妊婦健診で調べる感染症について。感染した場合のママや赤ちゃんの影響とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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妊婦健診で調べる感染症について。感染した場合のママや赤ちゃんの影響とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

妊婦健診で調べる感染症について。感染した場合のママや赤ちゃんの影響とは【医師監修】

 

妊婦健診は、妊娠中のママが問題なく妊娠生活を送れているか、赤ちゃんが順調に発育・成長をしているかを確認するために大変重要な健診です。妊婦健診では、妊娠週数に合わせた必要な検査などを行いますが、そのなかでは、さまざまな感染症の検査も行います。

 

今回は、知っておきたい妊婦健診で調べる感染症についてお伝えします。また、感染症が及ぼす、ママや赤ちゃんへの影響についてもお伝えします。
母子手帳にある検査項目や結果などを確認しながらぜひ参考にしてください。

 

 

1. 妊娠中の感染について

妊娠中は免疫が低下してしまい、薬剤やワクチンを使った安全な予防法も限られるため、さまざまな感染症になりやすくなります。そして、もし妊娠中に感染症に罹ってしまった場合、有効的な治療を受けることができない場合もあります。

感染症のなかには、ママだけではなくお腹の赤ちゃんの発育や命に影響を与えることもあるため、妊娠中の感染には大変注意が必要です。

 

 

2.母子感染とは?

 

何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がママから赤ちゃんに感染することを「母子感染」といいます。

妊娠前から元々その微生物を持っているママ(キャリア)もいれば、妊娠中に感染するママもいます1)

母子感染には以下の3つの種類があります。

 

1)胎内感染

子宮内感染ともよばれ、赤ちゃんがお腹にいるときに母体から感染することです。

胎盤を通って病原体が胎児の血液内に侵入する「経胎盤感染」では、特に妊娠初期の感染で、流産や神経・臓器の障害を起こすなど命に関わることがあります。また、腟や子宮の入り口に存在する病原体が羊水などを介して胎児に感染する「上行感染」もあります。

 

2)分娩時感染

 

分娩時、子宮や産道で赤ちゃんが感染することです。

分娩が始まり胎盤が剥がれる際、母体血と胎児血で交流が生じることで胎児に感染を起こす「経胎盤感染」と、産道(子宮の出口〜腟)を通って生まれるときに、産道に感染をしている病原体や分娩時の出血に触れることにより感染を起こす「産道感染」があります。

 

3)母乳感染

母乳を与えることで、母体の病原体が赤ちゃんに感染してしまうことです。

 

 

3.妊婦健診で調べる感染症

 

妊婦健診では、母子感染の早期発見や予防・治療を目的として、以下の感染症に関する検査を行います2)。検査前・結果説明時には医師などから説明がありますが、不明なことがある場合もぜひ相談していきましょう。

 

1)B型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に感染して炎症(肝炎)を起こす感染症です。肝炎が持続すると慢性肝炎から肝硬変、さらには肝がん(肝細胞癌)へと進展する可能性があります。

分娩時感染が多く、赤ちゃんに感染すると多くは無症状ですが、まれに乳児期に重い肝炎を発症することがあります。また将来、肝炎、肝硬変、肝がんを発症するリスクも高まります。

 

2)C型肝炎ウイルス

C型肝炎ウイルス(HCV)はC型肝炎を起こすウイルスで、感染すると約70%の人が持続感染者となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する場合がある感染症です。

感染経路は分娩時感染や母乳感染で、赤ちゃんに感染すると多くは無症状ですが、将来、肝炎、肝硬変、肝がんを発症するリスクが高まります。

 

3)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)

 

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、細菌やカビ、ウイルスなどの病原体から守る(免疫)のに重要な細胞である、Tリンパ球やマクロファージなどに感染するウイルスです。

胎内感染、経産道感染、経母乳感染で感染し、赤ちゃんに感染・進行すると将来、エイズ(後天性免疫不全症候群)を発症することがあります。

 

4)ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)

白血球の一種であるT細胞に感染し、成人T細胞性白血病や悪性リンパ腫の原因となるウイルスです。一度感染すると自然にウイルスが消失することはないとされています。

主に母乳感染で感染し、赤ちゃんに感染しても多くは無症状です。しかし、一部の人が、ATL(成人T細胞白血病:白血病の一種、中高年以降)やHAM(HTLV-1 関連脊髄症:神経疾患)を発症します。

 

5)風疹ウイルス

 

免疫のないママが妊娠中、特に妊娠初期に感染してしまうと、胎内感染でお腹の中の赤ちゃんに感染し、白内障や緑内障などの眼症状・視力障害、聴力障害、先天性心疾患などの先天性風疹症候群を引き起こすことがあります。また流産・死産を起こしてします可能性があります。

 

6)梅毒

梅毒に感染したママが、胎内感染で感染し赤ちゃんに感染することで、神経や骨などに異常をきたす、先天梅毒を引き起こすことがあります。

 

7)性器クラミジア

性器クラミジアは、性感染でママが感染しまう感染症です。出産時、経産道感染で赤ちゃんに感染してしまい、赤ちゃんが結膜炎や肺炎を起こすことがあります。

 

8)B型溶血レンサ球菌(GBS)

赤ちゃんが肺炎、髄膜炎(ずいまくえん)、敗血症などの重症感染症を起こすことがあります。

 

 

9)その他の感染症

上記の感染症以外にも確認しておきたい感染症の総称である、TORCH症候群について説明します。

 

トーチ(TORCH)症候群

母子感染により、流産や死産、胎児や新生児に重篤な奇形や恒久的な臓器・神経・感覚器障害を引き起こす感染症の総称です。上記の感染症もなかには含まれているのものもありますが、それ以外の感染症は必要時に検査を行いすみやかに対処する必要があります。

 

T:Toxoplasmosis(トキソプラズマ症)
O:Other(B型肝炎ウイルス、梅毒、水痘、リンゴ病など)
R:Rubella(風疹)
C:Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)
H:Herpes simplex virus(単純ヘルペスウイルス)

 

 

 

 

 

まとめ:妊娠中は感染予防と妊婦健診をしっかり受けよう

妊娠中は、気をつけないといけない感染症が多くあります。普段以上に感染予防をしっかり行うとともに、妊婦健診を毎回必ず受診するようにしましょう。また、何か気になることがあれば、妊婦健診を待たず受診することを心がけてくださいね。

 

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出典
1) こども家庭庁:妊娠と感染症
2)厚生労働省:母子感染を知っていますか

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。