吸引分娩・鉗子分娩とは?その違いやリスク、赤ちゃんへの影響について【医師監修】
- 2026年2月28日
- 更新日: 2026年2月21日
- 医療コラム

出産時期が近づくと、無事に出産を終えるかなど不安になってくることもあるでしょう。お産ではどんなことが起こるか分からないため、医療スタッフはどのような状況になっても対応できるよう準備しています。吸引分娩と鉗子分娩もそのうちの一つ。お産が長引いて、赤ちゃんと母体に負担がかかる状況になった時に、これらの方法をおこなうことがあります。
この記事では出産前に知っておきたい吸引分娩と鉗子分娩について、くわしく解説しています。2つの違いはなにか?リスクや赤ちゃんへの影響についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1. 吸引分娩と鉗子分娩の基本と違い

まずは、吸引分娩と鉗子分娩(読み方:かんしぶんべん)とはどのようなものなのか?2つの違いについて解説していきます。
1) 吸引分娩とは
吸引分娩は、赤ちゃんの頭に専用の吸引器を装着し、吸引しながら赤ちゃんを優しく引き出す方法です。赤ちゃんが十分に降りてきているのにも関わらず、お産が進まないときに吸引分娩を選択することが多いとされています。
赤ちゃんの頭に吸盤のような医療器具をくっつけて引っ張るため、頭の形が「こぶ」ができたように浮腫んでしまうことがあります。2~3日ほどで改善することが多いため、心配せずに様子をみましょう。
2) 鉗子(かんし)分娩とは
赤ちゃんの頭を「鉗子」とよばれるトングのような器具で挟み、赤ちゃんを引き出す方法です。吸引分娩と同じで、分娩が長引いたり、止まってしまったりする「異常分娩」と判断された場合におこなわれる方法です。
3) 吸引分娩と鉗子分娩の主な違い
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種類 |
方法 |
適用場面 |
特徴 |
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吸引分娩 |
吸引器を使用 |
赤ちゃんが産道の下の方にいる時に、適用されることが多い |
一時的な頭の形の変形 |
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鉗子分娩 |
鉗子を使用 |
赤ちゃんが産道の上の方にいても、適用されることがある |
医師の技術力が必要 |
どちらの方法を選択するかは、骨盤の広さなどの母体の状態と、赤ちゃんの心拍などのの状態をみて、医師が総合的に判断します1)。
2. 吸引分娩・鉗子分娩が選ばれる理由と発生確率

吸引分娩や鉗子分娩は、赤ちゃんと母体の状態が危険だと判断された場合に選択されます。たとえば、お産の途中で赤ちゃんの心拍が低下してしまった、陣痛が弱く分娩が停止してしまった、母体に高血圧などの合併症が起こったなどの異常が起こってときに、これらの方法がおこなわれます。
日本での吸引分娩・鉗子分娩の件数は、すべての分娩の約5~10%程度です。そのなかでも、鉗子分娩より吸引分娩の方が割合が多いとされています。
高血圧などの母体側の要因については、事前の妊婦健診を定期的に受けることでリスクを減らすことができるため、決められた妊婦健診をしっかり受けることが大切です。
3. 保険適用のポイント

通常のお産では保険は適応されませんが、吸引分娩と鉗子分娩は異常分娩に該当するため、保険が適応となるのが一般的です。しかし、保険が適用となるのは治療の部分のみで、すべての費用に対して保険が適用となるわけではないので注意しましょう。
民間の医療保険でも保障対象となるものもあるため、吸引分娩・鉗子分娩になった場合は加入している保険会社に確認しましょう。
4.主なリスクと後遺症の可能性

吸引分娩と鉗子分娩をおこなうことで、気になるのがリスクや後遺症がないかということ。ここからは、リスクと後遺症について解説していきます。
1)ママ側のリスク
吸引分娩・鉗子分娩の母体へのリスクについて解説します。
会陰部の損傷
通常のお産であっても、会陰部にまったく傷ができないということはありません。しかし、吸引分娩・鉗子分娩では、通常のお産よりも深い会陰裂傷ができてしまうことがあるため、会陰切開が選択されることも多いです。
大量出血
吸引分娩・鉗子分娩では、産道を傷つけてしまうことで、通常のお産よりも出血量が増えることがあります。また、血腫とよばれる血液のかたまりができることがあり、重度の血腫だと治療が必要となるケースもあります。
膀胱の感覚麻痺
吸引分娩・鉗子分娩をおこなった際に、膀胱を圧迫してしまい、一時的に尿意を感じにくくなったり、尿漏れなどの排尿障害が起こることがあります。このような症状が起こると心配になると思いますが、ほとんどは一時的なもので、数日で改善するため経過をみていくことが多いです。
2)赤ちゃん側のリスク
吸引分娩・鉗子分娩における赤ちゃん側のリスクについて解説します。
頭の形の変形
吸引器や鉗子を使うことで、頭の形が長く伸びたような形になったり、鉗子による圧迫の跡が残ったりして、一時的に頭の形が変形することがあります。しかし、赤ちゃんの頭は柔らかいため、生後数日~数カ月で自然に形が戻ることがほとんどです。
頭蓋内出血
吸引分娩・鉗子分娩では、器具によって頭を圧迫することから、頭のなかに出血をしてしまうリスクがあります。多くは頭血腫とよばれるコブのようなもので、治療の必要がなく、自然に血液が吸収されるものです。しかし、まれに頭のなかで大量に出血をして、重症化することもあります。出血があると判断された場合は、医療機関と連携してフォローしていきます2)。
まとめ:吸引分娩・鉗子分娩は、赤ちゃんと母体を守るための医療行為
吸引分娩・鉗子分娩についてくわしく知ると、「怖い」という気持ちになった人もいるかもしれません。しかし、これらの処置は赤ちゃんと母体の安全を守るために必要な処置のため、お産に関わる医療従事者が必要と判断された場合におこなわれます。後遺症が心配になるかもしれませんが、産後のフォローも医師や医療従事者はしっかりとおこなっていくため心配しすぎないようにしましょう。
また、吸引分娩・鉗子分娩にならないために、定期的な妊婦健診でそのリスクがないか確認しておくことも大切なこと。決められた健診を受け、心配なことは医師に相談することで、お産への準備をしていきましょう。
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参考文献・参考サイト
1)吸引・鉗子分娩について
2)MSDマニュアル 新生児の分娩損傷
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
