子宮内膜症とは?痛みやおりものの変化で気づく症状と治療法を解説【医師監修】
- 2026年3月28日
- 更新日: 2026年3月28日
- 医療コラム

「生理痛が年々ひどくなっている」「鎮痛剤が手放せない」といった悩みを抱えていませんか。月経は毎月のことだからと、我慢してしまう女性は少なくありません。しかし、その強い痛みは「子宮内膜症」という病気のサインかもしれません。子宮内膜症は、20代から40代の女性に多く見られる身近な疾患ですが、放置すると不妊の原因になることもあります。
今回は、子宮内膜症の原因や症状、治療法について詳しく解説します。
1. 子宮内膜症とは?

「子宮内膜症」という病名を聞いたことはあっても、具体的に体の中で何が起きているのかイメージしづらいかもしれません。実はこの病気、月経がある女性なら誰にでも起こりうるものです。「もしかして私も?」と不安に思う前に、まずはこの病気がどのような仕組みで起こるのか、基本をしっかり押さえておきましょう。
ここでは、子宮内膜症の定義と、病変が発生しやすい場所について分かりやすくお伝えします。
1) 子宮内膜症の定義
子宮内膜症とは、子宮内膜またはそれに似た組織が、子宮以外の場所に発生・増殖する疾患です。この異所性の内膜組織は正常な子宮内膜と同様に、月経周期に伴ってホルモンの影響を受けて増殖と剥離を繰り返します。
しかし、子宮外に存在するため、剥離した組織や血液が体外に排出されることができません。その結果、周囲の組織に炎症や癒着を引き起こし、様々な症状を呈することになるのです。この疾患は20~40代の女性に多く見られ、発症・診断される人が増えているとされています。
2) 発生しやすい部位
子宮内膜症は、卵巣、卵管、骨盤腹膜、子宮と直腸の間のダグラス窩などの骨盤内臓器に最も多く発生します。これらの部位は月経血の逆流により内膜細胞が到達しやすい場所であり、全体の約90%を占めています。
発生部位により症状や重篤度が異なるのが特徴的です。特に卵巣に発生した場合は、チョコレート嚢胞と呼ばれる特徴的な病変を形成します。これは古い血液が貯留してチョコレート様の色調を呈することからこの名前がついています。稀に肺や腸管、手術創部などにも発生する可能性があり、その場合は特殊な症状を呈することもあるのです。
2. 子宮内膜症の原因

子宮内膜症の原因はまだ完全に解明されていませんが、最も有力なのは月経血の逆流説です。月経血が卵管を通って腹腔内に逆流し、子宮内膜細胞が生着・増殖すると考えられています1)。他にも体腔上皮化生説、血管やリンパ管を通じた播種説、免疫機能の異常説などが提唱され、複数の要因が絡んでいる可能性が高いです。
発症リスクを高める要因として、初経年齢が早い、月経周期が短い、妊娠・出産経験が少ない、家族歴があるなどが挙げられます。また、ストレスや生活習慣の乱れ、体の冷えが症状を悪化させる場合があります。クラミジアなどの骨盤内感染症は直接的な原因ではありませんが、炎症を助長する可能性があるため注意が必要です。こうしたリスクを理解し、日頃のケアが大切になります。
3. 子宮内膜症の症状

子宮内膜症の最も特徴的な症状は月経時の激しい痛みです。この痛みは一般的な月経痛とは明らかに異なり、鎮痛剤でも軽減されにくい強い痛みが持続します。多くの患者さんは「今までに経験したことのない痛み」「のたうち回るような痛み」と表現されることが多く、重症の場合は救急搬送される場合もあります。
【痛みの特徴】
・痛みが月経のたびに強くなる
・月経期間中ずっと、または月経前から痛みが続く
・痛みの部位は下腹部全体や腰、肛門の奥まで広がる
・鈍い痛みから激しい痛みまで幅広い
※月経時以外にも、以下のような慢性的な痛みが現れることも2)。
骨盤痛・性交痛・排便痛・腰痛 など
これらの痛みは日常生活に大きな支障をきたし、仕事や学校を休まざるを得ない状況になることも珍しくありません。また、慢性的な痛みにより睡眠障害や抑うつ状態を引き起こすこともあるため、心理的なサポートも重要となります。
おりものの変化については、子宮内膜症に特徴的な変化はありませんが、合併症として感染症を起こした場合には異常なおりものが見られる場合があります。また、不妊症の原因となることも多く、妊娠を希望する女性にとって深刻な問題となることもあります。
4. ステージ分類と重篤度

子宮内膜症は病変の範囲と癒着の程度により、Ⅰ期(軽度)からⅣ期(重度)までの4つのステージに分類されます。この分類は腹腔鏡検査や手術所見に基づいて決定され、治療方針の決定や予後の予測に重要な指標となっています。
各ステージの特徴は以下の通りです。
|
ステージ |
病変の特徴 |
主な症状 |
不妊への影響 |
|
Ⅰ期(軽度) |
小さな病変が散在 |
軽微な月経痛 |
軽度 |
|
Ⅱ期(軽度) |
浅い病変、軽度の癒着 |
月経痛の増強 |
軽度~中等度 |
|
Ⅲ期(中等度) |
深い病変、中等度の癒着 |
強い月経痛、慢性骨盤痛 |
中等度~高度 |
|
Ⅳ期(重度) |
大きな嚢胞、高度な癒着 |
激しい痛み、臓器機能障害 |
高度 |
Ⅰ期では小さな病変が散在し、症状も軽微ですが、Ⅳ期では大きなチョコレート嚢胞や広範な癒着により臓器の機能が著しく障害される状態となります。特に卵管や卵巣の機能が障害されることで、不妊症のリスクが高くなるの可能性があります。
そして、ステージが進行するほど治療が困難になり、手術による治療が必要となることも。痛みも強くなる傾向があり、日常生活への影響も深刻になります。そのため、早期発見・早期治療の重要性がいわれているのです。
ただし、ステージと症状の強さが必ずしも一致しないことも重要なポイントです。軽度のステージでも強い痛みを感じる方もいれば、進行したステージでも症状が軽い方もいます。これは、痛みの感じ方や病変の部位による影響の違いが関係しているためです。症状だけで病気の重篤度を判断することは困難であるため、適切な検査による正確な診断が重要になります。
5. 治療方法

