生理痛を我慢しないで。月経困難症の症状と治療法【医師監修】
- 2026年5月16日
- 更新日: 2026年5月9日
- 医療コラム

毎月、生理がくるたびに下腹部痛や腰痛に悩まされ、仕事や家事に支障が出ていませんか?「生理痛は誰もが経験するもの」と思い込み、我慢している女性は少なくありません。しかし、日常生活に影響を与えるほどの痛みや不調は、実は医学的な治療が必要な「月経困難症」かもしれません。
このコラムでは、月経困難症の症状から原因、そして確実に改善できる治療法までを詳しく解説します。つらい症状と決別し、より快適な生活を取り戻すための第一歩を一緒に踏み出しましょう。
1. 月経困難症とは?日常生活に支障をきたす症状とは

月経困難症とは、生理の期間中にあらわれる強い下腹部痛や腰痛などの症状によって、仕事や学校、家事といった普段の生活をスムーズに送ることが難しくなる状態を指します。多くの女性が経験する生理痛ですが、実はその程度には大きな個人差があるのです。
一般的に「生理痛」という言葉でひとくくりにされがちですが、月経困難症で現れる不調は多岐にわたります。代表的な下腹部の痛みだけでなく、吐き気や胃のむかつき、ひどい頭痛、全身の強い疲労感、イライラ、そして食欲がなくなるなどの心身の変化もすべて月経困難症に含まれる大切なサインとなります。
もし、痛みを和らげるために鎮痛剤を毎月のように手放せなかったり、痛みで動けずに寝込んでしまったりするようなら、それは決して「我慢が足りない」わけではありません。医療機関を受診して治療を受けるべき「病気」としてのサインである可能性が高いと言えます。まずはご自身の体が出しているメッセージに耳を傾け、無理をしないことが重要です。
2. 月経困難症の原因と悩んでいる女性の割合・年齢による変化

生理痛や月経困難症に悩む女性の割合は決して少なくありません。調査によって数字は異なりますが、「生理痛がある」と答える女性は多数を占め、その中でも「日常生活に支障を感じるほど強い」と答える方も一定数います。つまり、現代の女性の多くが、生理に伴うなんらかの不調を抱えていると考えられます。
月経困難症の原因は、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つめは、生理のたびに子宮を収縮させる物質「プロスタグランジン」が過剰に分泌されるタイプです1)。
プロスタグランジンは、子宮内膜がはがれ落ちるときに子宮をギュッと縮めて経血を体の外に押し出すために必要な物質ですが、量が多すぎると子宮が強く収縮しすぎてしまい、キリキリとした痛みや、陣痛のような強い痛みにつながります。また、腸の動きや血管にも影響するため、下痢や頭痛、吐き気などの症状を引き起こすこともあります。このタイプは「機能性月経困難症」と呼ばれ、子宮自体に明らかな病気が見つからないケースが多いのが特徴です。
2つめは、子宮や卵巣に病気が隠れているタイプです。代表的なものに、子宮内膜症や子宮筋腫などがあります。子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜に似た組織が、卵巣やおなかの中など別の場所にできてしまう病気です。月経のたびにそこで出血や炎症が起こるため、強い痛みや不妊の原因になることがあります。子宮筋腫は、子宮の筋肉の一部がこぶのように大きくなる良性の腫瘍で、筋腫の位置や大きさによって、生理の量が多くなったり、痛みが増したりします。このようなタイプは「器質性月経困難症」と呼ばれ、婦人科での検査や治療が必要になります。
年齢によっても、原因の傾向が変化すると言われています。10代から20代前半の若い年齢層では、子宮の出口がまだ狭かったり、ホルモンバランスが安定していなかったりすることから、プロスタグランジンの影響による機能性月経困難症が多いとされています。この頃は、検査をしても目立った病気は見つからないのに、強い痛みを感じるケースが少なくありません。
一方で、年齢を重ねるにつれて、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症など、子宮や卵巣の病気が原因となるケースが増えてきます。特に、以前はそれほど痛くなかったのに、30代以降に急に痛みが強くなってきた、生理の量が急に増えた、レバー状の血のかたまりが多くなった、といった変化がある場合は注意が必要です。「年齢のせい」と片づけず、婦人科で一度チェックを受けることをおすすめします。
3. PMS(月経前症候群)と月経困難症はどう違う?

