるより、部屋の室温や湿度を調整して部屋全体を温かくする方がSIDSの発生が低いことが報告されています。
なるべく赤ちゃんをひとりにしないで
赤ちゃんがよく眠っているからといって、長時間一人にしておくのは避けましょう。できるだけ同じ部屋で一緒に寝るよう心がけます。
赤ちゃんから離れて過ごす時間がある場合は、室内カメラ(ベビーモニターー)などを設置し、赤ちゃんの様子がわかるようにします。しかし、室内カメラやセンサーだけをあてにするのではなく、定期的に赤ちゃんの様子を実際に確認することも大切です。
そして、赤ちゃんを一人残して外出するのは絶対にしないようにしましょう。
4. 当院の取り組み
当院では、新生児室と各部屋に、⾚ちゃんの無呼吸症候群や乳幼児突然死を防⽌するベビーセンスで、赤ちゃんのお世話が安全にできるように管理しております。出産後の母児同室指導の際に、入院されたママやご家族に、センサーの使用方法をお伝えしております。
まとめ:出産前から赤ちゃんの過ごしやすい環境を整えよう
乳幼児突然死症候群は、いつ起こるかわからないこわい病気です。まずは出産前から赤ちゃんを迎える環境を整えていきましょう。そして、産後の入院中で赤ちゃんのお世話に慣れ、扱いや気を付けるべきことを少しでも身につけて退院できるようにします。また、たばこは赤ちゃんにとって害以外のなりものでもありません。そのことをしっかり理解したうえで、たばこの付き合いを考えていきましょう。
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出典
1) こども家庭庁:乳幼児突然死症候群(SIDS)について
2)政府広報オンライン:赤ちゃんの原因不明の突然死 「SIDS」の発症リスクを低くする3つのポイント
3)NPO法人 SIDS家族の会:SIDSとは
4)厚生労働省:乳幼児突然死症候群(SIDS)
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。