赤ちゃんの低体温について知っておきたいこと 〜新生児から乳児期の体温管理と注意点〜【医師監修】

「赤ちゃんの体がひんやりしている」「手足が冷たいのは大丈夫?」そんな不安を感じたことはありませんか?赤ちゃんは大人と違い、自分で体温調節がうまくできません。そのため、低体温は見逃せないサインのひとつです。
この記事では、赤ちゃんの低体温の基準や症状、家庭でできる対処法、そして深刻なリスクや後遺症まで、わかりやすく解説します。赤ちゃんの健康を守るために知っておきたい、低体温への正しい知識を身につけましょう。
1. 赤ちゃんの低体温とは?基準と正常値について

「赤ちゃんの体温って、何度が普通なの?」「体温が低いと危ない?」と、特に初めての育児では、些細な体温の変化に敏感になりますよね。ここでは赤ちゃんの正常体温や、低体温と判断する基準について詳しく解説します。
1) 低体温の基準・何度から注意が必要か
一般的に、赤ちゃんの平熱(正常体温)は36.5℃〜37.5℃程度とされており1)、大人の平熱よりもやや高めに設定されているのが特徴です。
個人差や計測する時間帯によって多少の変動はありますが、概ね36.0℃〜37.5℃の範囲内であれば、元気に過ごしていれば心配ありません。
注意が必要なのは、体温が36.0℃を下回った場合です。この状態を医学的観点からも「低体温」の傾向にあると考えます。 さらに、35.5℃以下になった場合は「中等度〜重度の低体温」の可能性があり、赤ちゃんの体の機能に悪影響を及ぼすリスクが高まります。35.5℃以下の数値が出た場合は、計測ミスでないかを確認した上で、速やかな対応が必要です。
2) 月齢別の注意点
赤ちゃんの体温調節機能は、月齢によって発達段階が大きく異なります。そのため、生まれたばかりの時期と、少し成長してからでは、気をつけるべきポイントも変わってきます。ここでは月齢ごとの特徴を見ていきましょう。
生まれたて(新生児期)
生後28日未満の生まれたての赤ちゃん(新生児)は、脳の体温調節中枢が未発達です。また、体重に対する体表面積が大きいため、熱が外に逃げやすいという身体的特徴があります2)。 そのため、室温が下がるとすぐに体温も下がり、逆に温めすぎるとすぐに熱がこもってしまいます。
環境温度の影響をダイレクトに受けてしまう時期ですので、大人がこまめに衣服や室温を調整し、守ってあげる必要があります。
生後2ヶ月頃まで
生後2ヶ月頃までの赤ちゃんも、皮下脂肪がまだ少なく、断熱効果が十分ではありません。新生児期よりは少しずつ外の世界に適応してきますが、依然として体温調節機能は未熟です。 季節の変わり目や、お風呂上がり、夜間の冷え込みなどの環境変化によって、容易に体温が低下してしまうことがあります。「少し大きくなったから大丈夫」と油断せず、大人よりも体温が不安定であることを前提にケアを行いましょう。
月齢がすすむごとに、体温調節機能は整っていきまが、乳児~幼児期もまだまだ完全ではありません。 毎日こまめに体温を測ることはしなくても大丈夫ですが、子どもの体温を気にする習慣はつけておきましょう。
2. 赤ちゃんが低体温になる原因

