混合栄養のメリット・デメリットとは?赤ちゃん・ママそれぞれの影響について【医師監修】
- 2025年1月11日
- 更新日: 2025年1月6日
- 医療コラム
母乳は赤ちゃんにとって多くのメリットがあると言われていますが、様々な事情で母乳のみの授乳が難しい場合もあるでしょう。そのような時、選択肢の一つとなるのが「混合栄養」です。母乳とミルクの両方を活用する混合栄養は、それぞれのメリットを活かせる授乳方法として注目されています。
今回は、混合栄養の基本からメリットとデメリット、進め方や適している家庭の特徴などについて詳しく解説していきます。赤ちゃんの栄養について混合栄養を取り入れる際の参考にしてください。
1.混合栄養とは
混合栄養とは、母乳と育児用ミルクの両方を用いて赤ちゃんを育てる授乳方法です。
母乳育児とミルク育児のどちらが良いか、というのではなく、それぞれのメリットを活かしながら赤ちゃんの成長に合わせて柔軟に対応できることが特徴です。
厚生労働省の報告によると、混合栄養をしている割合は、生後1か月で半数近く、生後3か月では4割近く1)になっています。混合栄養は、母乳育児を続けたいが現実的に難しい家庭にとっての柔軟な選択肢であり、育児ストレスの軽減や、パパや家族と育児を分担する際の手助けとして注目されている方法なのです。
混合栄養の方法は、ママ・赤ちゃん、家庭によってそれそれ異なります。1回の授乳で母乳の後にミルクを追加する方法や、一日の中で母乳とミルクを交互に与える方法など、様々な組み合わせ方があります。また、母乳の割合が多い場合もあれば、ミルクの割合が多い場合もあります。
2.母乳とミルクの違い
母乳とミルクは、共に赤ちゃんに栄養を与えるものですが、それぞれに特長と違いがあります。また、母乳やミルクのメリット・デメリットもそれぞれあります。詳しくは関連記事もご参考ください。
母乳について
赤ちゃんの消化に非常に適した栄養源2)であり、免疫力を高める抗体や消化を助ける酵素が豊富に含まれています。また、母親の食生活や健康状態によって成分が変化し、赤ちゃんの成長に応じて自然に調整されるという特性があります。
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ミルクについて
ミルクは栄養が一定で、誰でも簡単に調乳が可能です。日本では、厚労省の定めた基準に基づいて配合されたミルクが販売されています。そのため、ママの体調等に関係なくいつでも安定した栄養を赤ちゃんに提供できます。
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3.混合栄養のメリット
混合栄養のメリットは、母乳とミルクそれぞれのメリットだけではなく混合栄養特有のメリットがあります。
1) 栄養の補完
混合栄養は、母乳だけでは栄養が不足する場合に、ミルクで補うことができるため、赤ちゃんの必要な栄養を確保しやすくなります。特に母乳の分泌が不安定な時期や、あまりでないとき、赤ちゃんの体重増加を促したいときなど、赤ちゃんの成長に応じてミルクを調整することができます。
2)ママの育児の負担軽減
完全母乳育児では頻繁に授乳が必要であり、ママしか授乳できません。しかし、混合栄養はパパや家族、ほかの人も授乳ができるため、ママの負担を軽減することできます。また、完全母乳に比べて授乳間隔をある程度調整できるため、母親の身体的・精神的負担を軽減することが期待できるのです。
3)家族の育児参加
ミルクはほかの家族メンバー(特にパパ)が与えることができるため、育児への参加が促進されます。これにより、赤ちゃんとの絆を深める機会も増えます。
4)柔軟に授乳の対応できる
外出時や急な体調不良など、母乳だけでは対応できない状況でもミルクを使うことで、授乳方法に柔軟性がうまれます。また、さまざまな生活スタイルに合わせた授乳が可能です。
さらに、仕事との両立がしやすく段階的な卒乳がしやすいのも特徴でしょう。
5)母乳育児の継続をサポート
