へその緒が赤ちゃんに巻き付く「臍帯巻絡」(さいたいけんらく)とは?原因と赤ちゃん・ママの影響について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

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へその緒が赤ちゃんに巻き付く「臍帯巻絡」(さいたいけんらく)とは?原因と赤ちゃん・ママの影響について【医師監修】|ガーデンヒルズウィメンズクリニック|福岡市中央区の産婦人科

へその緒が赤ちゃんに巻き付く「臍帯巻絡」(さいたいけんらく)とは?原因と赤ちゃん・ママの影響について【医師監修】

 

妊娠中、へその緒(臍帯)が赤ちゃんの首や体に巻き付く「臍帯巻絡(さいたいけんらく)」がみられることは、決して珍しいことではありません。しかし、妊婦健診で臍帯が絡まっているといわれたら、不安を感じる方もいるでしょう。

今回は、臍帯巻絡について、原因や赤ちゃん・ママへの影響などについて詳しくお伝えします。安心して妊娠期間を過ごすためにも、臍帯巻絡のことについて正しい知識を得ていきましょう。

 

 

1.臍帯巻絡(さいたいけんらく)とは

 

臍帯巻絡(さいたいけんらく)とは、子宮内で赤ちゃんの首や手足、胴体にへその緒が巻き付いてしまう状態です。

妊娠中のエコー検査で発見されることが多く、妊婦さんの約20~25%にみられ、比較的よくあるケースといえます1)。そのなかでも、首に巻き付く「頸部巻絡」が多くみられます。また、巻絡の回数も1回転のものから複数回転のものまでさまざまです。

 

 

2.臍帯巻絡が起こる原因

 

臍帯巻絡の明確な原因は分かっていませんが、下記のような要因が関係していると考えられています。

 

1) へその緒が長い

へその緒の標準的な長さは約50cmですが、それより長い場合は巻絡が起こりやすくなります。へその緒が長いことで、、赤ちゃんが動き回る際に絡まりやすくなるからです。

 

2) 羊水が多い

羊水が多い状態(羊水過多)だと赤ちゃんが自由に動きやすくなるため、臍帯巻絡が通常より起こりやすくなると考えられています。

 

3) 赤ちゃんが活発に動く

赤ちゃんがお腹の中で活発に動くことで、へその緒が巻き付いてしまうことがあります。特に妊娠中期から後期にかけて、赤ちゃんはお腹の中で回転したり動いたりすることも多くなるため、へその緒が自ら絡まみやすくなってしまうのです。

 

4) 双子や三つ子などの多胎妊娠

子宮内のスペースが狭くなるため、臍帯巻絡のリスクが高まります。

 

5) その他

へその緒の構造(臍帯の異常な捻じれや狭窄など)や胎児の位置も影響する可能性があります。

 

 

3.臍帯巻絡の赤ちゃんやママへの影響

 

臍帯巻絡は赤ちゃんやママに深刻な影響・後遺症を及ぼすことはほとんどありません。

へその緒には、血管の周りに「ワルトン膠質」と呼ばれるゼリー状の組織があり、圧迫から血管を守ってくれているからです。 しかし、へその緒が強く巻き付いてしまうと、まれに赤ちゃんや母体に影響を及ぼす場合があります。ここでは、その具体的な影響について説明します。

 

1) 心拍数の変化

臍帯巻絡によって一時的に赤ちゃんの心拍数が変動することがあります。 これは、へその緒が圧迫されることで、赤ちゃんへの血流が一時的に悪くなるためです。 多くの場合、自然に改善しますが、妊婦健診などで胎児心拍のモニタリングを行い管理していきます。

 

2) 分娩時の影響

分娩時赤ちゃんが産道を降りてくる際に、へその緒が引っ張られてしまうなどでへその緒が圧迫されると、胎児の心拍数が一時的に低下することがあります。また、赤ちゃんの頭が産道を通過する際に時間がかかる(分娩遷延になる)ことがあります。

 

しかし、分娩中は医療スタッフによって管理が行われるため大半は無事に出産を終えることがほとんどです。分娩中に異常があった場合や、へその緒が強く巻き付いている場合・何重にも巻かれている場合は、帝王切開が選択されることもあります。

 

3) 稀なケース

非常に稀ですが、臍帯が強く巻き付いている場合には胎児死亡につながる可能性もあります。このため、医療機関では分娩中の胎児の状態を常に監視し、必要に応じて緊急帝王切開などの対応を行います。

 

 

4.診断と治療について

 

臍帯巻絡は、通常、妊婦健診の超音波検査で診断されます。また、胎児心拍モニタリングでも兆候を確認することができます。超音波検査は、赤ちゃんの状態を視覚的に確認できるため、臍帯の状態も評価することができます。

通常、巻絡が見つかっても、多くの場合は特別な治療は必要ありません。定期的なモニタリングを行うことで安全な出産が可能です。治療としては、特に危険な状況がない限り、自然な分娩を待つことが一般的ですが、分娩時に臍帯巻絡が強い場合は、鉗子分娩や吸引分娩、帝王切開など、状況に合わせて適切な処置がとられます2)

 

 

5.予防と対策

 

臍帯巻絡を予防する方法はありません。なぜなら、妊婦さん自身でコントロールすることは難しく、自然な現象として捉えられているからです。そのため、大きく心配する必要もありません。

しかし、妊婦健診をきちんと受診することは、妊娠中の異常の早期発見・早期対応が可能になるため大切です。定期的な妊婦健診を受け、毎日赤ちゃんの胎動を感じる時間も設けましょう。もし普段と何かと違うなどの異常を感じた場合は、早めに受診するよう心がけてください。

 

 

まとめ:臍帯巻絡があっても心配しすぎる必要はない

臍帯巻絡は一般的な現象であり、多くの場合は問題なく経腟分娩が可能です。そのため、過度に心配する必要はありません。妊娠中は心配や不安な事も多いかもしれませんが、適切な医療指導を受けつつ、すこやかなマタニティライフを送ることが大切です。もし、異常を感じた場合には必ず医療機関に相談しましょう。

 

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出典
1) Medical Note:臍帯巻絡
2) 日本産科婦人科医会:臍帯巻絡・結節

 

この記事の監修

牛丸敬祥  医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

院長 牛丸 敬祥

経歴

  • 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
  • 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
  • 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
  • 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
  • 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
  • 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
  • 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。