産後の喫煙が赤ちゃんに与える影響 ~家族みんなで考える赤ちゃんの健康~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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産後の喫煙が赤ちゃんに与える影響 ~家族みんなで考える赤ちゃんの健康~【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

産後の喫煙が赤ちゃんに与える影響 ~家族みんなで考える赤ちゃんの健康~【医師監修】

 

産後は赤ちゃんとの新しい生活が始まります。嬉しい変化がある一方で、生活が大きく変化することでママとパパに大きなストレスがかかることもあるでしょう。そんなときに、ふと「たばこを吸いたいな」と思う人がいるかもしれません。赤ちゃんにたばこはよくないと知識はあっても「実際どれくらい影響はあるんだろう?」「本当に吸ったらいけないの?」と疑問を持つ人もいるでしょう。

この記事では産後の喫煙が赤ちゃんに与える影響について解説しています。赤ちゃんに与える喫煙の影響はママだけではありません。パパをはじめ家族みんなで赤ちゃんの健康を守るために、産後の喫煙について考えていきましょう。

 

 

1. 喫煙が赤ちゃんに与える影響

 

1)間接喫煙の危険性

間接喫煙とは、自分がたばこを吸っていないにも関わらず、たばこの煙を吸い込んでしまうことです。たばこの煙には以下の3つの種類があります。

 

・主流煙:喫煙者がたばこから吸う煙
・呼出煙: 喫煙者が吐き出す煙
・副流煙 :たばこの火のついた部分から出る煙

 

たばこの煙が体に悪いことは有名ですが、実は喫煙者がたばこから吸い込む主流煙よりも、たばこから立ちのぼる副流煙の方がより高濃度の有害物質が含まれてます。周りの人の煙に含まれるニコチンや一酸化炭素といった有害物質を吸い込むことで、健康被害を及ぼす可能性が高くなるのです。

赤ちゃんが間接喫煙することで起こる健康被害にはせきやたんなどの呼吸器症状や気管支炎、肺炎などがありますが、最も注意したいのが乳幼児突然死症候群(SIDS)です。SIDSは赤ちゃんがそれまでなんの症状もなかったにも関わらず、突然死亡してしまう怖い病気です。このSIDSにたばこが大きく関与しているといわれています1)

 

2)母乳への影響

ママがたばこを吸ったり、パパや家族の喫煙によって取り込まれた有害な成分は、血液を介して母乳へと移行してしまいます。そしてその母乳を飲んだ赤ちゃんに健康被害が及んでしまうのです。

母乳からの影響で注意したいのがニコチン中毒です。ニコチン中毒になると、赤ちゃんに不眠や下痢、嘔吐、落ち着きのなさ、脈拍増加などの症状が出てしまいます。さらにニコチンはホルモンに対しても影響を及ぼし、母乳の分泌量が少なくなることもあります2)

 

 

2. 喫煙の環境と赤ちゃん

 

赤ちゃんへの健康被害を避けるなら家族全員が禁煙をすることが大切ですが「すぐに禁煙がむずかしい」「どうしてもたばこを吸いたい」というときは、喫煙場所を屋外に移しましょう。ただし屋外で喫煙したからといって、赤ちゃんへの影響がまったくなくなるわけではありません。喫煙後は有害物質が髪や服などに付着しているため、必ず手洗い、うがいをしましょう。衣服を着替えたり、シャワーを浴びたりするのもおすすめです。

喫煙後30分程度は体に有害物質が残るといわれているため、その時間内は赤ちゃんに近づかない方がよいでしょう。授乳中の場合、喫煙後3時間程度で母乳中のニコチン濃度が下がるといわれています3)

「屋外まで行かなくても換気扇の下で吸うのはだめなの?」と思う人もいると思いますが、実は換気扇や空気清浄機ではたばこの有害物質を除去することはできません。さらに現代の住宅構造は気密性が高く、目に見える煙がなくてもたばこの煙が空気中に滞留しているのです。

 

 

3. 家庭内に潜む最大の危険「たばこの誤飲」

 

生後3~4か月頃の赤ちゃんは、手に持ったものをなんでも口に入れてしまいます。灰皿に残った吸い殻やたばこの箱なども、赤ちゃんには危険なものと判断することがむずかしく、初めて触れる未知なるおもちゃのように感じてしまうのです。

ニコチンの毒性は非常に強く、たばこ1本分のニコチンで乳幼児が死亡する可能性があります。さらに水の入った灰皿に吸い殻を浮かべると有害物質が水に溶けだして、その水を少し舐めただけでも嘔吐などの中毒症状が出てしまうのです。

近年紙タバコに代わって有害物質が少ないとされる加熱式タバコを利用する人が増えていますが、赤ちゃんにとってはどちらもニコチンの影響は同じです。「赤ちゃんの手の届くところにはたばこやたばこに関連するものは置かない」を徹底していきましょう。もし誤飲したかもと思ったら、自己判断で吐かせようとはせずにすぐに医療機関に連絡しましょう4)5)

 

 

まとめ:家族全員で赤ちゃんをたばこの健康被害から守ろう

赤ちゃんは体が小さいため、たばこの影響を強く受けてしまいます。そんな赤ちゃんをたばこの健康被害から守るために、大切なのは家族全員がたばこを吸わないこと。

しかし育児ストレスや環境が変化したことでの心身への負担などを、喫煙で紛らわせたいという気持ちが出てきてしまう人もいるでしょう。ですが喫煙でストレスを解消することはできません。一時的に気持ちが落ち着くかもしれませんが、ニコチン依存によってたばこを吸わないとイライラするという負のサイクルを生みかねないのです。

もし産後のストレスを感じていたら、たばこではなく別の方法でストレス解消を目指しましょう。赤ちゃんとの散歩、家族や友人と会話する、それでも解消できないときは地域の相談窓口を利用するのもよいでしょう。産後の赤ちゃん、そして家族の健康を守るために産後は家族で禁煙を目指しましょう。

 

 

 

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参考文献・参考サイト
1)厚生労働省 たばこの煙と受動喫煙
2)公益社団法人母子健康協会 母乳とタバコ
3)日本小児科学会 こどもの受動喫煙を減らすための提言
4)日本医師会 新型たばこなら、大丈夫?は誤解です
5)消費者庁 乳幼児のたばこの誤飲に注意しましょう

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。