ピルとは?具体的な効果と正しい使い方について【医師監修】
- 2025年9月20日
- 更新日: 2025年9月15日
- 医療コラム
避妊方法の一つというイメージがある「ピル」ですが、実は女性の生理の悩みにも効果があることを知っていますか?正しい使い方をすることで、女性特有の痛み、わずらわしさ、つらさから解消してくれる薬でもあります。
この記事ではピルとはどのような薬なのか、正しい使い方について解説していきます。避妊対策に悩んでいる方、毎月生理がくるのがつらいと思っている方、生理周期を変更したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
1. ピルってどんなお薬?基本の「効果」と「種類」
1) ピルで期待できる効果とは?
確実な避妊効果
ピルには排卵を抑制し、子宮内膜が厚くならないような働きがあります。排卵しないと受精卵が作られることもなく、タイミングが合わず受精してしまっても子宮内膜が着床できる状態ではないため、妊娠することはほとんどありません。
ピルの避妊率は99.7%です。最も一般的なコンドームやそのほかの避妊法に比べても、特に高い避妊率だといえます。ですがこれは正しく服用した場合の避妊率で、飲み忘れてしまうと避妊効果が薄れてしまうため注意しましょう1)。
避妊方法にはピル以外にもいくつかの方法があります。ピルと同様に高い避妊効果のある「ミレーナ」について、こちらの記事で紹介していますので参考にしてください。
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生理にまつわる悩みの改善
生理痛や出血量が多い過多月経、生理前後に心と体に症状があらわれるPMSといった生理にまつわる悩みを抱える女性は多いでしょう。毎月生理が近づくと憂うつになりますよね。
これらの生理にまつわる症状も「排卵の抑制」「子宮内膜の増殖を抑える」「生理に関する女性ホルモンが安定する」といった3つの効果をもつピルを飲むことで改善が見込めます。仕方がないとあきらめて毎月きつい期間を過ごすのではなく、一度病院に相談してみましょう。
生理にまつわるなやみ |
原因 |
生理痛 |
● 子宮内膜の剥がれ ● 経血排出のための子宮収縮 |
過多月経 |
● 子宮の病気 ● 女性ホルモンの乱れ |
PMS |
● 女性ホルモンの乱れ |
生理周期のコントロール
旅行や大切なイベントにはなるべく生理がかぶってほしくないですよね。そんなときは生理を意図的にずらすことができるピルを活用しましょう。
生理を早めるか遅くするかは、使う薬や生理予定日などによって異なります。医師と相談しながら服用しましょう。
2) 目的によって異なるピルの種類
ピルは配合されている「エストロゲン」という女性ホルモンの量によって種類が分かれます。ここではよく使われる代表的な3つを紹介していきます。
超低用量ピル
【代表的な目的】
・月経困難症や子宮内膜症の改善
・月経前症候群(PMS)の改善
超低用量ピルは配合されているホルモンが最も少ない薬です。副作用がでにくいという特徴がありますが、一方で十分な避妊効果があるかは不明なため避妊目的で処方されることはあまりありません。
月経困難症やPMSの改善、子宮内膜症といった治療目的で使われることがほとんどです。ほかにも生理日が近づくと起こるニキビや肌荒れも予防・改善することができます。「生理に関する悩みがあるけど副作用が心配。」という方におすすめです。
低用量ピル
【代表的な目的】
・ 避妊
・月経困難症や子宮内膜症の改善
・ 月経不順の改善
経口避妊薬として使われることが多い低用量ピルですが、月経困難症やPMS、生理痛などの緩和にも使われます。治療目的で使われる低用量ピルは「LEP」、経口避妊薬で使われるものは「OC」と呼ばれ、それぞれ薬の種類が異なります。
アフターピル
アフターピルは避妊に失敗してしまったなど、望まない妊娠をする可能性がある際の緊急避妊として使われます。性行為後72時間以内に服用すると「排卵を抑制または遅らせる」「受精卵が着床するのを防ぐ」という2つの働きから、妊娠の成立を防ぐことが期待できるものです。
