胎盤や卵膜が子宮に残ってしまう胎盤残留(胎盤遺残:たいばんいざん)とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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胎盤や卵膜が子宮に残ってしまう胎盤残留(胎盤遺残:たいばんいざん)とは【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

胎盤や卵膜が子宮に残ってしまう胎盤残留(胎盤遺残:たいばんいざん)とは【医師監修】

 

 

 

1.胎盤残留(胎盤遺残:たいばんいざん)とは?

出産後に胎盤や卵膜(赤ちゃんを包んでいる薄い膜)の一部が子宮内に残ってしまう状態のことをいいます。

 

通常は赤ちゃんを出産したあと、胎盤や卵膜は子宮から排出されます。
しかし、さまざまな原因で胎盤や卵膜の一部がうまく娩出されず子宮内に残留することがあるのです。

 

2.胎盤残留の原因とは?

 

 

胎盤残留の原因としては主に2つあります。胎盤や卵膜が完全に娩出したように見えて、わずかに子宮内に残ってしまうということもあるのです。

 

1)胎盤が正常に剥がれない

胎盤が正常に子宮壁から剥がれず、完全に排出されないことがあります。
これは、胎盤の組織の一部が子宮の筋肉の内側に入り込んでいる状態である癒着胎盤や、固着胎盤(癒着胎盤ではないもの)が原因で、胎盤が子宮から十分に剝がれることができない状態です。

 

2)剥がれた胎盤を娩出できない

胎盤が正常に子宮壁から剥がれたにも関わらず、子宮収縮が不十分で胎盤を娩出できない、または胎盤が子宮から娩出される前に子宮口が閉じてしまうこと(胎盤嵌頓:たいばんかんとん)が原因で、胎盤の娩出が妨げられる状態です。

 

3.胎盤残留が起きやすい人とは?

 

 

胎盤遺残は体外受精で妊娠された方、35歳以上の高年齢妊娠の方、流産手術や帝王切開の既往がある方などは発症リスクが高まると考えられています。近年、こうした妊婦さんの多様化に伴い、胎盤残留の発症頻度は増加傾向にあります1)

 

4.胎盤残留の症状とは?

胎盤や卵膜の一部が子宮内に残っていると、出産後の子宮の収縮が妨げられ十分収縮できないため、出血が持続する、悪露の量が多いという症状がみられます。

ときに大量出血となることもあり注意が必要です。実際、経腟分娩後の大量出血の5~10%は胎盤残留によるものとされています。

 

また、胎盤や卵膜が排出されず子宮内に留まることによって、産後の子宮内感染の原因になる可能性もあります。

子宮内感染の症状は、下腹部痛、骨盤痛、発熱などです。

 

5.胎盤残留の治療法

 

 

胎盤残留の治療は、子宮内に残った胎盤や卵膜を除去することです。

 

胎盤が正常に剥がれない場合は、医師の手を子宮内に入れて子宮壁から胎盤を剥がす方法(胎盤用手剥離術:たいばんようしゅはくりじゅつ)や、器械を使用して子宮内を掻き出す子宮内掻爬術(しきゅうないそうはじゅつ)を行うことがあります。出血多量など命の危険がある場合は子宮全摘術が選択されることもあります。

 

また、子宮が過度に収縮して子宮口が閉じてしまい胎盤を娩出できない場合は、子宮収縮を抑える薬剤を投与したうえで胎盤を取り出す処置を。反対に、子宮の収縮力が弱いことが原因で生じる胎盤残留には、子宮底のマッサージや子宮収縮を促す薬剤を投与します。出血量が少ない場合には自然剥離を期待して待機的管理を行うこともあります。

 

 

 

6.まとめ:胎盤残留はめずらしいことではない

胎盤残留はめずらしいことではありません。そのため、出産直後は、胎盤や卵膜の欠損がないかを確認し、産後しばらくは出血量を細かくチェックします。また、入院中も子宮内の診察を行い胎盤残留などの異常がないかを確認します。

しかし、胎盤残留がある人のなかには、症状があまりない、診察時に明らかな所見がみられないことなどもあります。入院中だけではなく、退院後、出血や悪露が多くなった、腹痛など気になる症状がある場合は、早めにかかりつけの医師に相談をしてくださいね。

 

当院では
安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。

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出典
1)メディカルノート『胎盤遺残』

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。