帝王切開の痛みについて知っておきたいこと~術後の痛みの経過と対処法~【医師監修】
- 2025年12月27日
- 更新日: 2025年12月19日
- 医療コラム

帝王切開は「痛みが強くて、手術後はなかなか動けなさそう」というイメージがある人も多いのではないでしょうか。これから帝王切開で出産予定の人は、赤ちゃんを迎える喜びとともに、手術への不安があるという人もいるでしょう。
この記事では帝王切開の痛みについて、知っておきたいことをまとめています。痛みがどれくらい続くのか、痛みを緩和させる工夫などについても紹介していますので、参考にして産後の生活に役立てください。
1. 帝王切開の痛みはいつからいつまで続く?

帝王切開で行った麻酔の効果は術後2~3時間ほどで切れてしまいますが、その後も痛みのコントロールをするため、大きな痛みを強く感じるということはないでしょう。また、痛みのピークは術後3日までのことが多いです。
その後どのくらい痛みが続くのかというと、個人差はありますが1ヶ月ほどは軽い痛みや違和感が続くことがあります。体の動きや天候によっては傷の痛みがぶり返すことがあるため、完全に痛みがなくなるまでは約1年ほどの期間がかかるともいわれています1)。
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2. 痛みの特徴と症状の例え

帝王切開の術後は体が傷を治そうとする反応から、傷口が「ズキズキ」「ジンジン」とした痛みを感じる人もいるでしょう。傷口がつっぱるような痛みがあると表現する人もいます。
痛みのピークが過ぎた4日目以降は、痛みが常にある状態はなくなります。しかし、トイレやくしゃみなどでおなかに力が入った時に突発的な痛みが生じることがあるでしょう。傷が治る過程で、傷とその周囲にかゆみが出てくる人もいます。
3. 痛み止めや点滴での緩和対策

帝王切開の術後は背中から麻酔薬を持続的に注入することで、痛みをコントロールします。術後数日で麻酔の管を抜いた後は、痛み止めの点滴や座薬、内服薬を使用して疼痛緩和をおこないます。
帝王切開後の痛みは、我慢しないことが回復を早くするポイント。寝れないほどの痛みがあるなど、痛みがひどいときには、遠慮せずに医療スタッフに相談しましょう2)。
4. 痛みを緩和する方法

痛み止め以外にも、痛みをコントロールする方法はあります。ここでは3つの方法を紹介していきます。
1) 体位の工夫
手術と産後の体の回復のためには、体を休めることも大切。体位を工夫することで、痛みを緩和しつつ体を休めていきましょう。
ベッドに寝た状態で横向きになり膝を曲げる、上体をやや起こすといった姿勢は、おなかへの負担が少ないためおすすめです。また、クッションや枕を使って、自分が楽な姿勢を探すのもよいでしょう。
傷口への負担をなるべくかけないよう、急な動きは避け、ゆっくり動くことを意識するのもポイント。ベッドからの起き上がりは、一旦横向きになってから下側のひじで体を支えながら、上側の手で床を押して上半身を起こしましょう。
咳やくしゃみは急におなかに力が入って、傷に強い痛みが出てしまいます。咳やくしゃみは、出そうになったら、傷口を押さえると痛みが少なくなるようです。
2) 物理的な方法
傷口は「冷やした方がいいの?」「それとも温めた方が効果がある?」と迷う人も多いと思います。冷やすか温めるかは、傷を触って熱感があるかどうかで判断しましょう。
術後数日は傷口に炎症が起こっているので、触ると熱感があるのが分かるでしょう。その期間は、傷口を冷やします。術後1週間ほど経つと炎症がおさまって、触っても熱さを感じません。この時期には、温めることで血流がよくなり、傷口の回復と痛みの緩和が期待できるでしょう。
しかし、入院中や痛みが強い場合、創部の異常がある場合は自己判断せず早めに医師に相談してください。
3) 呼吸とリラクゼーション
痛みを軽減させるためには、体を副交感神経が優位な状態にすることが大切。体がリラックスしている状態は、痛みを緩和させるだけでなく、血流がよくなって傷口の治癒を早めることにもつながります。
副交感神経が優位な状態にするために、気を付けたいポイントは2つ。
1つめは、呼吸です。術後は痛みで呼吸が浅くなりがちですが、ゆっくりとした大きな呼吸を心がけましょう。
2つめは、リラックスできる環境作りです。音楽を聴いたり、自分の好きなことをしたりすることで、緊張状態から解放される時間を作りましょう。
5. 帝王切開後の痛みがぶり返すことはある?

帝王切開の傷が完全によくなるまでには、数カ月から1年ほどかかるといわれています。
見た目には傷がよくなっているように見えると思いますが、実は筋肉や組織はまだ完全に回復していないことがあります。そのため、咳やくしゃみといった急におなかに力が入る動作で、傷の痛みがぶり返すことがあるでしょう。突発的な痛みが出たときは、痛みがおさまるまで安静にしましょう。
手術から時間が経っているのに、傷口に痛みがあると心配になりますよね。もし痛みがすぐにおさまるようであれば、様子をみても大丈夫です。しかしぶり返した痛みがずっと続いたり、傷口が赤くなったりしたら、早めに病院に相談しましょう。
まとめ:帝王切開の痛みのピークは術後3日目まで
赤ちゃんとの新しい生活が始まるタイミングに、帝王切開の痛みがあると今後の生活にも不安を感じるママは多いと思います。しかし痛みのピークは術後3日目まで。その後は徐々に回復して、痛みは少なくなっていきます。
術後は痛みを我慢せずに、痛み止めで疼痛コントロールするのが回復の近道です。紹介した痛みを緩和する3つの方法も使って、産後の回復に努めつつ、赤ちゃんとの生活を楽しみましょう。
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参考文献・参考サイト
1)日本産婦人科医会 No110 帝王切開 Q&A 私はこうしている
2)富山大学附属病院 Q:手術後の痛みとその治療方法―術後の痛み
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