性行為後24時間以内にアフターピルを服用すると約95%、72時間以内だと約85%で避妊が成功するといわれています。しかしアフターピルはあくまで緊急的な避妊方法であって、常日頃からなんらかの避妊をおこなうことが大切です2)。
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2. ピルの副作用について
ピルの副作用には吐き気、頭痛や腹痛、胸の張り、不正出血などがありますが、これらは時間の経過とともに徐々に改善していくことが多いといわれています。
「ピルを飲むと太る」というイメージがある人もいると思いますが、体重増加とピルには直接の関係はありません。ピルの影響からホルモンが変化し、食欲が増進されたり、体に水分を溜め込んでむくんだりすることで体重が増えることがあるようです。
頻繁に起こるわけではありませんが、ピルの副作用で注意したいのが「血栓」です。血栓は血液のなかにできる血のかたまりのことで、脳の血管に詰まると「脳梗塞」、心臓に詰まると「心筋梗塞」といった命が危険になるリスクがあります。血栓症は検査で見つけることができるため、ピルの服用中は定期的な受診で血栓を予防・早期発見していきましょう。
3. ピルの正しい飲み方と「もしも」の時の対処
1) 基本は「毎日1錠、決まった時間に飲む」
ピルは毎日決まった時間に、決まった錠数を服用します。1回でも飲み忘れてしまうと排卵してしまう可能性があり、ピルによる効果を十分に得ることができません。
飲む時間にアラームをかけたり、スマホのアプリを利用したりして飲み忘れを予防しましょう。
2) ピルを「飲み忘れ」てしまったら
ピルを飲み忘れてしまったときの対応は、飲み忘れた回数によって異なります。
1錠飲み忘れてしまった場合
本来飲む時間から24時間が経過していないときは、飲み忘れに気付いた時点ですぐに1錠服用します。その後の服用スケジュールは変更しません。
2錠以上飲み忘れてしまった場合
次の生理がくるまで服用を中止し、次回以降の服用については医師に相談します。服用を中止している期間は避妊効果が得られない可能性が高いため、ピル以外の避妊法をおこないましょう。
3) 休薬期間なのに「生理こない」場合
休薬期間になっても生理がこないと心配になりますよね。しかしピルを正しく服用していたら、妊娠している可能性は低いので心配しすぎる必要はありません。
ピルを飲んでいるのに生理がこないことで考えられることは2つあります。1つめはピルによって子宮内膜が薄くなり、生理の際の出血量が非常に少なくなること。2つめはピルの影響で無月経になることです。もしピルを飲み忘れていたら妊娠の可能性があるため、妊娠検査薬もしくは病院で相談しましょう。
4. ピルにかかる費用とは
ピルは服用する目的によって保険適用と保険適応外(自費)に分かれます。保険適応となるのは月経困難症や子宮内膜症といった治療を目的に処方される場合です。避妊でピルを服用する場合は全額自己負担となります。
ピルの費用の目安はこちらです。
服用目的 |
1カ月の費用(目安) |
避妊 |
2,000~4,000円(自費) |
月経困難症や子宮内膜症などの治療 |
約1,000円前後(保険) |
このほかに初診料や検査費用が別途かかります。
まとめ:正しい使い方で避妊と生理の悩みを解決しよう!
ピルは高い避妊率だけでなく、毎月おとずれる生理に関する悩みも解消してくれる女性にとって心強い薬です。しかし正しい使い方を守らないと効果が十分に得られないということを忘れないようにしましょう。そしてピルを服用したら必ず定期的な受診で重大な副作用である「血栓」がないかを検査することも大切です。正しい使い方で女性の悩みと体を守りましょう。
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参考文献・参考サイト
1)日本産婦人科学会 低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)
2)日本産婦人科学会 緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成 28 年度改訂版)
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。