「しっかり着せているはずなのに、なぜ体温が下がってしまったの?」と不思議に思うことがあるかもしれません。 赤ちゃんの体温が下がる理由は、単に「部屋が寒い」という環境の問題だけではありません。時には体調不良のサインであったり、生まれたばかりの赤ちゃん特有の事情が隠れていたりすることもあります。 原因を知ることは、予防と適切なケアの第一歩です。ここでは主な3つの要因について解説します。
1) 環境要因
最も多いのが、赤ちゃんを取り巻く環境によるものです。
赤ちゃんの体は体温調節機能が未発達なため、環境の影響を受けやすい特徴があります。特に冬場や冷房を使う季節は、室温や服装などへの配慮が欠かせません。
室温が低すぎる場合、赤ちゃんは自分で体温を保つことが難しくなります。一般的に、快適な室温は20〜25℃とされていますが、赤ちゃんの手足の冷えや顔色など、実際の様子を見ながらこまめに調整しましょう。
また、衣服の着せ方にも注意が必要です。基本、衣服の着せ方は新生児(生後28日以内)とそれより大きい赤ちゃん(1か月以上)で異なります。
新生児は体温調節が特に未熟なため大人より1枚多めの重ね着(例:短肌着+長肌着+カバーオール)が基本で「大人が少し暖かいかな」と感じる程度が適切です。月齢が上がると大人より1枚少なめ(例:肌着+長袖パジャマ)が目安となります。
重ね着をしすぎると汗をかいて体が冷えたり、熱中症のリスクを高めたりするため、バランスが大切です。
さらに、濡れた衣服を着ている・エアコンの風が直接当たっているなどの場合も体温が下がりやすくなるため、着替え・風向きの調整をするなどの対応が必要です。
このように、赤ちゃんの快適な環境づくりには、細やかな観察と少しの工夫が必要になります。赤ちゃんの表情や反応を感じ取りながら、安心できる空間を整えてあげましょう。
2) 体調要因
体調面での問題による低体温は、医師への相談が必要な場合が多くあります。
風邪などの感染症
初期症状として低体温が現れることがあります。大人では発熱が一般的ですが、赤ちゃんの場合は逆に体温が下がることもあるため注意が必要です。
また、高熱後の体力消耗により、体温調節機能が一時的に低下することがあります。発熱で体力を消耗した後は、しばらく様子を観察し、適切な保温と水分補給を心がけましょう。
脱水状態
血液循環が悪くなり体温維持が困難になります。特に下痢や嘔吐を伴う場合は、水分補給と併せて医師への相談を検討しましょう。
※何らかの病気の初期症状として低体温が現れることもあります。普段と様子が異なる場合や、他の症状も見られる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
3) 新生児特有の原因
出産時の体力消耗、特に長時間の分娩や帝王切開後では赤ちゃんも疲労し、体温調節が乱れやすくなります。生後数日間の生理的な体重減少が過度になると熱保持力が低下し、低体温のリスクが高まる点も注意が必要です。さらに授乳不足による栄養・エネルギー不足は体温維持を妨げ、哺乳障害を招く可能性があります。そのため、授乳量や授乳間隔に不安がある時は、早めに助産師や医師に相談することが大切です。
3. 低体温時に現れる症状

赤ちゃんは「寒い」「具合が悪い」と言葉で伝えることができません。そのため、大人がサインを読み取ることが重要です。 「いつもよりよく寝るからいい子だと思っていたら、実は低体温でぐったりしていた」というケースも珍しくありません。 以下のような症状が見られたら、低体温を疑って検温し、赤ちゃんの様子をよく観察してください。
|
段階 |
主な症状 |
解説 |
|
初期症状 |
・手足が極端に冷たい3) ・顔色が悪い(青白い) ・元気がない ・普段よりよく寝る (ぐったりしている) |
手足の冷たさはよくあることでうが、極端に冷たいのは最初のサインで、末梢循環が悪くなっている証拠です。ま |
|
進行した症状 |
・ミルクやおっぱいを飲まない ・泣き声が弱い ・嘔吐する ・呼吸が浅く、ゆっくり ・汗をかかない |
消化機能が低下して嘔吐したり、哺乳力が落ちたりします。暑い環境や厚着をさせても汗をかかない場合は、体温調節機能が働いていない可能性があります。 |
|
重篤な症状 ※緊急受診が必要 |
・意識がもうろうとしている ・呼吸困難 (小刻み、または止まる) ・けいれん |
さらに体温が低下すると、意識障害や不整脈、呼吸停止などの命に関わる状態に陥ります。ためらわずに救急医療機関を受診してください。 |
4. 低体温への対処法

