効果的な避妊法ミレーナとは?ピルとの違いについても解説【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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効果的な避妊法ミレーナとは?ピルとの違いについても解説【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

効果的な避妊法ミレーナとは?ピルとの違いについても解説【医師監修】

 

ミレーナという避妊法を最近耳にするようになってきました。避妊法として多くの方が使われている「コンドーム」、近年CMなどでも取り上げられ避妊法として広まっている「ピル」よりも、避妊率がされているのがミレーナです。

ミレーナの魅力は高い避妊率だけではありません。
女性の毎月の悩みである月経や、年齢を重ねると避けては通れない更年期の症状にも効果が認められています。

この記事ではミレーナについて詳しく紹介していきます。

 

 

1. ミレーナとは

 

ミレーナは子宮のなかに装着する避妊具で、正式名称は「子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)」です。形はT字型で、3㎝ほどのやわらかいプラスチックで作られています。

女性ホルモンの「レボノルゲストレル」を放出することで避妊だけでなく、月経困難症や過多月経などの改善効果が期待できます。
ミレーナは一度装着すると、効果を最長5年間持続できる効果的な避妊法です1)

 

 

2. ミレーナの仕組

 

ミレーナが避妊に対して効果を発揮するのは、緊急避妊薬としても使われる成分である女性ホルモンの「レボノルゲストレル」が持続して放出されているからです。

妊娠の過程で、受精卵を着床しやすくするために子宮内膜が厚くふわふわな状態になるのですが、レボノルゲストレルには子宮内膜の増殖が抑える作用があります。そのためミレーナを装着した状態では子宮内膜の受け入れが整わず、妊娠が成立しにくくなるのです。

 

また、レボノルゲストレルには子宮の粘液を変化させる作用もあります。
通常精子が入ってきやすいように子宮の入り口の粘液はサラサラな状態ですが、レボノルゲストレルの影響でとろみの強い粘液に変化することで、精子が進入しずらくなります。

この2つの作用によって、ミレーナは避妊効果が得られるのです2)

 

 

3. ミレーナの効果

 

1) 避妊効果

妊娠は卵子と精子と出会って受精卵になり、厚くフカフカの子宮内膜に受精卵が着床することで妊娠が成立します。
しかしミレーナを装着すると、持続して放出されているレボノルゲストレルの影響で子宮の入り口の粘液が粘性の強いものに変化して、精子が卵管へと進みづらくなります。さらにレボノルゲストレルは子宮内膜の増殖を抑えるため、もし受精卵ができてしまっても薄いままの子宮内膜に着床することはできません。

ミレーナを使用した場合の避妊率は99%といわれており、高い確率で避妊に成功する避妊法といえるでしょう。

避妊目的でミレーナを挿入する場合、保険が適応されず全額自費となります。

 

2) 月経困難症、過多月経の改善

ミレーナを装着するとレボノルゲストレルの影響で、子宮内膜が薄いままの状態が保たれます。月経時の出血は子宮内膜がはがれることによるものなので、子宮内膜が薄いと出血量も少なくなります。このことから過多月経の改善が期待できるでしょう。

また子宮内膜の増殖が抑えられることで、子宮内膜がはがれるときに産生される「プロスタグランジン」が通常よりも少なくなります。プロスタグランジンは子宮を収縮させて、血液や剥がれた子宮内膜を体外に排出させる役割をもつ物質です。生理痛の原因のひとつは、プロスタグランジンが起こす子宮の収縮のため、プロスタグランジンが少なくなることで痛みの軽減が期待できます。さらに月経困難症の辛い症状の一つである吐き気もプロスタグランジンが関与しているため、ミレーナ装着により症状がよくなる可能性があります。

月経困難症、過多月経と診断された場合、ミレーナ装着は保険が適用されるため病院で相談しましょう。

 

3) 更年期障害の症状緩和

女性の閉経年齢はだいたい50歳前後、更年期は閉経前後の5年、トータル10年間のことを指します。この時期は女性ホルモンの「エストロゲン」が不安定な状態で、時間をかけて徐々に減少していき、その影響で体と心にさまざまな症状があらわれます。これらの症状が重く、生活にも支障がでてしまう状態になるのが「更年期障害」です4)

更年期障害の治療の一つにエストロゲンを補充する「ホルモン補充療法(HRT)」があります。
しかしエストロゲンだけを投与すると子宮内膜がんなどを発症してしまうおそれがあるため、黄体ホルモンを補充して予防することが必要です。ミレーナから放出されているレボノルゲストレルは黄体ホルモンのため、ホルモン補充療法のなかの一つとしてミレーナ装着が選択されます。

