赤ちゃん用ミルクはどれを選べばいい?ミルクのタイプと特徴・成分について【医師監修】
- 2025年1月18日
- 更新日: 2025年1月15日
- 医療コラム
赤ちゃんの栄養を支える大切な存在であるミルク。「母乳が出ない」「仕事に復帰するため」など、様々な理由で赤ちゃん用ミルクが必要になることもあるでしょう。しかし、種類が豊富すぎて、結局どれを選べばいいのか迷ってしまう方もいます。
今回は、赤ちゃん用ミルクの種類や特徴、選び方について詳しく解説していきます。
赤ちゃんやご家庭に応じた適切なミルクの選び方を知り、日々の育児に役立ててください。
1.赤ちゃん用ミルク(人工乳・育児用ミルク)について
赤ちゃん用ミルクは、母乳の代わりとなるように成分を調整したミルクで「人工乳」「育児用ミルク」とも呼ばれます。母乳に含まれる栄養素を参考に、赤ちゃんが健康に成長するために必要な栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなど)が配合されています。
1)商品ごとによるミルクの成分の違い
赤ちゃん用のミルクは、各メーカーが母乳研究に基づき、より母乳に近い成分を可能な限り再現するよう開発がされています。
主な成分は、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン類、ミネラル類でメーカーによって配合比率は若干異なります1)。主な違いとしては、母乳に多く含まれる成分である「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「アラキドン酸」、腸内環境を整える「オリゴ糖」、免疫力を高める「ヌクレオチド」などの配合量や種類が挙げられます。とはいえ、厚生労働省が定める規定2)に基づいて製造されているため、基本的な栄養価に大きな差はないといわれています。
2)ミルクはいつまで飲ませる?
メーカーの多くは、生後12ヶ月頃までを目安としています。この時期になると、離乳食からの栄養摂取が増え、通常の牛乳に切り替えることが可能だからです。
とはいえ、必ず1歳になったら「ミルクやめないといけない」というわけではなく、ミルクをいつまで飲ませるかは、赤ちゃんの成長や発育、離乳食の進み具合によって異なります。一般的には、離乳食が3回食になる1歳頃を目安に、徐々にフォローアップミルクや牛乳に移行していくことが多いようです。心配な場合は、かかいつけの小児科で相談してみるとよいでしょう。
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2.ミルクの種類と特徴
ミルクにはさまざまな形状や種類があります。それぞれの特徴について説明します。
1)缶ミルク(大缶・小缶)
粉末状になった最も一般的なミルクです。お湯で溶かして使います。
メーカーや商品よって細かくラインナップが揃っている点が特徴です。大容量でコスパが良く、家で頻繁にミルクを使う家庭におすすめです。開封後は1ヶ月程度で使い切る必要があるため、ミルクをあまり飲ませない家庭では、期限までに使いきれないという問題があります。
2) スティックタイプ
粉ミルクが1回分ずつスティック状に包装されたものです。
計量する手間がなく、持ち運びが便利で、外出先や夜間の授乳に便利です。また使い切りタイプなので、衛生的で開封しない状態では長期保存も可能です。価格は缶タイプより割高になります。
3)キューブタイプ
計量の手間がなく、簡単に細かい量も調節できるため、スムーズに調乳が可能なタイプ。
さっとお湯に溶けるため、手間がかからず、外出先や夜間の授乳に便利です。また長期保存も可能なので緊急用に適しています。開封後全部使い切る必要はなく、赤ちゃんに必要なミルクの量を飲ますことができます。缶タイプよりはやや割高です。
5)液体ミルク
液体状のミルクで、調乳不要。そのまま飲ませることができるイプです。
お湯を用意する必要がなく、外出時や災害時にも役立ちます。しかし、開封後は速やかに使用する必要があり、余ったミルクを次回の授乳に使うことはできません。値段は一番割高です。
6) 特殊ミルク
アレルギーや乳頭不耐性の赤ちゃん、低体重児用赤ちゃんなど、赤ちゃんの体質や状態に合わせて作られたミルクです。必ず医師の指示のもとで使用します。
3.ミルクの選び方
ミルクにはいろいろな種類があることがわかりましたが、どのミルクが自分にあっているのか迷うこともあるでしょう。ここではミルクの選び方について説明します。
1)赤ちゃんの体調や好みよって選ぶ
赤ちゃんによって、ミルクの味の好みや、体質に合う合わないがあります。最初は少量から試してみて、赤ちゃんの様子を見ながら選んでいきましょう。便秘や下痢、吐き戻し、湿疹などの症状が出た場合は、医師に相談し、ミルクの変更を検討しましょう。
はじめてミルクを用意するなら、出産する病院で使用するミルクを事前に確認して揃えておくと安心です。出産後しばらくは、母乳が出るまでミルクで補うことがあります。赤ちゃんが最初に口にするミルクは、病院のミルクの可能性が高いため、ミルクの味の変化に過敏な赤ちゃんでも対応できるように最初は病院と同じミルクをそろえておくのがおすすめです。
2)コスパで選ぶ
缶タイプが最もコストパフォーマンスに優れていますが、一度開封すると保存期間が限られるため、使用頻度と購入量を計画的に考える必要があります。スティックやキューブタイプは割高ですが、無駄が少ないというメリットがあります。
家庭の状況や使用頻度に応じて最適なミルクの種類は異なり、コスパも変わってきます。ひとつの種類だけではなく、さまざまな種類のミルクを状況にあわせて使い分ける家庭も多いです。
3)使いやすさで選ぶ
生活スタイルや育児環境によって最適なタイプは異なります。外出が多い場合は携帯性の高いスティックタイプやキューブタイプなど、自宅での使用が主な場合は缶タイプというように、育児の状況に合わせて、ママパパにとって使いやすいタイプのミルクを選びましょう。夜中の授乳は調乳が簡単な液体ミルクもおすすめです。
また、缶タイプでもごみの分別がしやすいタイプや、詰め替えタイプ、液体ミルクも缶や紙パックなど、形状などがメーカーによってさまざまです。自分たちの状況に合わせた使いやすいものを選んでいきましょう。
4.フォローアップミルクとの違い
フォローアップミルクは、一般的な赤ちゃん用のミルクとは異なり、離乳食だけでは不足しがちな鉄分やカルシウムなどを補うためのミルクです。
1歳頃から、離乳食の進み具合に合わせて少量から与え始めます。しかし、フォローアップミルクは、離乳食をしっかり食べていれば、必ずしも必要なものではありません。お子様の成長や食生活に合わせて、無理なく進めていきましょう。心配であれば、かかりつけの小児科の先生などに相談するとよいでしょう。
まとめ:その時々の家庭に合ったミルクを選択しよう
赤ちゃん用ミルクは、種類が豊富で最初はどれを選べばいいのか迷ってしまうかもしれません。おすすめは、出産する病院で使用するミルクの缶タイプ(小サイズ)からそろえていくことをおすすめします。
その後、赤ちゃんの成長や生活スタイル、経済状況などを考慮し、最適なミルクを選んでいきましょう。また、ミルクの量や飲ませ方については、医師や助産師に相談することをおすすめします。出産時の入院中だけではなく、2週間健診、1カ月健診などを有効につかって相談してくださいね。
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出典
1)日本乳業業界:育児用ミルクはどのようにして母乳に成分を近づけているのですか?
2)厚生労働省:乳及び乳製品の成分規格等に関する省令
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。