「生理に関連する不調」として、PMS(月経前症候群)という言葉をよく耳にします。月経困難症と混同されることもありますが、この2つは異なる状態です。見分けるポイントは、症状が現れる「時期」にあります2)。
PMSは生理が始まる3~10日前から症状が現れ始め、生理開始とともに症状が軽くなるのが特徴です。代表的な症状は、イライラ、気分の落ち込み、乳房の張り、むくみ、頭痛など、主に心身の不調です。つまり、生理前の数日間だけを指します。
一方、月経困難症は生理期間中、特に生理開始から2~3日目の痛みが主となります。強い下腹部痛や腰痛が中心で、生理が終わると症状も落ち着くという特徴があります。
ここで大切なのは、自分がどちらのタイプなのか、あるいは両方を抱えているのかを把握することです。症状が出る時期を記録することで、その判別は可能です。月経周期と症状のタイミングを4~5ヶ月間記録してみると、パターンが見えてきます。生理の1週間以上前から不調が始まるのであればPMS、生理中の痛みが強いのであれば月経困難症といえるでしょう。
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4. 月経困難症の治療法―つらい症状は改善できる

月経困難症は決して我慢の対象ではなく、医学の進歩により確実に改善できる症状です。自分に合った治療法を見つけることで、QOL(生活の質)は大きく向上します。以下、具体的な治療選択肢をご紹介します。
1) 薬による治療
月経困難症の治療でまず用いられるのが、痛みをやわらげる薬です。代表的なのは、いわゆる鎮痛剤とよばれる薬で、その多くは「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」という種類に含まれます。NSAIDsは、プロスタグランジンという痛みの原因となる物質の働きをおさえることで、痛みを軽くしてくれる薬です3)。
「鎮痛薬はあまり良くない」「できるだけ我慢してから飲んだほうがいい」と思っている方も多いのですが、月経困難症の場合、痛みが強くなる前のタイミングで適切に飲むほうが、少ない量でしっかり効きやすいとされています。医師が処方する薬のほか、市販薬にもNSAIDsを成分としたものが多くありますが、持病やほかの薬との飲み合わせ、胃腸への負担などに注意が必要です。
2) ピルによる治療
月経困難症の治療でよく用いられるのが、「低用量ピル」などのホルモン薬です。ピルとは、女性ホルモンを少量ずつ含んだ薬で、もともとは避妊薬として広く知られていますが、近年は月経困難症やPMSの治療薬としても重要な役割を担っています3)。
ピルが月経困難症に効く理由のひとつは、プロスタグランジンの分泌をおさえる働きがあることです。ピルを飲むことで、排卵を抑え、ホルモンの変動をゆるやかにします。その結果、子宮内膜が必要以上に厚くならず、はがれ落ちる量も少なくなるため、プロスタグランジンの分泌も減りやすくなります。その結果、生理痛の軽減や経血量の減少、生理周期の安定などが期待できます。
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まとめ:生理痛は、あなたの体が助けを求めている大切なサインです。
月経困難症は我慢すべき「体質」ではなく、適切な診断と薬やピルを用いた治療によって、日常生活を劇的に快適に変えることができる「病気」です。
これまで見てきたように、生理痛の原因は年齢や体の状態によって様々であり、PMSとの見極めも重要になります。痛みを「いつものこと」と諦めず、早めに専門医へ相談することは、将来の自分の健康や家族との幸せな時間を守ることにも繋がります。あなたが毎月の痛みから解放され、自分らしくおだやかな笑顔で過ごせることを願っています。
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参考文献・参考サイト
1)公益財団法人日本産婦人科医会「5.月経困難症」
2)厚生労働省:働く女性の心とからだの応援サイト「月経について」
3)日本医師会;健康プラザPlus「月経困難症を治療する低用量ピル」
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