母乳の出が悪い、または仕事などで授乳時間が確保できない場合でも、ミルクを併用することで母乳育児を継続しやすくなります。
4.混合栄養のデメリット
完全母乳・完全ミルクの場合もあったように、混合栄養にもデメリットがみられます。
1)経済的負担
ミルクの購入は、母乳のみで育てる場合に比べて経済的な負担となります。特に長期間続ける場合、その費用は無視できません。また、哺乳瓶や消毒器具などの追加の育児アイテムも必要です。特にミルクの割合が多い場合は、そのコストが大きくなるでしょう。
2)手間がかかる
授乳にミルクが加わることで、調乳の手間や哺乳瓶の洗浄、消毒の作業が日常的に必要になります。これらが毎日の育児ルーチンに加わると、忙しい時や疲れている時には負担に感じることもあるでしょう。また外出時には荷物も増えます。
3) 授乳時間の延長
母乳を与えた後にミルクを追加する場合、授乳全体の時間が長くなる傾向があります。特に夜中の授乳では、この手間が大きな負担となることがあります。
4)母乳分泌への影響
混合栄養では、母乳の需要が減り、母乳の分泌量が減少するリスクがあります。そのため、母乳育児を中心に続けたい場合は、頻繁な授乳や搾乳など、母乳分泌を維持するための努力が必要となることがあるでしょう。また、母乳育児のリズムが乱れる可能性や赤ちゃんが母乳を飲まなくなる可能性などの可能性もあります。
5) 乳頭混乱のリスク
母乳とミルクの両方を与えることで、赤ちゃんが「乳頭混乱」を起こす可能性があります。この原因は、哺乳瓶と母乳では吸い方や感触が異なるためです。乳頭混乱を起こすと赤ちゃんが母乳を嫌がったり、逆に哺乳瓶ばかりを好んだりすることがあります。
5.混合栄養の方法・進め方とは
混合栄養を始める際には、母乳とミルクの適切なバランスを見つけることが重要です。
基本的には、まず母乳を与え、その後必要に応じてミルクを追加する形が推奨されます。そして、赤ちゃんの成長状況や体調に合わせて、ミルクの量や回数を調整します。
また、定期的に医師や助産師に相談して、赤ちゃんの成長に適した栄養管理を心がけると良いでしょう。授乳のタイミングや赤ちゃんの反応をよく観察し、柔軟に対応することが大切です。哺乳瓶の消毒やミルクの調乳には、手間と注意が必要ですが、衛生面をしっかり管理することで、安心して混合栄養を続けることができます。
6.混合栄養が適している家庭とは?
混合栄養は、周囲のサポートを得ながら育てる環境を整えやすくなるのが魅力です。
特に以下のような家庭に適していると言えるでしょう。
・母乳の出が少ない、または不安定な場合
・仕事復帰を予定している母親がいる場合
・夜間の授乳を家族で分担したい場合
・双子など、複数の赤ちゃんの育児をする場合
・母親の体調管理が必要な場合
・育児協力者(パートナーや祖父母など)が積極的に育児参加したい場合
・柔軟的な授乳スタイルを確立したい
・母乳のみでは赤ちゃんの体重増加が順調でない場合 など
まとめ:混合栄養は母乳とミルクのいいとこどり
混合栄養は、母乳とミルクの両方を組み合わせることで、赤ちゃんに必要な栄養を安定して届けられる方法です。また、多様な状況に対応できる柔軟な授乳方法ともいえます。
家庭によって最適な授乳方法は、ママと赤ちゃんのライフスタイルや健康状態などによって異なります。完全母乳や完全ミルクにこだわりすぎず、混合栄養も一つの選択肢として検討し、家族にとって最適な方法を選択してより良い育児環境づくりにつなげていきましょう。
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出典
1)厚生労働省:授乳及び離乳を取り巻く現状について 平成30年
2)母乳育児日本助産師会:ICM,所信声明 母乳育児
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長
経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。