乳腺炎とは?原因・症状をわかりやすく解説【医師監修】
- 2026年9月19日
- 更新日: 2026年9月17日
- 医療コラム

乳腺炎は多くのママが経験する身近なトラブルですが、授乳していない時期に起こることもあります。
この記事では、乳腺炎の原因や症状について、はじめての方でも理解しやすいようにわかりやすく解説します。
1. 乳腺炎とはどんなもの?

乳腺炎とは、母乳が乳房の中でうまく流れずにたまってしまうことで、乳腺に炎症が起こる状態のことを指します。簡単に言えば、「母乳の詰まりや細菌感染によって、胸が痛み、腫れたり熱を持ったりする状態」です。
授乳中のママに多く見られ、決して珍しいものではありません。産後の授乳が軌道に乗っていない時期や、授乳間隔が急に変わったタイミングなどに起こりやすく、初産婦さんだけでなく経産婦さんにも見られます。
乳腺炎には、母乳がうまく排出されないことで起こる「うっ滞性乳腺炎」と、細菌が乳腺に入り込んで起こる「感染性乳腺炎(化膿性乳腺炎)」の2種類があります1)。どちらも早めの対処が大切です。
2. 乳腺炎の原因

乳腺炎の原因はひとつではなく、授乳の状況やタイミングによっていくつかのパターンがあります。自分がどのケースに当てはまるかを知ることで、適切な対処につながります。代表的な原因をわかりやすく整理して紹介します。
1)母乳がうまく出ないことによる乳腺炎(うっ滞性乳腺炎)
最も多い原因が、母乳が乳房の中に残ってしまうことで起こる「うっ滞性乳腺炎」です。
授乳間隔が空きすぎたり、赤ちゃんの飲み方の癖や授乳時の抱っこの姿勢によって、乳腺の一部に母乳が偏って残ってしまうことがあります。
残った母乳がうまく排出されないまま時間が経つと、その部分が圧迫されて炎症を起こします。「片方の乳房だけ張りが強い」「授乳後もしこりが残る」といった場合は、うっ滞が起きているサインです。
2)細菌感染による乳腺炎
乳首に傷やひび割れ(亀裂)ができると、そこから黄色ブドウ球菌などの細菌が乳腺の中に入り込み、感染性乳腺炎を引き起こすことがあります2)。
授乳を始めたばかりのころは乳首がトラブルを起こしやすく、傷がないように見えても小さな亀裂が入っていることもあるのです。
多くの場合、うっ滞性乳腺炎が悪化して感染性乳腺炎に移行するケースが多く、「しこりがあるのに放置していたら高熱が出た」という経験をされた方もいるかもしれません。感染性乳腺炎は抗菌薬が必要になることもあるため、発熱を伴う場合は早めに産婦人科や母乳外来を受診することが大切です。
3)授乳していない時期に起こる乳腺炎の原因
乳腺炎は授乳中だけのトラブルではありません。卒乳・断乳の時期や、授乳間隔が急に空いたときにも、乳房内に母乳が残って炎症を起こすことがあります。
断乳を進める際は急にやめるのではなく、徐々に授乳回数を減らして乳房への負担を少なくすることが大切です。また、授乳していない時期であっても乳房に硬いしこりや痛み・ 発熱を感じた場合は、乳腺炎以外の原因も考えられるため、ためらわず医療機関を受診するようにしましょう。
3.乳腺炎の症状

乳腺炎の症状は単なる胸の張りと見分けがつきにくいこともあります。「ただの張りかな」と様子を見ているうちに悪化してしまうケースも少なくありません。ここでは、注意しておきたい代表的な症状をわかりやすく紹介します。
1)胸に現れる症状
乳腺炎では、乳房の一部が赤くなったり、触るとしこりのように硬くなったりすることがあります。その部分を押すと強い痛みを感じるのが特徴で、熱感を伴うこともあります。
最初は「なんとなく張っている」程度に感じることが多いですが、痛みが強くなる・しこりが大きくなる・赤みが広がるといった変化があれば乳腺炎が疑われます。授乳後も痛みやしこりが残るようであれば、早めの対処が必要です。
また、しこりが柔らかくなったり、波打つような感触がある場合は、膿がたまった状態(乳腺膿瘍)に移行している可能性があります。この場合は自己処置を避け、必ず医療機関を受診してください。
2)全身に現れる症状
乳腺炎では、乳房の局所症状だけでなく、風邪のような全身症状が出ることがあります3)。
38度以上の発熱・悪寒・全身のだるさ・関節痛などが現れる場合、感染性乳腺炎に移行していることが多く、早めの受診が望ましい状態です。
4.乳腺炎かなと思ったときの授乳の仕方

「乳腺炎かもしれない」と感じると、授乳を続けてもよいのか不安になる方は多いと思います。しかし、乳腺炎の多くは母乳のうっ滞が関係しているため、痛みがあっても自己判断で授乳を中止することは逆効果になる場合があります。
基本的には、痛みがあっても授乳を続けることが改善への近道です。こまめに授乳して乳房内の母乳を出し切るようにしましょう。特に、しこりのある側の乳房から先に飲ませることで、詰まりが解消されやすくなります。さらに、しこりの部分を軽く圧迫しながら授乳すると軽減しやすいです。
また、授乳の際は赤ちゃんの口が乳首全体をしっかりくわえているかを確認し、さまざまな抱き方(縦抱き・フットボール抱きなど)を試して、乳房全体からまんべんなく飲んでもらえるよう工夫しましょう。授乳後に残乳感がある場合は、搾乳で残りを出すことも有効ですが、搾乳のし過ぎは張り返しを招くため、少し軽くなる程度の搾乳にとどめましょう。
疼痛がある部分は、ガーゼにくるんだアイスノンなどで患部を優しく冷やしましょう。ただし、以下のような場合は無理をせず、産婦人科や母乳外来に相談することが大切です。
・38℃以上の発熱が続いている
・強い痛みや腫れ・赤みが改善しない、または悪化している
・しこりが硬いまま・大きくなってきた
・授乳を続けても症状が1〜2日以上改善しない
乳腺炎は早めに対処するほど回復が早くなります。「少し様子を見よう」と我慢しすぎず、気になることがあれば専門家に相談してください。
まとめ:乳腺炎は、母乳のうっ滞や細菌感染によって起こる身近なトラブル
乳腺炎は、母乳のうっ滞や細菌感染によって乳腺に炎症が起こる状態です。授乳中のママに多く見られますが、卒乳・断乳の時期など授乳していない時期にも起こることがあります。乳房の赤み・しこり・痛みのほか、発熱や悪寒などの全身症状が現れることもあります。
乳腺炎かなと感じたときは、痛みがあっても授乳を続けてこまめに母乳を出し切ることが大切です。ただし、高熱が続く・しこりが改善しないといった場合は、ひとりで我慢せず産婦人科や母乳外来に相談してください。適切なサポートを受けることで、多くの場合は早期に回復できます。
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参考文献・参考サイト
1)ケアガイドライン2020:乳腺炎
2)MSDマニュアル プロフェッショナル版:18. 婦人科および産科 – 乳腺炎 –
3) 看護roo!:乳房・乳頭トラブルへの対応① 乳房トラブル
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
