分娩中に排便してしまうのが怖い…よくある疑問と心配について【医師監修】
- 2026年8月22日
- 更新日: 2026年8月13日
- 医療コラム

出産が近づくと、「いきんだときに便が出てしまったらどうしよう」と不安を感じるママは少なくありません。デリケートな悩みだからこそ、誰にも相談しにくいですよね。
この記事では、分娩中の排便がなぜ起こるのか、心配しすぎなくてよい理由、分娩前後の体の変化までわかりやすくお伝えします。
1. 分娩中に排便してしまうのはなぜ?よくあることなの?

「いきんだときに便が出てしまうのでは…」という心配は、多くのママが一度は感じるものです。でも、その仕組みを知れば、必要以上に恐れなくてよいとわかります。なぜ起こるのか、そして恥ずかしがらなくてよい理由を、一緒に確認していきましょう。
1) いきむ力と排便が同じ仕組みで起こる理由
赤ちゃんを押し出すためにいきむ動作は、排便のときの力の入れ方と非常によく似ています。どちらも腹圧(お腹の圧力)を高めて骨盤底筋を使うという点で、体の使い方がほぼ同じです。
さらに、分娩が進むにつれて赤ちゃんの頭が産道を通ってくると、直腸(腸の出口に近い部分)が圧迫されます1)。この圧迫によって腸の中に残っていた便が押し出されやすくなるため、分娩中の排便は体の構造上、避けることが難しい自然な現象なのです。
つまり、いきみが上手にできているほど排便も起こりやすいとも言えます。「便が出てしまった」ということは、赤ちゃんを産もうとする力がしっかり働いているサインでもあります。
2) 実はとてもよくあること、医療スタッフは気にしていない
分娩中の排便は、ごくありふれたことです。助産師や医師は毎日のように分娩に立ち会っており、この状況に驚いたり動揺したりすることはまったくありません。排便があった場合も、スタッフは素早く清潔に対応しますので、ママが気にする間もなく処理されます。
医療スタッフにとっての最優先事項は、ママと赤ちゃんの安全です。「便が出た」という事実は、スタッフの意識にほとんど上ることがないくらい日常的なことです。ですから、「もし出てしまったら恥ずかしい」という心配は、どうか脇に置いてください。いきむことに集中することのほうが、安全なお産のためにずっと大切です。
また、立会い分娩のパパや家族に知られたくないという方も多くいます。医療者は、家族にもなるべく分からないように処理するので心配しすぎぎる必要はありません。
2. 分娩前に排便がないと心配?事前の準備について

「お産の前にお通じがなかったけど大丈夫?」と不安になるママもいます。実は、分娩前の排便の有無はそれほど重要ではありません。事前の準備について、正しい知識を持っておきましょう。
1)分娩前に排便がなくても問題ない理由
分娩前に必ず排便しておかなければならない、というルールはありません。陣痛が始まり、子宮の収縮が強くなってくると、腸の動きが自然と刺激されることがあります。その結果、陣痛の初期段階や分娩が近いタイミングで、自然にお通じが来るケースも多く見られます。
また、妊娠後期は赤ちゃんが大きくなることで腸が圧迫され、便秘気味になっているママも多いです。そのため、分娩直前にお通じがなくても、腸の中にそれほど便が残っていないこともあります。無理にトイレに長居したり、下剤を自己判断で使ったりする必要はありません。
2)浣腸を行う場合・行わない場合の違い
以前は分娩前にルーティンで浣腸を行う施設が多くありました。その主な目的は、腸内の便を減らして分娩中の排便を防いだり、腸への圧迫を軽くしたりすることにありました。
しかし近年は、ルーティンの浣腸が分娩の経過や感染リスクの改善に明確なメリットをもたらさないことが示されており、浣腸を標準的には行わない施設が増えています。
3. 分娩方法によって違いはある?無痛・自然・誘発のケース

お産の方法は、自然分娩・無痛分娩・誘発分娩とさまざまです。それぞれの方法によって、排便の感じ方や起こりやすさに違いはあるのでしょうか。ここでは分娩方法ごとの特徴を整理します。
1)自然分娩でのいきみと排便
自然分娩では、陣痛の波に合わせてママ自身がいきむタイミングをコントロールします。いきむ力が全身に伝わるため、その過程で排便が起こることは決して珍しくありません。
特に、「赤ちゃんの頭が下りてきたな」と感じる感覚は、分娩が順調に進んでいるサインのひとつです。痛みの中でいきみながら「もしかして便が…」と気になってしまうかもしれませんが、そのまま赤ちゃんを押し出すことに集中してください。スタッフが対応してくれます。
2)無痛分娩の感じ方
無痛分娩では、硬膜外麻酔によって下半身の痛みの感覚が和らぎます。そのため、排便の感覚そのものに気づきにくくなることがあります。ただし、感覚が鈍くなるからこそ、いきむタイミングを助産師の声かけに頼る必要があり、排便の有無にかかわらず医療スタッフが適切にサポートします。
3)誘発分娩時
誘発分娩の場合も、最終的にはいきむプロセスは自然分娩と変わらないため、分娩中の排便についての考え方は基本的に同じです。どの分娩方法を選んでも、排便について過度に心配する必要はありません。
4. 分娩後の排便が怖いと感じるママへ

無事に出産を終えてほっとしたのも束の間、「産後の初めてのお通じが怖い」と感じるママは少なくありません。会陰の傷や体の疲れが残る中での排便への不安に、しっかり向き合っていきましょう。
1)産後の排便が怖くなる理由といつ頃出るのか
産後に排便を怖いと感じる主な理由として、以下が挙げられます。
【会陰切開・会陰裂傷の痛み】
縫合された傷が排便時にひびくような感覚への不安
【痔の悪化】
妊娠中や分娩時のいきみで痔ができたり悪化したりすることがあり、痛みへの恐怖につながりやすい
【いきむことへの恐れ】
傷が開くのではないかという心理的な不安
産後のお通じが戻る目安は、一般的に産後2〜3日以内とされています2)。ただし、分娩後の食事量の少なさ・水分不足・体の緊張などの影響で遅れることも多く、産後4〜5日ごろになるママもいます。入院中にまだお通じがない場合は、遠慮せず助産師に相談してください。
2)産後の排便をラクにする工夫
産後の排便を少しでも楽にするためには、焦らず、体を整えることを意識してみましょう。
・水分をこまめに摂る
・食物繊維を意識した食事
・無理にいきまない
・便を柔らかくする薬を使う
産後に処方される軟便薬や整腸剤は安全に使えるものが多くあります。自己判断せず、医師や助産師に相談したうえで使用しましょう。
まとめ:分娩時の排便は自然なこと、安心してお産に臨んで
分娩中に排便してしまうのは、いきむ力と赤ちゃんの頭による直腸への圧迫から起こる、ごく自然な現象です。医療スタッフは日常的に対応しており、恥ずかしがる必要はまったくありません。分娩前に排便がなくても心配はなく、浣腸については施設の方針に従えば大丈夫です。
自然分娩・無痛分娩・誘発分娩のいずれの方法でも、排便について過度に気にする必要はありません。不安なときはひとりで抱え込まず、助産師や医師に気軽に相談してくださいね。
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参考文献・参考サイト
1)株式会社杏林舎:日産婦誌59巻10号「3.分娩の生理・産褥の生理」
2)MSDマニュアル家庭版:産褥期のケアの大まかな説明
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