ただし更年期障害の治療におけるミレーナは、保険適用外となります。

 

 

4. ミレーナとピルの違いについて

 

ピルは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが配合された経口避妊薬です。ミレーナと同様に月経困難症と過多月経にも効果があるだけでなく、生理周期を整える、PMS症状を改善するというミレーナにはない作用もあります。

ミレーナとピルの避妊効果を比較すると、両方とも99%以上の高い避妊率があります。しかし、ピルを飲み忘れて性交渉をした場合、避妊効果が得られないことがあるため注意が必要です。その点ミレーナは一度装着すると約5年間持続して避妊効果を得ることができるため、より確実な避妊法を選択したいと思ったらミレーナを選択するのことも検討しましょう。

 

また、ピルには副作用が出ることがあります。吐き気や頭痛などの症状は徐々に症状が治まってくることがほとんどですが、副作用のなかで一番怖いのが「血栓症」です。血栓症は血液中に血のかたまりができてしまう病気で、足や脳、心臓などの血管に詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞などに発展してしまうこともあります。そのため血栓症のリスクが高い人や喫煙者など、ピルを飲むことができない人もいます。

ミレーナはピルを飲むことができない人も装着することができ、ピルのような大きな副作用もありません。5年間持続してピルを飲み続けることとミレーナ装着を比較すると、ミレーナの方がコストが安くすみます。しかしミレーナには装着のための処置が必要で、定期的な検診が必要なこと、ごくまれにミレーナが脱落してしまうことがあります。

ミレーナとピルにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、どちらが自身に合っているかを医師と相談して選択しましょう。

 

 

5.ミレーナの副作用

 

ミレーナから放出されているレボノルゲストレルは、子宮のなかだけに作用するため副作用は少ないといわれています。装着直後は副作用として不正出血や下腹部痛、頭痛、乳房痛などが出ることがありますが、時間の経過とともに徐々に落ち着いてくるでしょう。

 

 

6.ミレーナ装着までのながれ

 

1.問診・診察

ミレーナ装着の前に、問診と内診、エコーなどで子宮がミレーナを装着できる状態か、治療が有効かなどを判断します。

 

2.ミレーナの装着

ミレーナの装着は確実に妊娠していないことを確認するために、生理開始7日以内におこないます。装着前にもエコーで子宮の状態を確認して、ミレーナ装着に問題がないかをチェックします。装着にかかる時間は5分程度で、軽い痛みや不快感を感じる程度です。もし強い痛みがあるときは我慢せずに医師に伝えましょう。

 

3.定期検診

ミレーナ装着後は定期的な検診で、正しい位置にミレーナが装着されているか、出血などの副作用の確認をおこないます。ミレーナの効果をしっかり発揮され、安全に装着ができていることを確認するためにも定期検診は必ず受けましょう。

 

 

7.ミレーナを検討しているなら気軽にご相談を

 

日本でのミレーナの装着率は少ないため、身近な避妊法ではないように感じるかもしれません。
しかし、多くの人が使っているコンドームよりもミレーナは高い避妊率をもつ効果的な避妊法です。

しかし装着のために処置が必要なことや、保険適用でないこと、そしてミレーナを装着すると痩せる、太る、白髪が増える、臭いが強くなるなど医療的に根拠のない情報が出回っていることも、なかなか一歩踏み出せないという原因の一つかもしれません。

もし、ミレーナに興味があり、挿入を検討したいという時は気軽に病院に相談しましょう。避妊や婦人科疾患の専門家が、さまざまな疑問、費用面の質問にもお答えします。

当院でもご相談できますので、気軽にご連絡ください。

 

 

まとめ:ミレーナは新しい避妊の選択肢

ミレーナの避妊率は99%以上と高く、その効果を5年間持続できる効果的な避妊法です。また、毎月くる月経の症状も軽くすることができるというメリットもあります。相手に任せるコンドームや飲み忘れが気になるピルとも違い、確実に自分の身を守ることができる避妊方法でもあります。避妊法を考える時にミレーナも選択肢の一つとし、挿入を検討するときには気軽に病院に相談しましょう。

 

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参考文献・参考サイト
1)東邦大学医療センター大橋病院産婦人科 IUS(ミレーナ)とLEP製剤(ルナベル・ヤーズ)について
2)日本産婦人科医会(3)緊急避妊法(EC:emergency contraception)6)
3)日本産婦人科医会(1)月経困難症
4)日本産婦人科学会 更年期障害

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。