知っておきたい子宮頸がん~原因、症状、検査、そして予防~【医師監修】
- 2025年12月13日
- 更新日: 2025年12月10日
- 医療コラム

子宮頸がんは、若い世代の女性に発症するがんです。厚生労働省ががん検診推進事業の一つとして推奨しているため、子宮頸がんや子宮頸がん検診のことを耳にしたことがある人は多いでしょう。
今回は子宮頸がんの原因や予防法についてお伝えします。自分の体の異変に気づき、子宮頸がんの予防と早期発見につなげていきましょう。
1. 子宮頸がんとは

子宮頸がんとは、子宮の入り口の「子宮頸部」にできる女性特有のがんのことです。
30代~40代に多く発症しますが、近年10代後半~20代の女性にも増えているといわれています。進行すると子宮を摘出することもあるため、妊娠を希望する年代に発症する子宮頸がんは、定期的な検診で早期発見することが大切となります1)2)。
2. 子宮がんの原因・リスク因子

子宮頸がんは、原因が分かっている数少ないがんの一つです。原因やリスクを知ることで、子宮頸がんの予防につなげましょう。
1) HPV(ヒトパピローマウイルス)感染
子宮頸がんの原因のほとんどは、性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)による感染です。
HPVは多くの女性が一度は感染するといわれるほど、珍しいウイルスではありません。200種類以上の種類があるなかの15種類が、子宮頸がんの原因になるといわれています。
もしHPVに感染してしまっても、ほとんどが免疫の働きによって自然に治癒します。しかし感染した状態が長く続くことで、「異形成」とよばれる前がん状態となることがあるのです。異形成のまま未治療で数年経過すると、子宮がんに進行してしまいます。
2) リスク因子
子宮頸がんのリスク因子はこちら
● 喫煙
● 免疫力の低下
● 長期間のピル服用
● 多産
● 性感染症の既往
子宮頸がんの原因はHPVのため、多くのパートナーとの性交渉や、性交渉の回数が多いほどリスクは高くなるでしょう。コンドームを使用すればリスクを抑えられると思うかもしれませんが、コンドームでカバーできない部分の接触で感染することもあるため、100%予防できるとはいえません。
子宮頸がんは、HPVに感染した状態が長く続くことで進行していきます。通常の免疫であれば感染しても自然に治癒することがほとんどですが、持病などで免疫力が低下していると感染状態が持続してしまい子宮頸がんを発症してしまうことがあります。
気を付けたいのがたばこの影響です。たばこは免疫を低下させるだけでなく、含まれる発がん物質が子宮頸がんの発症に影響を与える可能性もあるといわれています。自身が喫煙者でなくても、パートナーや家族に喫煙者がいる人は注意しましょう3)。
3. 子宮頸がんの症状

実は子宮頸がんは、症状から気付くことがむずかしいという特徴があります。この後に紹介する症状がもしあるようなら、早めに病院に受診しましょう。
1) 初期症状
子宮頸がんの初期や、前段階である異形成の時期には、がんと気付くことができるような特徴的な症状はありません。
性行為の時に少量出血する、おりものの量が増えるといった、がんや異形成ではない状態でも起こりえる症状しかないため、気になったとしても病院に受診するという人は少ないでしょう。これが子宮頸がんの発見を遅らせる原因の一つにもなっているのです。
2) 進行した際の症状
子宮頸がんは進行すると以下のような症状が出てきます。
● 不正出血(月経以外の出血)
● 性交後の出血
● おりものの異常(量の増加、悪臭、茶褐色に変化、水っぽくなる粘り気がある)
● 下腹部痛や腰痛
● 排尿時の痛みや血尿 など
このような症状が出ていると、すでに子宮頚がんは進行してしまっているかもしれません。気になる症状がある方は、早めに病院に受診しましょう。
4. 妊婦健診と子宮頸がん検診の重要性

子宮頸がんは症状から気付くことがむずかしいため、定期的ながん検診による早期発見が大切です。
子宮頸がん検診を受ける際に注意したいポイントは、検査の時期です。経血があると検査の精度が下がってしまい、正確な検査結果が得られない可能性があります。もし、不正出血がある場合には、検査前にその旨医師に相談しましょう4)。
そして妊娠中の子宮頸がん検診も、これから迎える赤ちゃんとママの健康を守るために大切な検査となります。妊婦健診のなかにも子宮頚がん検診は必須項目として組み込まれています。妊娠の経過が進むと検査の精度が低くなることから、妊娠初期の健診時に一緒に検査をすることが多いでしょう。
5. 子宮頸がんの検査方法

