お腹の中の赤ちゃんが自分の便を吸ってしまう「胎便吸引症候群」とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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お腹の中の赤ちゃんが自分の便を吸ってしまう「胎便吸引症候群」とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

お腹の中の赤ちゃんが自分の便を吸ってしまう「胎便吸引症候群」とは【医師監修】

 

胎便吸引症候群は、出産前後の赤ちゃんに起こるトラブルのひとつです。珍しいものではありませんが、重症になるケースもあり、ママの中には心配に思う方もいるでしょう。

 

今回は、赤ちゃんに起こる胎便吸引症候群について詳しくお伝えします。原因や、症状についてもお伝えしていますのでぜひ参考にしてください。

 

 

1.胎便ってなに?

胎便とは、赤ちゃんが生まれてはじめて出すうんちのことをいいます。出生後初期にみられる便で、移行便を経て生後5日頃には普通便になります。

お腹の赤ちゃんは食事を口にしているわけではありませんが、羊水を飲むなどで、胎便がつくられ、その内容は胃腸分泌物・胆汁・膵液・血液・産毛・胎脂などです。

詳しくは以下のコラムで詳しく説明しています。

 

 

 

2.胎便吸引症候群とは

 

通常お腹の中にいる赤ちゃんは、子宮内で便をすることはありません。しかし、何らかの原因で子宮内が低酸素状態になると、赤ちゃんの腸管の動きが活発になり肛門括約筋が緩むことで、お腹の中で胎便を出してしまうことがあります1)

 

出産前後に、その胎便を含んだ羊水を赤ちゃんが吸い込んでしまい呼吸困難や肺炎を起こす状態を「胎便吸引症候群(MAS)」とよびます。

 

 

3.胎便吸引症候群が起きる原因とは

 

胎便吸引症候群は、お腹の赤ちゃんが低酸素状態になると起きやすくなります。

 

1)低酸素状態になる原因

低酸素状態は、狭い産道を通るなどで出産前後にも起こりやすくなります。また、へその緒が圧迫されて一時的に赤ちゃんへの血流が減少してしまうことや、ママが感染症を発症してしまった場合にも起こってしまいます。

また、通常の出産は37週~41週で終えます(正期産)が、出産予定日を大幅に過ぎてしまうと胎盤の機能が低下してしまいます。予定日超過の産婦は低酸素のリスクが高い状態であるともいえます。

 

2)低酸素状態から胎便吸引症候群になるメカニズム

お腹の赤ちゃんが低酸素の状態になると、呼吸中枢が刺激され、羊水の中にいるにもかかわらず呼吸を試みる(あえぎ呼吸をする)ことがあります。その際に、赤ちゃんが胎便を含んだ羊水を吸い込んでしまうことがあり、これが胎便吸引症候群の原因となってしまうのです。

 

胎便が赤ちゃんの気道に入ってしまうと、気道が塞がれてしまう恐れがあります。また、胎便が肺に炎症を引き起こし、肺炎を引き起こすこともあります。さらに肺炎になると、肺に存在するサーファクタントとよばれる物質を壊してしまいます。

肺サーファクタントとは、肺を膨らませるために大変重要な物質です。しかし、サーファクタントが欠乏してしまうと、肺胞を開くためにより高い圧力が必要となるため2)、呼吸障害を引き起こしてしまうのです。

 

 

4.胎便吸引症候群の症状とは

 

1)分娩中

分娩中の症状としては、胎児の状態が安定せず胎児機能不全や新生児仮死を伴うことも多くみられます。胎便によって汚染されるため、臍帯、胎児の皮膚や爪などが黄緑色に染まることがあります1)

 

2)出産後

赤ちゃんが出生した直後から、以下のような呼吸障害を認めますが、通常は数日以内によくなることがほとんどです。ただし、重症の場合や合併症がある場合は入院期間が長くなる可能性もあります。

 

・多呼吸
・鼻翼呼吸(鼻を広げる)
・陥没呼吸(肋骨と肋骨の間がへこむ)
・チアノーゼ
・血中酸素飽和度の低下

重症な合併症:緊張性気胸/新生児遷延性肺高血圧症など

 

 

5.胎便吸引症候群の治療法とは

 

分娩時に、羊水混濁(胎便によって汚染されている羊水)が認められたら、胎便吸引症候群を疑い対処していきます。出産直後赤ちゃんが一番はじめに泣く前に、できる限り素早く口腔内の胎便を吸引することも大切です。

 

胎便吸引症候群の兆候がある場合や可能性がある場合は、保育器に入れて酸素を投与します。しかし、重症の場合は人工呼吸器による管理が必要です。また、サーファクタントの投与や気管内の胎便を洗浄することもあります。
さらに、細菌感染が生じることもあるため、抗生物質を投与されることもあります。

 

 

まとめ:なるべくストレスのない妊娠生活を

胎盤吸引症候群は、お腹の赤ちゃんに強いストレスがかかった場合に起きる可能性があります。日頃の生活のなかでも、赤ちゃんやママ自身に負担のかけかない生活をするよう心がけましょう。

また、出産時に低酸素状態になり胎便吸引症候群のリスクをあげることがあります。出産時の呼吸法やリラックス法を知っておくこともとても大切です。赤ちゃんが元気に生まれて気くれるためにも、健やかなマタニティライフを意識してくださいね。

 

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出典
1)浜松医科大学:「胎便吸引症候群 (MAS:Meconium aspiration syndrome)」
2)MSDマニュアル プロフェッショナル版:「新生児呼吸窮迫症候群」
3)Medical Note :「胎便吸引症候群」

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。