子宮内膜症の治療は、患者さんの年齢、症状の程度、妊娠希望の有無、病変の重篤度などを総合的に考慮して決定されます3)。治療の目標は症状の軽減、病変の進行抑制、そして妊娠可能性の改善です。
現在では様々な治療選択肢があり、患者さん一人ひとりに最適な方法を選択することで、多くの場合で症状の改善が期待できます。治療により完全に治るケースもあれば、長期的な管理が必要な場合もありますが、適切な治療により日常生活の質を大幅に改善することが可能です。
1) 薬物治療
まず選択されることが多いのが、薬による治療です。目的は、痛みの緩和と病変の進行を抑えることです。
ホルモン療法
子宮内膜症は女性ホルモン(エストロゲン)によって増殖するため、ホルモンの分泌をコントロールして、月経を抑制(排卵を止めたり、内膜を薄く保つなど)することで、症状の改善と病変の縮小を図ります。
対症療法
痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛剤を使用します。痛みがピークに達する前、予兆を感じた段階で早めに服用することで、生活の質(QOL)を維持しやすくなります。
2) 手術治療
薬物療法では効果が不十分な場合や、大きなチョコレート嚢胞がある場合、また不妊症の原因になっていると考えられる場合には、手術が検討されます。
腹腔鏡手術
現在、標準となっている術式です。お腹に小さな穴を数カ所開けてカメラと器具を入れて行います。開腹手術に比べて傷が小さく、体への負担(侵襲)が少ないため、術後の回復が早いのがメリットです。
手術の内容
病変部分を取り除く、癒着している部分を剥がす(癒着剥離)、チョコレート嚢胞を摘出する、などが主な内容です。正常な解剖学的構造に戻すことで、痛みの改善や妊娠率の向上が期待できます。
3)治療方針の決定
治療方針は、年齢や妊娠希望、症状の重症度、病状の進行度など、複数の要素を総合的に判断して決定されます。若い女性や妊娠を希望する場合は保存的治療を重視し、妊娠希望がなく重症の場合は根治的手術を検討します。
6. 生活習慣と日常管理

子宮内膜症の反復的な痛みや不安は、心身に大きなストレスとなりがちです。しかし、日々の生活を見直すことも症状軽減に役立ちます。
ストレス管理
長期的なストレスはホルモンバランスを崩し、症状が悪化する原因になります。睡眠、趣味、リラックスできる時間を大切にしましょう。
適度な運動
ウォーキングなど無理のない運動で血流を促すと、痛みの緩和に役立つことがあります。
体の冷え対策
骨盤周りの冷えが不快感を増す場合があるため、お腹を温めたり厚手の靴下を活用したりしましょう。温かい飲み物もいいでしょう。
食べ物の工夫
バランスのとれた食事を心がけましょう。ジャンクフードやカフェイン、アルコールの摂りすぎには注意が必要です。
7. 妊娠・出産への影響

「子宮内膜症があると妊娠できないの?」 これは、多くの女性が抱く切実な不安です。確かにリスクは高まりますが、決して妊娠が不可能というわけではありません。また、妊娠・出産というライフイベント自体が、子宮内膜症の病状に大きな影響を与えます。ここでは、不妊との関係や、妊娠中・産後の経過についてお話しします。
1) 不妊症との関係
子宮内膜症は卵管癒着や卵巣機能低下により、自然妊娠を妨げることがあります。しかし、適切な検査や治療により、妊娠を望む多くの女性が無事に出産を迎えています。不妊治療(タイミング療法、人工授精、体外受精など)と子宮内膜症治療を組み合わせることで、高い妊娠率が望めるケースも増えてきています。
2) 妊娠中・産後の経過
妊娠期間中は「女性ホルモンの変化」により、子宮内膜症の症状が軽減したり病変が縮小したりすることが多いのが特徴です。また、産後授乳期間も月経がない状態が続き、症状が落ち着く方がほとんどです。しかし、月経が再開すると再発する場合もあるため、出産後も定期的に受診し、専門医と相談しながら経過をみることが重要です。
まとめ:早期発見と適切な治療・生活管理でコントロール可能
子宮内膜症は、強い月経痛や不妊症の原因となる身近な疾患です。症状や痛みを「我慢できるから…」と放置せず、少しでも違和感や異変を感じたら、早めに専門の婦人科で相談してみましょう4)。ライフスタイルの見直しと、適切な検査や個々に合った治療によって、毎日の生活と将来の妊娠への不安を軽減できます。一人で抱え込まず、信頼できる医療者と一緒に乗り越えていきましょう。
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参考文献・参考サイト
1)MSDマニュアルプロフェッショナル版:18.産婦人科及び産科「子宮内膜症」
2)厚生労働科学研究成果データベース:リプロダクティブヘルスからみた子宮内膜症の実態と対策に関する研究
3)公益財団法人日本産科婦人科学会:産科・婦人科の病気「子宮内膜症」
4)全国健康保険協会:子宮内膜症
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