子宮頸がんの検査には、細胞診とHPV検査の2つの種類があります。どちらも子宮頸部をブラシやヘラなどでこすって、採取した組織を調べる検査です。検査時の痛みや体への負担も少なく、検査時間も1~2分ほどで終了します。
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検査方法 |
検査内容 |
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コルポスコープ検査 |
膣拡大鏡とよばれる器具を使って子宮頸部を観察し、正常・異常・浸潤がんなどに分類する |
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組織診 |
病変のある組織を採取して、がんの進行度について調べる検査 |
組織診をする際に必要があれば、子宮頸部を円錐状に切除する「円錐切除術」という手術をおこなうことがあります。ほかにも内診で直接触ることで子宮頸部周囲にがんの広がりがないかを確認したり、超音波で別の臓器やリンパ節への転移がないかを調べたりもします。
これらの検査を組み合わせて、がんのステージがどのくらいか評価し、今後の治療方針を決定していくのです5)。
6. 治療方法と手術について

子宮頸がんの治療方法は主に、手術療法・放射線療法・化学療法の3つです。
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治療法 |
治療内容 |
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手術療法 |
手術によってがんを取り除く方法。 初期のがんや高度異形成であれば、「子宮頸部円錐切除術」で子宮の入り口だけを切除する。 がんが進行している場合は、子宮や子宮頸部周辺の組織、膣まで摘出することもある。 |
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放射線療法 |
放射線で、がん細胞を死滅させる治療法。 体の外から照射する方法と、子宮に器具を挿入して内側から照射する「膣内照射」という方法もある。 |
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化学療法 |
抗がん剤などの薬を使って、全身に転移したがん細胞に対して行われる治療。 |
進行がんの場合は、手術でがんを取り除いた後に放射線治療や化学療法を併用するのが一般的です。しかし子宮頸がんは妊娠を希望する年齢の女性に多いため、がんの進行度だけでなく妊娠の希望の有無、ライフスタイルなども含めて治療方針を決定していくことが多いでしょう。
また、子宮頸がんの治療はがんと診断される前の「高度異形成」でもおこなわれます。高度異形成では「子宮頸部円錐切除術」で子宮頸部を切除し、採取した組織を調べることで今後の治療方針を決定します。
7. ワクチンによる予防

子宮頸がんは唯一、予防ができるがんです。ワクチンを接種することで50~90%の子宮頸がんの原因を防ぐことができるため、日本ではワクチンの接種が推奨されています。
ワクチンの効果を最大限に受けるためには、原因であるHPVに感染する前にワクチンを接種することが大切。そのため公費でのワクチン接種の年齢は、小学校6年生~高校1年相当と決められています。
もしワクチン接種前に性交渉の経験があっても、ワクチンに含まれるHPVの型に感染していなければ予防の効果が期待できるでしょう。公費で定められている年齢を過ぎた17歳~45歳の女性でワクチンについて気になる方は、医師に相談しましょう。
HPVワクチンは、初めて接種を受ける年齢やワクチンの種類によって、接種回数やスケジュールが異なります。くわしくは接種する医療機関で確認しましょう7)。
子宮頸がんの1次予防としてワクチン接種は大切ですが、ワクチンでは守れないHPV型に感染したことが原因で子宮頸がんを発症してしまうことがあります。ワクチンを接種したから大丈夫とは思わず、定期的な検診でがんの早期発見に努めていきましょう。
まとめ:子宮頸がんは予防と早期発見が大切
子宮頸がんはワクチンとがん検診で、予防と早期発見ができるがんです。ほかのがんと比べて発症する年齢が若いことから、がんを身近に感じることが少なく、検診に行く習慣がないという女性も多いと思います。
しかし、自身で気付くことができる症状が少ない子宮頸がんは、定期的な検診でしか発見することができません。HPVに感染してから発症まで時間がかかるという子宮頸がんの特徴を利用して、定期的な検診で早期発見を目指しましょう。
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参考文献・参考サイト
1)日本婦人科腫瘍学会 子宮頸がん
2)厚生労働省 ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
3)科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究
4)日本対がん協会 子宮頸がん検診の意義と目的
5)日本医師会 子宮がん検診の検査方法
6)国立がん研究センター 子宮頸がん治療
7)厚生労働省 HPVワクチンに関するQ&A
この記事の監修
牛丸敬祥 医療法人 ガーデンヒルズウィメンズクリニック院長

経歴
- 昭和48年 国立長崎大学医学部卒業
- 長崎大学病院産婦人科入局。研修医、医員、助手、講師として勤務。
- 産婦人科医療を約13年間の研修。体外受精に関する卵巣のホルモンの電子顕微鏡的研究
- 医療圏組合五島中央病院産婦人科部長、国立病院 嬉野医療センター産婦人科部長
- 長崎市立長崎市民病院産婦人科医長、産科・婦人科うしまるレディースクリニック院長
- 産婦人科の他に麻酔科、小児科の医局での研修
- 産婦人科医になって51年、35,000例以上の出産、28,000例の硬膜外麻酔による無痛分娩を経験しています。