低体温に気づいたら、まずは落ち着いて家庭でできる応急処置を行いながら、状態に応じて医療機関へ連絡・受診することが大切です。暖かい場所へ移す、濡れた衣服を取り替える、毛布で包むなど即できる対処法を行いつつ、過度な加温は避けてこまめに体温と全身状態(哺乳、呼吸、反応)を観察してください。
本節では「すぐできる基本的対処」と「体温を上げる具体的方法」を段階的に説明します。
1) 基本的な対処法
新生児の低体温を改善するためには、迅速で適切な保温対策を実施することが重要です。まず、環境を整えることから始めましょう。寒い廊下や窓際など冷気にさらされている場所から離れ、室温が20~25℃程度の適温に保たれた部屋へ赤ちゃんを移動させます。室温の管理は新生児の体温維持において基本的かつ重要な要素となります。
次に、赤ちゃんの衣服の状態を確認します。汗や排泄物、お風呂の湿気などで衣服が湿っている場合は、体温の低下を招く原因となるため、すぐに乾いた暖かい肌着や服に着替えさせることが必要です。濡れた衣服は体熱を奪い続けるため、速やかな対応が求められます。
さらに、積極的な保温対策を行います。毛布やバスタオルで赤ちゃんを優しく包み、体温の放散を防ぎましょう。特に熱が逃げやすい頭部や足先については、帽子や靴下を一時的に履かせるのも有効な方法です。これらの対策を組み合わせることで、新生児の体温を安全かつ効果的に回復させることができます。
実施上の注意点
乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク低減のため、顔まで布団で覆ったり、厚着をさせすぎて「うつ熱(体温が上がりすぎること)」にならないよう、こまめに体温・呼吸・反応を確認しながら行うことが大切です。
関連記事
2) 体温を上げる具体的な方法
物理的に温めるだけでなく、親子の触れ合いや栄養補給も大切です。
段階的な保温(スキンシップ)
急激な加熱はショック状態を引き起こす恐れがあります。おすすめなのは、ママやパパが赤ちゃんを抱っこして、大人の体温を分けてあげる方法です(カンガルーケアのように肌と肌を触れ合わせると効果的です3)。
湯たんぽの活用
湯たんぽを使用する場合は、絶対に赤ちゃんの皮膚に直接触れないようにしてください。低温やけどを防ぐため、タオルで厚く巻き、足元から少し離れた場所に置きます。
授乳による水分・エネルギー補給
意識がはっきりしていて飲める状態であれば、母乳やミルクを与えます。温かい水分が体内に入ることで内側から体温が上がると同時に、熱を作るためのエネルギー源となります。
5. 低体温のリスクと後遺症

「たかが体が冷えただけ」と安易に考えるのは危険です。赤ちゃんの低体温が長く続くと、血液の循環が悪くなり、全身の臓器に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなります。これにより、代謝異常(低血糖など)や心肺機能の低下を引き起こす可能性があります。
最も悪いケースでは、適切な処置が遅れることで死亡に至ることもありますし、脳へのダメージにより重篤な後遺症が残るリスクもゼロではありません。
「36℃以下の状態が続く」「温めても反応が鈍い」「顔色が戻らない」といった場合は、自己判断せずに速やかに医療機関に相談することが、赤ちゃんの命を守るために非常に重要です。
まとめ:赤ちゃんの低体温は小さなサインも見逃さず、早め早めの対処を
赤ちゃんは自分で寒い・暑いを伝えられません。体温がいつもより低い、手足が冷たい、ぐったりしていつもよりよく寝るなど、「何かいつもと違う」と感じたら、それが大切なサインです。低体温は重症化や死亡に繋がる場合もありますが、原因を知り早めの対処を心掛けることで、ほとんどの場合大きな問題なく過ごせます。
「お風呂上がり」「室温の変化」「風邪や高熱後」など、日常生活の中でも体温チェックを続けましょう。気になる症状があれば、我慢せず早めに医師や助産師に相談してください。
安心・安全に出産を迎えるために、個別栄養相談、助産師外来、母親学級、マタニティビクスなど多種多様なメニューを設けております。

詳しくはこちら
ガーデンヒルズウィメンズクリニック 各種教室の案内
参考文献・参考サイト
1)WHO(1993年発行)『Thermal control of the newborn』
2)ナース専科 :看護用語集 「新生児低体温」
3)MSDマニュアル プロフェッショナル版: 新生児の低体温症 「19.小児科」
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
